「下町のナポレオン」の愛称でおなじみの麦焼酎「いいちこ」。ひと昔前であれば、居酒屋やスナックのボトルキープ棚を占領しており、昭和世代なら誰も知っている馴染み深い麦焼酎である。しかし、平成生まれの20代前半に聞くと「誰？芸人さん？」と、まさかの返答。

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　麦焼酎「いいちこ」は、甲類焼酎大手の三和酒類株式会社（本社：大分県宇佐市）が、1979年から発売している麦焼酎である。いいちこのキャッチコピーである「下町のナポレオン」は、高級ブランデー「ナポレオン」に肩を並べる美味しさであり、下町の庶民的な感覚で味わえるという意味。一般公募から採用されたキャッチコピーである。

　発売から40年以上が経ち、昭和の焼酎のようなイメージがあるなか、若い世代にも飲んでもらうきっかけ作りとして、2020年9月8日（火）に「いいちこ 下町のハイボール」を先行発売した。（2021年2月9日（火）より全国発売）。「いいちこ 下町のハイボール」は、ブランド史上初となるRTDタイプの缶入り焼酎ハイボールでもある。「下町のナポレオン」から「下町のハイボール」、ハイボール缶で若い世代の心を捉えられるのか。

「いいちこ」と言えば、このボトル

パック売りも増えた

　焼酎ハイボールの絶対的王者と言えば、宝酒造が発売している「焼酎ハイボール」である。宝ホールディングスが発表した2020年3月期の「焼酎ハイボール」販売数量は、1342万ケース（350ml×24本換算）、前年比113％と好調を推移している。12種のフレーバーに加え、東京・立石にあるもつ焼きの名店「宇ち多"」の梅割りを再現した「名店の味」シリーズなど、アイテムが豊富なのも人気の秘訣である。実は、今年で発売から15周年を迎える商品であることは、あまり知られていない。

　絶対的王者に挑むには、いいちこの武器である「下町のナポレオン」を前面に謳うことではないだろうか。昨今、若い世代に浸透している言葉のひとつに「エモい」がある。「エモい」とはemotional（エモーショナル）が由来となる「情緒がある」、「レトロ」、「ノスタルジック」などを意味するスラング（俗語）である。純喫茶、銭湯、ファッション、使い捨てカメラ、カセットテープなど、若者のなかで今、レトロアイテムに関心が高まっている。「下町のナポレオン」と言えば、まさに昭和臭が溢れでている"エモい"商品である。

　「下町のナポレオン」が、昭和世代で浸透しているからこそ、このキャッチコピーを活かしたネーミングであれば、若い世代の興味を引くのではないだろうか。三和酒類のリリースを見ると下町のハイボールのパッケージデザインは、「シンボリックな『い』を中心として、『いいちこ』の知名度・象徴・歴史を踏まえつつイメージを刷新。潜在層への開拓を狙うデザインに仕上げました」と記載されているが、果たして若い世代に刺さるのだろうか。下町のナポレオンを強調した「エモい！焼酎ハイボール 〜下町ハイボール〜」のような、"エモい"を前面にだした商品名であれば、若い世代の興味を引くのではないだろうか。

　若者にお酒を飲んでもらう有効な手段のひとつがハイボールであるが、スーパーでは数多くのブランドが乱立しており、この先も競争激化は必至である。このような激戦が繰り広げられているRTD市場で「下町のハイボール」は、若い世代に浸透するのだろうか。