やじうま速報
記事への評価
取材・執筆 : フードリンクニュース編集局 2025年7月4日
全国のチェーン店のほか、ご当地ラーメン店、ラーメンを中心とした中華料理店を含めた「ラーメン店市場」(事業者売上高ベース)は、2024年度の見込み値で7900億円規模に到達する見通しとなった。10年前(14年度)の5066億円から56%増加となり、集計可能な2010年度以降で過去最高を更新する。帝国データバンクが集計・分析。
<関連記事>

ラーメン店のうち、売上高上位50社の主なチェーン店における店舗数をみると、24年度末(25年3月)は推定6200店舗となった。コロナ禍の20年度に減少したものの、10年前(5043店)に比べて2割超・約1200店増加し、10年度以降で初めて6000店を超えて最多となった。5年間で5割増となった企業をはじめ、いわゆる「家系ラーメン」のほか、「濃厚豚骨ラーメン」などのチェーン店で積極的な出店が続き、市場規模・店舗数ともに全体を大幅に押し上げた。
24年度のラーメン店各社の業績動向をみると、前年度から「増収」となったラーメン店が44.7%を占め、コロナ禍からの回復が進んだ2022年度以降、3年連続で4割を超えた。損益面では「増益」となったラーメン店は55.0%と半数を超え、割合としては比較可能な2010年度以降で最高だった。
22年度以降続いている原材料などの仕入価格や人件費、スープの炊き出しにかかる光熱費といった各種コストの負担増が経営面で課題となった。帝国データバンクが各種統計情報を基に試算した、ラーメンで使用する原材料のトータルコスト推移を示す「ラーメン原価指数(豚骨ベース、東京都区部)」をみると、20年度平均を100とした場合における24年度平均の原価指数は129と、5年間で約3割上昇した。これまで割安だった豚肉や背脂などの具材に加え、麺や海苔、メンマなど、スープづくりから具材に至る幅広い原材料で価格が大幅に上昇したことで、ラーメン原価は高止まりが続いた。
他方で、日本式ラーメンの認知度が国際的に高まったことで、韓国や台湾、香港などアジア圏の観光客を中心とした集客が好調だったほか、大手チェーン店では拡大するラーメン需要の取り込みを目的に新規出店を増やし、コストの上昇分を上回る売り上げを確保したケースが多くみられた。また、「ラーメン1杯=千円の壁」に代表されるように、ラーメン1杯あたりの大幅な値上げは引き続き難しい情勢だったものの、千円を超える期間限定ラーメンといった新メニューの開発や、セットメニューの拡充などで客単価を引き上げる取り組みが進んだことも、ラーメン店経営の収益改善を後押しする要因となった。
24年度における「ラーメン店」の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は62件となり、過去最多だった前年度(72件)から3年ぶりに減少した。25年度は5月までに12件発生し、前年同期に比べて増加傾向にあるものの、総じてラーメン店の淘汰は落ち着いた水準での推移が続いている。倒産したラーメン店の多くが中小・個人店で、原材料費や人件費などの上昇に価格転嫁が追い付かず、経営に行き詰まったケースが多くみられた。積極的な店舗網の拡大によるスケールメリットを生かした原価管理と、効率化されたオペレーションによるローコスト運営で安定した利益を確保するチェーン店と中小・個人店の間で、ラーメン1杯における収益力の二極化が進行している。

読者の感想
興味深い0.0 | 役に立つ0.0 | 誰かに教えたい0.0
- 総合評価
-
- 0.0