ここで紹介するのは今年6月にハインツ「BBQプルドポーク クラシック」を使用して新しく"差し込みメニュー"をつくったという事例。チャレンジすることになったきっかけは、「人に勧められて」「前からトライしてみたいと思っていた」などとさまざま。では、これによって実際にどのような商品をつくり、それがフードメニューの中でどのような位置づけとなり、お客からどのような反響をいただいているのかを探ってみよう。

日本のクラフトビール文化は1994年４月の酒税法の改正、いわゆる"地ビール解禁"と共に始まった。2000年に入ってこれらのクオリティが高まるにつれて、地ビールはいつしか「クラフトビール」と呼ばれるようになった。

このような中で「クラフトビアマーケット」はクラフトビール人気を推し進める役目を果たした。それは提供するクラフトビールの価格を抑えて均一にしたこと。現在はグラス（250mℓ）550円（税込、以下同）、パイント（473mℓ／USパイント）880円となっている。最大で30種類のクラフトビールがラインアップされている。樽が売り切れとなると新しいクラフトビールに変わることになり、同店のファンはそれを楽しみにして店を渡り歩いている。経営はステディワークス（本社／東京都千代田区、代表／田中徹）。虎ノ門店が１号店で2011年2月オープン、以来16店舗を展開している。

クラフトビアマーケットではそれぞれの店舗にテーマが添えられている。「クラフトビールと〇〇」という具合に〇〇の部分に料理名やジャンルが付く。虎ノ門店の場合は「クラフトビールとカジュアルイタリアン」、イタリアンで15年以上の実績を積んだ粕谷喜一郎氏が昨年5月に入社して同店の料理長に着任し、この料理ジャンルで同店の特長を際立たせている。

季節に応じてメニューを変えていて、今は「初鰹のカルパッチョ～新玉と魚醤のソース～」1080円、「ヤゲンナンコツとズッキーニのチリロースト」700円などがアペタイザーとなっている。フードメニューは40～50品目。店が虎ノ門にあるということで、同店の顧客は地元のオフィスワーカーがメインと思われたが、遠方から訪れるファンも多く全体客数の３割ほどを占めているという。

同店ではイベントメニューとしてメインのカジュアルイタリアンとは異なるジャンルのものを取り入れることもある。今回はハインツ「BBQプルドポーク クラシック」を使用してジャンキーなイメージのクラフトビールに合うおつまみをつくった。

そこでラインアップしたのが「プルドポークのチリナチョス」1000円と「プルドポークと自家製サルサのスパイシーピザ」1250円。チリナチョスは、トルティーヤにハインツ「BBQプルドポーク クラシック」、赤玉ネギ、トマト、アイオリソース（マヨネーズとニンニク）、チーズ。スパイシーピザのトッピングはチリナチョスとほぼ同様、さらにルッコラ、自家製のサルサソースとBBQソースをのせている。これらをオーブンで焼き上げている。

この二つのメニューは、ラインアップしてからたちまち好評を得ている。「プルドポーク」そのものがよく知られるようになってきていて、差し込みメニューを見た特に20代30代の女性のお客から「あっ、プルドポークだ」という声が聞こえてくるという。商品化の狙いである「クラフトビールに合う」ことがお客にストレートに伝わり、一日にそれぞれ10食程度が出ている。粕谷氏は「プルドポークは他の食材や料理と合わせることで持ち味が生かされ、組み合わせは無限大」と語り、ポテンシャルの高さを感じ取っている。

東京駅近く新丸ビル５階にある「フランツクラブ」はドイツのビールとワインをメインとして、それに合う食事をラインアップしている専門店。異国情緒と共に"本場"を感じることができる。運営するのは株式会社ザート商会（本社／東京都港区、代表／今里尚史）で、ヨーロッパを中心とした世界のビールとワインのレストランを現在27店舗展開している。

店名の「フランツ」は、ドイツ・ミュンヘン発のビール「フランツィスカーナー」を由来としている。19世紀半ば、フランシスコ修道院のそばにあったことから名付けられたもので、バナナやリンゴのようなフルーティな香りが特徴のヴァイス（白）ビアとして人気を博している。

同店のメインとなる樽生ビールは時季に応じて変化するが、現在（6月上旬）は「フランツィスカーナー・ヴァイスビアゴールド」「ホフブロイ醸造所・オリジナルラガー」「ホフブロイ・マイボック」「ヒューガルデン・ホワイト」の４種類。これ以外のビールはボトルとなる。この中でフランツィスカーナー・ヴァイスビアゴールドは「当店一番人気！」をうたっている。300㎖（グラス）1150円、400㎖（Ｓサイズ）、500㎖（Ｍサイズ）。このビールをこよなく愛する常連客は、帰り道に「仕上げの一杯」を楽しんでいる人もいるという。

新丸ビルの飲食フロアの専門店の中でもドリンクと肉料理の専門性が明確で多くのファンをつかんでいる

フードメニューはビールやワインに合う肉料理が中心。看板メニューは「ソーセージ４種盛り合わせ」4800円（税込、以下同）とアイスバイン（豚すね肉の煮込み料理）4900円となっている。客単価5000～6000円で推移している。

同店では6月プルドポークを使用した新メニューにチャレンジした。それは「プルドポークのスパイシーフラムクーヘン」1700円。フラムクーヘンとは南ドイツの薄焼きピザのこと。同店には「月替わり フラムクーヘン」というメニューがあり、時季に応じてトッピングを変えていた。ベーシックなトッピングはサワークリームとジャーマンポテト（ベーコン、玉ねぎ）であるが、同店が得意とする肉料理の一環としてプルドポークに着眼した。

フラムクーヘンの生地は22㎝×12㎝、これにサワークリームを塗り、ハインツ「BBQプルドポークポーク クラシック」を40ｇ、チーズ30ｇをトッピングして焼成、仕上げに細くマヨネーズをかけ、パプリカパウダーを振りかけている。プルドポークとチーズのグラム数は試食を重ねて割り出した。一般的なフラムクーヘンはチーズをもっと多くしているが、肉料理としての存在感を表現するためにチーズを少な目にして、プルドポークが映えるようにしている。

この差し込みメニューがお客に分かりやすく伝わり、にわかにオーダーが増えた。店長の藤城司氏によると「肌感覚で、２テーブルあたり１台のオーダーがある」という。追加オーダーするグループ客もある。

このメニューが同店のお客にすぐに溶け込み、同店がこだわるドイツビールとワインにとても相性のいいおつまみとなっていることから、さらに継続していくことも検討している。

上野・御徒町界隈は、飲食店が延々と広がっている。大通りも路地裏も同様。一つ言えることは２階以上にある店は属人的な業態であること。いわゆるバー、スナックである。要するに２階以上は目的来店になるということだ。このようなことに気付いたのは「BAR SERVICIA」の代表、高橋祐之介氏と出会ったことから。同店は御徒町から本郷三丁目へとつながる春日通り沿いで、上野広小路駅と湯島駅の間の湯島寄り、2階にある。

高橋氏は初対面から気さくに話しかけてくる。緩やかな笑顔を絶やさずに、天候のことなど当たり障りのないことなど次々と語りかけてくるが、こちらにとっては気障りにならない。いきなり"高橋ワールド"に引き込まれた感覚だ。2階がカウンター９席、3階が15のテーブル席で、ぽつりぽつりと来客があっては客席が回転していく。みな高橋ワールドを楽しみにしているようだ。

店名のSERVICIAの意味を尋ねると「サービス」の語源で、助ける、勇気づけるといった意味があるという。「この店で人のお役に立ちたいと思いを込めて名付けた」と語る。

同店はチャージなしで営業。ウイスキーは100種類弱の品揃えで角ハイボールは750円。初心者のお客には、飲みたいウイスキーやカクテルのイメージを尋ねて提供している。クラフトビールも品添えし、ブリティッシュエールにこだわりを持つ。ぬるい温度帯を保ってこのクオリティを十分に味わっていただく。客単価は4000～5000円あたり。

フードメニューはタパス、パエリア、サンドイッチ、肉料理とさまざま。お客の要望に沿うにしたがって増えていき50品目ほどになっているが、お客には飲み物に合ったメニューをお勧めしている。

プルドポークのメニューをひらめいたのは、東上野にキューバサンドの専門店があり、ここのプルドポークサンドを気に入っているから。キューバサンドとは半分に切ったバゲットにバターをたっぷりと塗り、具材をはさんだものをフライパンでプレスするように焼いて仕上げるもの。

適度な塩加減で飽きのこない食味が、食事としてまたおつまみとしても食されている

そこでつくったのが「プルドポークとチーズ＆マスタードのジャンクサンド」1080円（税込）。ハインツ「BBQプルドポーククラシック」を使用、これは具材として使用されることがしっかりと考慮されている。粒マスタード、バター、ミックスチーズ、ハラペーニョを8枚切の食パンではさみ、ホットサンドに仕上げている。

このメニューについて高橋氏は「ハラペーニョが肝」という。「プルドポークに脂っけがなく味がぼやけていない。そこではっきりとした味と組み合わせようと考えてハラペーニョを入れた。ハラペーニョがこれらの要素をばっちりと引き立てている」と語る。IPAを注文するお客にこのメニューをお勧めして食べていただくと感動的に喜んでくれるという。

このメニューを導入して10日程度経過したが、「これが食べたくて」とやってくるリピーターが増えた。また、同店を利用したお客がお土産としてテイクアウトしたり、フードメニューを持たないバーからの出前の注文も増えた。「今回のように突然人気になるメニューはとても珍しいこと」と語り、定番化していくことも検討している。

「クラフトビアマーケット虎ノ門店」

東京都港区西新橋1-23-3 S.A.グレイスビル１Ｆ

TEL：03-6206-1603