「え？どんなポーズとればいいんですか？いやん！カメラのファインダー向けられたら！ちょっとノッテきちゃっうじゃないですか〜！」と、やたらとノリがいい木曜日担当のメグミさん。それもそのはず、このお店の日替わりの女将、いやママ達はみなさん、元No.1キャバ嬢だったとか？ キャバ嬢をナメてはいけません、そんじょそこらのサラリーマンより、稼ぎはいいし、健全なる社会貢献、経済にだって貢献しちゃってます。しかも、いまどきの女の子達のなりたい職業ランキングの上位に顔出しちゃうくらいですからね。

　さて、ここ麻布十番の「マーレ」は、カフェはカフェだけれども、半分昼キャバ。新宿、六本木のキャバクラや銀座のクラブでは飽き足らない、大人が集まる不思議な空間なのだ。カウンター席はチャージ制の飲み放題。カウンターに座ったら美人女将、もとい、日替わりママさん達と楽しい会話。でも、奥のテーブル席ならチャージ無しでカフェオレ一杯だけでもOK。フリーwi-fi環境もあり、普通のカフェ使いも出来ちゃうってわけ。実際、明るいうちからカウンター席では、シャンパン開けて大盛り上がり、テーブル席ではノートパソコンを広げて、カフェオレ飲みながらノマドワークのお客さんの姿。本当にどんなシステム。なんだここは？（笑）

　本日の日替わりママは、木曜担当のメグさん38歳。「私はれっきとした子供を育てる主婦ですよ〜！ 写真撮るんですか？ 焼酎のボトルでも持っちゃいます？」と、どうみても主婦というより、プロの振る舞い。さすがは元キャバ嬢と思いきや、メグさんだけはメンバーの中で水商売未経験。「みんなめちゃ可愛いんですよ！銀座、六本木、新宿の超No.1が集まってますから！」って。「やっぱメグさん絶対、元キャバ嬢でしょ？」と訊ねると、「やっぱりそう見えちゃいます？」と、意味深な笑いがキュートであり、めちゃくちゃ色っぽい。まあ、過去や現在がどうあれ、カフェなのかスナックなのか、昼キャバなのかはどうあれ、今が楽しい「飲み屋」であれば良いのだ。

　ランチタイムのバイトとして5年前からこの店で働いていたメグさん。「ランチが終わると、お客さん来ないんですよ。それでね、たまたまママ友飲み会で集まったのが、美人ばっかりだったの！ それでアイドルタイムを使って『昼マーレ』をやろうって盛り上がって、今のこのスタイルで2年前から営業しているんですよ」。チャージ90分3000円。後はご周知のごとくシャンパンを開けるなり、5人の日替わりママに一杯奢るなり、お客さん次第なお店。麻布十番という場所柄、ケチな客などいない。ちょっと軽く飲んだだけで、「お釣りはいいよ！」なんて「マンケン」をさっと出してスマートに帰る客も少なくない。

　「キャバクラとか、銀座のクラブですら、飲み慣れてというか、もうつまんないって仰るお客様が案外多いんです」と、語るメグさん。ふむふむ、笑顔のトークだけでなく、そんじょそこらの経営者より凄いんじゃないか？ なんて思うトークも。

　窓の外は明るい日差し。だってまだ昼過ぎだし。それでも客は次から次にやってくる。でも、17時にはきっぱり閉店する、徹底的に二毛作なこのお店。現在、日替わりの女将は5人で毎日ローテーションで回しているという。「毎日？ それムリ！ だって私たちみんな子持ちの主婦だもん！」と、あっけらかんと言ってのける。「え？それじゃロマンないじゃないですか？ 同伴アフターとか？」「言ったでしょ？ 子持ちですよ、私たち」あ、そうか？そこを求めちゃいけないんだ。キャバクラじゃないんだしね。

　14時から3時間の営業。時給は歩合らしいが、この女将＝日替わりママ＝天使達、いったいいくら売り上げるのだろう？ 今日もカウンターには、麻布十番的な紳士がサラッとした顔で一言「何飲む？ ワイン？ 俺は昨日飲みすぎだからコーラでも飲むかな？」って、バブルの頃を思い出す。それが嫌味でなく、なんとも格好良い。世の若い衆よ！見習え！これが「粋な男」ってもんだ。

　今日も「昼マーレ」では、明るいうちから酒を交わし、笑顔が飛び交う。そして日が沈む頃には、普通のレストランとして、また違った客たちの出会い、飲食のステージとなる。

次回、東京女将列伝Vol.04 は丸の内「どん薩摩」石川さんのお話です。

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