やじうま速報
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取材・執筆 : 安田正明 2024年10月2日
ラーメン店の倒産が過去最多ペースを辿るなか、中華料理店は対照的な動きをみせている。2024年1~8月の倒産はラーメン店が44件、中華料理店は7件と好対照だった。なぜ中華料理店の倒産は少ないのか、東京商工リサーチが分析した。
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2009年以降の倒産動向をみると、ラーメン店は2013年に29件を記録した。その後、インバウンド(訪日外国人客)の来店増や、若い人を中心としたラーメンブームなどで2016年は16件まで減少した。しかし、新規参入が相次いで熱い激戦市場になったことや、2020年はコロナ禍の休業要請などもあり、倒産は年間最多の31件に急増した。その後、ゼロゼロ融資など官民あげての資金繰り支援の効果もあり、2022年は8件まで減少した。
ラーメンの形態はテイクアウトに不向き。さらに、物価高の直撃を受けても、提供価格は「1,000円の壁」が立ちはだかる。こうして淘汰が加速し、2024年は8月までに44件と過去最多ペースの深刻な状況が続いている。
一方、中華料理店の倒産は2010年までラーメン店より多かった。だが、テレビやマスコミで中華料理が取り上げられ、四川料理や町中華の人気が盛り上がると、本場の味を求める「ガチ中華」客が中華料理店に押し寄せた。コロナ禍の2022年は4件に減少し、2024年も1~8月で7件にとどまっている。ラーメン店の倒産の6分の1まで減少したことになる。
ラーメン店は参入障壁が低く、ブームに乗じた出店も多い。また、味や提供レシピには流行もある。物価高で食材や光熱費が上昇しても、値上げは「1,000円の壁」を乗り越えるのは容易ではない。こうしたことから収益悪化で倒産に至るケースが多いのが特徴。
一方、中華料理店も置かれた環境は同じだ。コスト高や人件費の上昇に見舞われているが、ラーメン店にない多彩なメニューがポイントとなる。担々麺などの麺類から回鍋肉などの肉料理、野菜炒めなど多種の料理を提供できることも強みになっている。また、食材変更や量の調整が、調理人の技量で工夫できる。大盛りで価格競争力を高めることも可能で、行きつく先は中華料理ならではの対応力が「付加価値」を高める隠し味になっている。
都内の中華料理店の関係者は、「他の飲食店と同じでコストアップは厳しい。一番の強みは、地元に密着し安定した固定客を持っていることと、小規模運営でコストアップが最小限に済むことも大きい」と語る。加えて、「インバウンドやブームによる新規来店が増えていることで、のらりくらりとかわせているのではないか」と分析したという。
大手チェーンも好調で、王将フードサービス「餃子の王将」の8月の月次売上高(直営全店)は88億7,300万円で、単月では創業以来、最高売上を更新している。ハイデイ日高「日高屋」の8月度の売上高速報(全店)も前年同月比11.7%増と好調。3月から8月までの2025年2月期上期計は前年同期比13.2%増で、客数も伸びている。
長い歴史を持つ中華料理は、多彩な食材と調理方法で独自の進化を続けている。コロナ禍を始め、時々の苦難を乗り越えて町中華やガチ中華などのブームが追い風にもなっているが、物価高や人手不足、後継者など、山積する課題ものしかかっている。ただ、新規開店時の設備コストが嵩み、技術力も必要な業態で、ラーメン店より新規参入のハードルが高いだけに乱立には至っていない。
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