やじうま速報
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取材・執筆 : 安田正明 2024年4月22日
主要外食100社のうち今年「値上げ」したのは3割と、値上げの勢いは鈍化傾向にある。帝国データバンクが調査・分析。
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上場する外食主要100社における、2024年の価格改定計画(値上げ、実施済み含む)を調査した結果、4月15日までに値上げを表明したのは26社だった。値上げが本格化した22年(58社)に比べて約4割の水準にとどまったほか、23年(49社)からも半減した。
24年に値上げ予定の26社のうち、17社が前年に引き続き「今年も」値上げに踏み切った。ハンバーガーやうどん、牛丼など比較的メニュー単価の低い「低価格チェーン」での値上げに加え、客単価が高額な一部コース料理でも値上げが広がった。また、一部企業ではエリア別の料金設定を導入したほか、24時間営業の店舗では深夜料金が導入されるなど、店舗の立地や時間帯によって提供価格が変化する「変動価格」の導入事例もみられた。
値上げの要因では、値上がりが続く食材などの原材料費に加え、働き手を確保するための賃金アップによる影響が目立った。値上げを表明した外食26社の値上げ要因をみると、最も多いのは「原材料」を要因とした値上げで、18社・約7割を占めた。次いで「人件費」と、水道光熱費など「エネルギー」がともに12社・46.2%だった。飲食店全体では約7割の企業でアルバイトなどの人手不足が発生しており、アルバイト・正社員スタッフの確保を目的に賃上げ等を行う企業も見られた。「物流費」(10社・38.5%)は、24年問題などによる物流コストの上昇が響いた。このほか、テナント料の引き上げや、円安による仕入れ負担の増加などがみられた。
足元では、値上げによる客足への悪影響は限定的なものにとどまっている。前年同月と比較した既存店客数が比較可能な51社を対象に、前年同月からの増減平均を算出したところ、2023年以降すべての月で前年を上回る水準だった。23年中に値上げを実施した外食企業では、全体に比べると下回る月が多く、来店客数の伸びに鈍さもあったものの、全体同様すべての月で前年を上回り、大きな影響はみられなかった。多くの食品や日用品で値上げが相次いだなか、外食産業でも一定の値上げを許容する動きが広まったことが要因とみられる。
22年以降に相次いだ外食メニューの値上げは一定の落ち着きを見せつつある。飲食店情報サイト「ぐるなび」が1月、加盟店舗283店に対して行ったアンケート調査では、「今後取り組みたいこと」のトップは、メニューの内容や価格の改定だった。前年に比べると割合は低下しており、省人化や仕入れルートの変更などでコスト抑制が進んだことや、値上げによる収益改善の成果が出たことも要因の一つとみられる。ただ、今後も畜肉や生鮮野菜など原材料費や電気・ガスのエネルギー価格の上昇が見込まれるほか、近時は人手不足の深刻化に伴うアルバイト時給の増加など人件費アップが深刻化しており、外食企業のコスト環境は厳しい局面が続いている。
足元では、これまで懸念された値上げによる来店客数減の影響が軽微にとどまる傾向もみられ、コストの変動に応じて値上げを進める動きが続くとみられる。

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