フードリンクレポート
記事への評価
取材・執筆 : 南原卓也 2022年9月6日
【記事のポイント】
●コロナ禍により変化した食スタイル
●アメリカンビーフの美味しさの秘訣
●チャックアイロールだけで作れる高付加価値メニュー
<関連記事>
米国食肉輸出連合会主催「アメリカンポーク外食向けセミナー"豚が鶏を狩る?次世代のからあげスター『豚カラ』って知ってるかい?"」
米国食肉輸出連合会「テイクアウト容器提供」第一弾に申込殺到。急遽、第二弾も決定。
「アメリカン・ビーフ・カッティングセミナー」レポート。米国産牛肉を使った新メニューって何?
米国食肉輸出連合会(USMEF以下略)主催のフードリンクセミナーが、2022年8月22日(月)、オフラインとオンラインにて同時開催された。定員30名のオフラインセミナーは、東京・市ヶ谷の「Patia市ヶ谷」にて開催。
USMEFジャパンディレクターの山庄司岳道氏
セミナーは、USMEFジャパンディレクターの山庄司岳道氏による挨拶からスタート。米国食肉輸出連合会(USMEF)についての説明がされた。
米国食肉輸出連合会(USMEF)とは、1976年に米国政府、米国食肉業界により設立された牛肉・豚肉・羊肉をマーケティングする非営利団体。日本事務所は1977年に開設し、2022年は45周年に当たる。
海外市場(米国以外の国)に対して、米国産食肉(アメリカンビーフ、ポーク、ラム)の認知の向上、マーケット拡大をミッションとし、キャンペーンや販促協賛、セミナー、展示会等を行う。
「新しい食スタイルの提案 アメリカンビーフだから出来る高付加価値メニュー教えます」は、テーマ①~③の3部にて構成。
株式会社フードリンクグループ 植村
テーマ①は、「外食市場の食スタイルの変化について ~シェアから個食へ~」
株式会社フードリンクグループの植村より、最近の外食市場の動向について解説。
「TORETA」の発表によると、11人以上による飲食店の団体利用はコロナ以前に比べて25%程度。多くは1~2人、多くても4人までの利用。こういったデータから、大皿をシェアする料理から、個食化が進んでいると考えられる。
食材等の値上がりを受け、消費者の約半数が節約モード。中でも、外食の際に注文をためらう高級食材1位は「ブランド牛肉」。一方、お得に食べられる機会があれば行きたくなる高級食材1位も「ブランド牛肉」だった。
「高いイメージのある牛肉ですが、やり方、使い方によっては、集客のチャンスがある食材だと考えています。」(植村)
2022年7月の調査によると、「フードの値上げを実施予定・済み」と回答したのは69%。ドリンク類も62%が値上げをする予定。店舗数を伸ばす外食チェーンは、低価格帯に集中する一方、高級店がカジュアルダウンしたお店も人気を集める傾向にある。
テーマ②は、「アメリカンビーフの美味しさの秘訣について チャックアイロールの活用提案」
山庄司氏による、アメリカンビーフや、チャックアイロールの有効活用について解説と提案がされた。
アメリカンビーフが美味しい理由は、穀物肥育100%、特に良質なトウモロコシを食べて育てられることにある。世界の約40%のトウモロコシを生産しているアメリカでは、多くの肥育農家が、自家製の新鮮なトウモロコシを牛に与えている。
「実は、日本の家畜の飼料として用いられるトウモロコシの約80%はアメリカから輸入している。つまり、国産牛も、アメリカのトウモロコシを食べて育っているのです。」(山庄司氏)
アメリカンビーフの品質は、政府検査官が実施する格付けシステム(グレーディング)により安定している。輸出する牛肉も含め、一企業ではなく政府機関が行う。
「一般の方にもわかりやすく品質を訴求するPOPやシール等が必要な方は、USMEF公式サイトにて無償で提供できますので、是非、活用してもらいたいですね。」(山庄司氏)
「アメリカで加工してから日本での通関までは約3~4週間。その間、0℃のチルドコンテナで移動中に熟成し、うまみが増します。」(山庄司氏)
チャックアイロールの解体方法
「輸入されるチャックアイロールの多くが量販店で利用されています。ヒレやサーロインに比べて安価。場所によって肉の特徴が異なりますので、上手く使い分ければ、柔らかさや味わいを活かした調理が可能。お客様に値ごろ感もあって高級感もある美味しい料理が提供できます。」(山庄司氏)
チャックアイロールを分割するポイントは、方向が異なる筋繊維に対し、直角に切ること。筋繊維が放射状に出ているザブトンは、特に切り方に要注意。
チャックアイログは、使い勝手の良い部位
リブロースの芯と繋がっているチャックアイログは、ステーキや焼肉、煮込み料理等に適した柔らかい赤身。
チャックアイロールから切り取られるネック(左側)
ネックは、首の部分。筋肉が多く、脂肪がほとんどない。硬い肉質なので、ひき肉やこま切れ等によく利用される。
ザブトンは、真ん中の筋に沿って切ると柵取りがしやすい
「魚屋ではよく、"粗利を出すならアラを売れ"とも言われていますが、整形により発生した筋や小肉など副産物をどう評価するかもポイントです。」(山庄司氏)
株式会社タケル・シシクラ 代表取締役 宍倉たける氏
テーマ③は、「【実演】チャックアイロールだけで作る高付加価値メニュー」
株式会社タケル・シシクラ 代表取締役の宍倉たける氏による、調理実演が行われた。
宍倉たける氏は、かたまり肉が購入できる「宍倉精肉本店」(西千葉駅)を経営し、併設する1日1組限定の予約制レストラン「BISTRO TAKERU」ではオーナーシェフを務める。フードコーディネーターの資格を有すフレンチ出身の料理人として、セミナー講師やドラマ、映画の料理監修も行うなど活躍の幅を広げている。
一緒に進行を務めるのは、USMEFシニアマーケティングマネージャー 笠谷 樹氏
今回提案する「Deux Plats(ドゥ プラ)」とは、「2皿」を意味するフランス語。「2つのお皿で食事を完結させる」という、日本の定食のようなイメージだ。
実演されたメニューは、「低温調理ザブトンのカルパッチョ」、「アメリカンビーフのビーツコンソメ」、「チャックアイログと蕪のフリカッセ」の3品。
低温調理ザブトンのカルパッチョ
「ザブトンに関しては、どんな牛肉料理にもアレンジができます。生で提供しても見栄えがよく、単価もとりやすい。」(宍倉氏)
低温調理機を58℃に設定し、2時間調理
「低温調理のメリットは、思い通りの火加減の調理が確実に行えること。カルパッチョ以外にも、ローストビーフや肉寿司にも使えそうですね。」(宍倉氏)
アメリカンビーフのビーツコンソメ
ブイヨンスープに牛肉を合わせることが多いコンソメだが、今回は、肉の味が濃いネックだけを使ったコンソメスープ作りにチャレンジ。
スープの中には、ステーキして細かくカットしたネックを入れる。ワイングラスを使用している理由は、香りを楽しむ為。
チャックアイログと蕪のフリカッセ
チャックアイログは、ステーキや煮込み料理、ローストビーフなど、使い勝手の良い部位。フランスでは、鶏肉やカエルを使用することが多いフリカッセですが、牛肉を使用することで旨味の強いメニューになる。
「アメリカンビーフを使うメリットは、一つのかたまり肉から色々な料理が作れること,使用する部位や量を調整して売価やコスト、利率をコントロールできることですね。」(宍倉氏)
最後は、笠谷氏による挨拶
「牛肉をはじめとした多くの食材のコストが上がってきている中、客単価をいかにして上げていくかがポイントになります。かたまり肉を上手に活用していくことが、将来的なコストの削減につながると思います。」
こちらでオンラインセミナーは終了。オフラインで参加した方々には、宍倉シェフの作った3品の試食会が行われた。アメリカンビーフ外食向けセミナーは、今回も大盛況のうちに幕を閉じた。
<セミナー概要>
開催日:2022年8月22日(月)
主催:米国食肉輸出連合会(USMEF)
企画運営:株式会社フードリンクグループ(フードリンクニュース)
会場:パティア市ヶ谷
時間:15:00~16:20 ※ウェビナー同時開催
【PR】
米国食肉輸出連合会(USMEF)
読者の感想
興味深い0.0 | 役に立つ0.0 | 誰かに教えたい0.0
- 総合評価
-
- 0.0