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2019年6月26日(水)15:42

「アメリカン・ビーフ・カッティングセミナー」レポート。米国産牛肉を使った新メニューって何?

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取材・執筆 : 桐田政隆

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会場のリストランテ「ベニーレ・ベニーレ」


 米国食肉輸出連合会(USMEF以下略)主催のフードリンクセミナー、「アメリカン・ビーフ カッティングセミナー 〜新たなステーキの可能性について〜」が、5月10日(金)、東京・原宿「ベニーレ・ベニーレ」にて開催された。


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 近年、目にする機会も増えたアメリカン・ビーフのPOP。


 米国食肉輸出連合会(USMEF)とは、1976年に米国政府、米国食肉業界により設立された非営利団体で、アメリカン・ビーフとポーク、また昨年からラムの海外市場(米国以外の国)での販売促進・広報・教育活動による需要拡大と、消費者、業界での認知の向上を目的としている。

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セミナーの司会進行を務めた、フードリンクニュースの小山裕史氏

 2019年も健在の〝肉ブーム″。そのなかで消費者、飲食業界でステーキの注目が高まっている。日本でもTボーン、Lボーン、ポンドなどのステーキ提供方法が多様化しているなか、アメリカン・ステーキをもっと外食業界の皆様に体感して頂きたい。そうした狙いから「アメリカン・ビーフ カッティングセミナー」が開催された。いくつかの部位を様々なカット手法で実演を行い、ステーキの食べ比べも体験できるセミナーだ。当日はUSMEFから、日本初上陸のステーキの新メニューも発表すると、事前にリリースされており、満席に近い盛況ぶりとなった。


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USMEF副会長 グレッグ・ヘインズ氏


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USMEFシニアマーケティングマネージャー 笠谷 樹氏

 セミナーは主催のUSMEF副会長、グレッグ・ヘインズ氏による、流暢な日本語の挨拶からスタート。セミナーは3部構成で行われ、1部はUSMEFシニアマーケティングマネージャー、笠谷 樹氏が「アメリカン・ビーフ市場動向」についての説明を行った。

 アメリカン・ビーフは2015年から生産量、日本への輸入量ともに右肩上がりで数値を伸ばしている。生産量に関しては、2019年には過去最高となる見通しだ。チルドビーフはすでに2017年に、オージービーフを追い抜いている。ここまで市場が拡大している最大の理由は、やはり味わいの差だという。アメリカン・ビーフはとうもろこしが主な飼料で、風味がよく、味が甘い肉質になる。ちなみにまろやかなサシが入る和牛も、アメリカ産のとうもろこしを主な飼料としている。


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アメリカン・ビーフととうもろこしの産地はリンクしている

 アメリカン・ビーフの生産地は、アメリカ中部、いわゆるコーンベルト地帯に集中している。とうもろこしの産地と近距離に牧場を持つことで、生産コストが減り、市場価格もリーズナブルに抑えられる。また笠谷氏は、「アメリカン・ビーフの生産は、アメリカにありがちな大量生産、大量消費のイメージとは異なります。代々続く家族経営が多く、ファミリーで協力して手塩にかけて育てている」と話した。

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ミネソタ州の生産者、ジェリー・ハンソン氏。


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ネブラスカ州の生産者 ジム・ラム氏。


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ミネソタ州の生産者 マーク・パンコニン氏


 そしてアメリカから来日した生産者が、牧場での生産の様子について、映像を交えながらスピーチを行った。

 「牧場の映像をご覧になっていただいて、ありがとうございます。牧場では325ヘクタールの敷地に、120〜130頭の牛が暮らしています。家族で手塩にかけて育てています。日本の外食産業の皆さん、ご愛顧いただきありがとうございます」(ジェリー・ハンソン氏)・

 「私達の牧場は4世代にわたって100年間の歴史があります。アンガスやヘレフォードをはじめ、いろいろな品種を、仔牛の頃から大切に育てています。牛たちは自分にとってとても優先度の高い、大切な友人のような存在です」(ジム・ラム氏)。

 「私達の牧場は雨、雪が多く、冬の寒さが厳しいミネソタ州にあります。娘とともに仲良く牛を育てています。牛たちは快適に過ごすことで味もよくなります。牧場では寒さをしのぐ牛舎や、飼料を保管する肥育場にも気を配っています。皆さん、アメリカン・ビーフを使っていただいて、ありがとうございます」(マーク・パンコニン氏)。


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アメリカン・ビーフの格付け(Grading)についての説明。


 続いて笠谷氏から、アメリカン・ビーフの市場動向の変化について説明が行われた。

 まず近年は和牛のように、アメリカン・ビーフにもブランドが拡大。さまざまなブランドを日本の商社が積極的に取り入れている。各々、特徴があって、どれも味がいい。

 また格付け(Grading)制度も一段と浸透しており、サシが豊かなトップグレード、「プライム」と格付けされる肉質が一気に増加。2018年には全体の7.95%を占め、供給が安定している為、プライムビーフの取り扱いは非常におすすめしたい状況にある。

 そしてこれまではBSE対策によって、生後30か月以下のアメリカン・ビーフしか輸入できなかったが、食品安全委員会の評価結果を踏まえ、月齢制限が撤廃されることが決定。今まで輸入できなかった30か月齢以上の牛肉が日本に供給されることにより、商品が多様化すると予想される。例えば上ミノ、タンは焼肉店にとって、大注目の商材。ヒレ、リブロース、サーロインは洋食店からのニーズが見込まれる。一般的に30カ月以上の牛肉は30か月以下のものより安く評価されるため、よりリーズナブルな価格帯の商材が増えると予想される。


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真剣に聞き入るセミナー参加者


 続いてステーキ市場のトレンドについてクローズアップ。

 2013年の2月、20ヶ月以下から30ヶ月以下へのアメリカン・ビーフの輸入条件緩和をきっかけに、赤身・熟成をキーワードに肉をメインで提供する外食業態が急増。骨付き肉の輸入も可能となり、Tボーンステーキなどが人気急上昇。いわゆる「肉ブーム」が始まった。

 2014年には「ウルフギャング・ステーキハウス」の出店から、「六本木ステーキ」ブームが起こる。

 さらにはときのワイン需要と合致。これまでの日本にありそうでなかった、カジュアルに赤身肉を食べる、一皿をシェアするというカルチャーが芽生え、肉バル業態が急増した。

 またがっつり肉を食べたい、おひとりさまニーズに対応して、「いきなり!ステーキ」が躍進した。

 またUSMEFでは、2017年に「ポンドステーキ」のキーワードを発信。ステーキをポンド(約454グラム)単位でオーダーするスタイルを打ち出し、贅沢をした気分を得られる、思う存分にステーキを楽しめると、ステーキトレンドが厚く拡大した。

 さらに近年はアメリカの高級ステーキ店の日本進出が加速。2018年にオープンした「モートンズ ザ ステーキハウス 丸の内」は、近隣のビジネスマンを中心に、本場の味わい、ラグジュアリーな空間が高い支持を得ている。また2020年にはドライエイジTボーンステーキの大人気店、「ピーター ルーガー ステーキハウス」が東京に初上陸。六本木ステーキブームでお馴染みのウルフギャング、ベンジャミン、エンパイアステーキハウスらは同店からの独立店であり、大きな話題を集めそうだ。

 そして近年は、他業種からのステーキ業態への進出が顕著である。焼肉店でお馴染みの株式会社トラジは、恵比寿に客単価2〜3万円の高級業態、「T's ステーキハウス」を出店。株式会社松屋フーズホールディングスは、地元の三鷹にリーズナブルにステーキを楽しめる「ステーキ屋松」をオープン。また株式会社ロピアの「THE BIFTEKI」、イオンリテール株式会社の「ガブリングステーキ」など、スーパーなどのフードコートにステーキ店が進出。福井県にあるコンビニエンスストア「オレボステーション」のライブキッチンでは、できたてのステーキを提供。ついにステーキはコンビニにまで進出するほどのトレンドとなった。



 次に第3部「新たなステーキとは? 〜一歩先を行くステーキの可能性〜」が、USMEFジャパンディレクター、山庄司岳道氏によって行われた。

 はじめにステーキのマーケティングについて説明。まずアメリカにおけるステーキとは、牛肉料理の主役であること。ステーキソースがアメリカには存在せず、品質の高い牛肉を塩と胡椒だけで味わうのが基本。素材を活かすという点で、日本では刺身、寿司のような感覚に似ているという。そこでステーキ業界の使命となってきたのは、美味しいステーキを提供するための、調理技術の研鑽、牛肉の品質向上であった。一方で、マーケティングとして、ステーキをいかに魅力的に見せるか?ロイン以外の部位をステーキに使用できないか?ということが追求されてきた。つまりステーキの差別化、多様化、進化である。そこで考えられたのが部位の特徴を活かした、様々なカッティング技術であった。そして山庄司氏自らカッティングの実演を行い、それぞれの説明を行った。

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筋の処理からネーミングの由来なども交えて実演する山庄司氏


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実演でカッティングしたアメリカン・ビーフ


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チャックアイロールを分割したチャックアイログ、チャックフラップ。デルモニコステーキとデンバーステーキのカッティングを行った


 肩ロースの一部でロインよりも安いチャックアイロール。スライスに適していて、ステーキにも使用できる。

 分割した肩ロースの芯部分、チャックアイログのリブ側から約10㎝の部分を切り、ステーキにするのがデルモニコステーキ。ロースに匹敵するおいしさがある。

 チャックフラップ(ザブトン)とチャックフラップテール(タチバラ)を、ステーキ状にカットして調理するのがデンバーステーキ。全体に均一にサシが入り、肉質が安定している。ロインよりも赤身が多く柔らかい。味はあっさりしていて、タレやスパイスによく馴染む。アメリカでは人気のステーキで、歩留まりがいい点も特徴だ。



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ロースの一部、サーロインからなるストリップロインを使ったカット。ニューヨークにちなんだ3種のカッティングがある


 サシが入ったステーキ用の柔らかい赤身肉がストリップロイン。ローストビーフにも最適だ。筋を除去したものをステーキレディ ストリップロインと呼び、ここから3種のステーキカットがある。

 ステーキ状に切ったものがNYストリップ。NYストリップを半分に切ったものが、ロングアイランドステーキ。NYストリップを半分に切ったものが、マンハッタンステーキという。形がマンハッタン島に似ているのが由来だ。

 トップサイドオイスターという、骨盤に付着した筋肉で、非常に柔らかい赤身肉を使ったのがオイスターステーキ、スパイダーステーキ。新しいステーキ用部位である。              


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新メニューとして発表されたアイダホ フィンガーステーキのカット。

 さらには今回のセミナーで発表する新メニュー、アイダホ フィンガーステーキのカットも実演。一口サイズのステーキ肉を使った、アイダホ州独特の文化、調理法だそうだ。部位は赤身の多いショルダークロッド(ウデ/肩三角)、トップラウンド(内モモ)を使用する。


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肉の調理に定評のある、会場の「ベニーレ・ベニーレ」にて試食メニューが調理された

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参加者に振る舞われた試食料理


 セミナーの締めくくりに試食会が行われた。振る舞われたのはカッティングの実演を行ったデンバーステーキ、ストリップロインのステーキ、オイスターステーキに加え、会場「ベニーレ・ベニーレ」自慢のローストビーフ。さらに新メニューのアイダホ フィンガーステーキも登場。

 フィンガーステーキはアメリカ人もあまり知らないアイダホ州のソウルフード。ポテト産地らしい、牛肉を揚げたものである。コストの安い部分を使い、フライドポテトと盛り付けることで、メニューの単価の軽減にもつながる。

 先日のゴールデンウィーク、大阪・中之島で行われた食フェス、「フードソニック2019」にも出店。「新感覚でおいしい!」、「あっさりして食べやすい」と、早速好評。8ピース1,000円で販売し、2,500食を売り上げた。どんなソースにも合わせやすく、ビールにも合う夏のスポットメニューとしても期待が高まっている。

 続いて調理のポイントの説明も。
①赤身の多い部位を使う。
②一口サイズに切る。
③水溶きの衣で揚げる。天ぷら衣、水溶き唐揚げ粉が推奨。ソースが絡みやすく、サイズが大きくなる。パン粉はカツの様になってしまうのでNG。
④190℃で1分揚げる。衣を加熱して、肉は余熱で通す。
 さらにUSMEFではアイダホ フィンガーステーキのPOPや販促素材を用意、提供する準備もあるという。


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新メニュー、アイダホ フィンガーステーキのPOP

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アメリカから来日したUEMEF職員、生産者も試食に満足の様子


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セミナー参加者からも高評価を受けていた

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VRによる牧場見学コーナー、「アメリカン・ビーフ体験ツアー」も好評

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閉会の挨拶を行う山庄司氏


 最後に山庄司氏が閉会の挨拶を行った。

 「ステーキブームが巻き起こっているなか、さまざまな業種の参入が目立ってきました。カジュアル、ハイエンドから小売り、コンビニなど業態や提供方法に関しても競争が激化しています。するといかに差別化できるかが求められてきます。そうしたなかでステーキの発展を支えた、カッティングが差別化につながると考えられます。またアイダホ フィンガーステーキはアペタイザーとしても新鮮で、今までと違う提案ができます。こちらもUSMEFでは販促素材、予算を用意していますので、皆さんのビジネスのなかで役立ててもらえれば幸いです。今後ともアメリカン・ビーフをよろしくお願いします」。


【セミナー詳細】
「アメリカン・ビーフ カッティングセミナー 〜新たなステーキの可能性について〜」
主催:米国食肉輸出連合会
日時:2019年5月10日(金)13:30〜16:30
会場:ベニーレ・ベニーレ(渋谷区神宮前4-31-10 YMスクウェア原宿5.6F)

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