フードリンクレポート
記事への評価
取材・執筆 : 小山裕史 2022年3月17日執筆
左:鮮魚のパリパリ包み揚げマュシュルームソース2P 右:ウニウニプリン
コロナ禍における時短営業、人手不足、食材ロス、SDGsなどの観点から、冷凍食品への注目度は高まっている。飲食店のメニューでは、冷凍食品にひと手間二手間とアレンジを加え、お店の看板メニューとしても人気を誇っている。飲食店の課題をスマートに解決する冷凍食品をうまく使いこなしている繁盛店に取材を敢行。メリットや反応など、現場の声を聞いてみた。
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最初に紹介するのは、「ミヤシタ 成ル」。渋谷、三軒茶屋、ハワイで居酒屋を展開するエイジアキッチン株式会社(本社:東京都渋谷区)が、2020年7月に東京・渋谷に開業した商業施設『レイヤード ミヤシタパーク(RAYARD MIYASHITA PARK)』に出店した業態である。ライブ感溢れる鉄板料理と和食が楽しめる日本酒専門居酒屋であり、同店の名物料理となっているのがトッピングを選べる「選べるだし巻き玉子焼き」。
「ミヤシタ 成ル」 外観
同店では、フードロスコストの削減に繋がることで、多くの冷凍食品を使用している。同店の料理長である中北浩一氏に話を聞いた。
料理長:中北浩一氏
「当店では冷凍食品をうまく活用しています。食材ロスの軽減、調理加工工程の短縮が最大の魅力です。特にこの時期(まん延防止等重点措置)は、仕入れのコントロールが難しいです。冷凍食品なら安心して保存でき、容易に発注が可能。現在は約10種の冷凍食品をメニューによって使い分けています。昔は手作りにこだわっていた商品も多くありましたが、冷凍食品の技術の向上や専門業者も増えて、手作り料理と上手く融合するのが今の主流だと思います」
「冷凍食品を選ぶ基準としては、価格もそうですが、商品力があるものを選んでいます。例えば『エイ肝レバ刺し』や『地鶏タタキ』などです。また、これまでフレッシュで仕入れていた食材を如何に冷凍食品で仕入れられるか、逆の発想を持つようになりました」
「人気のメニューは『五日間熟成 あじフライ』、『選べるだし巻き玉子焼き』です。アジフライは下処理されているので仕込みの手間を省け、揚げるだけです。シンプルなアジフライですが、福井県美浜町で獲れたアジを4~5日間熟成したアジフライなので、商品価値も高まり、メニュー価格も上げられます。いくらは高価ですが通年使いたいので、冷凍食品であればロスはありません、いくらは贅沢を演出できるのでアジフライ同様に単価を上げられる商品です」
「五日間熟成 あじフライ(750円)」
「選べるだし巻き玉子焼き※いくらトッピング(660円)」
「僕にとって、冷凍食品とは『自分にはない技術です』(笑)」
続いては、学芸大学駅近くにある「囲炉裏バル カルボ」。2020年1月にオープンした同店は、国際パエリアコンクール日本大会で2年連続準優勝、全日本タパスコンクール大会で優勝した経歴を持つ由利拓也氏がオーナーを務め、オープンキッチンで炭火焼きが楽しめるスパニッシュイタリアンの囲炉裏バルのお店である。
「囲炉裏バル カルボ」 キッチン
"天使の髪"と言われている冷凍の『カダイフ』で揚げた「鮮魚のパリパリ包み揚げマッシュルームソース」は、世界タパス大会審査員特別賞を受賞した1皿である。同店のシェフである根津直樹氏は冷凍食品の魅力をこのように語った。
シェフ:根津直樹氏
「昔に比べて冷凍技術の進化に驚いています。当店ではメニューの半分は冷凍食品をアレンジした料理となっています。人気は500円で提供している『ウニウニプリン※ショットグラスで』。ウニは金額によって味が変わります。500円で提供しているので、もちろん高価なウニは使用できません。業務用の冷凍ウニは価格を抑えられることもありますが、急速凍結で味の質を保っているので時間をおいても旬のウニの味が楽しめます。事前に冷凍ウニをプリン状に仕込み、注文が入るとウニプリンにコンソメジュレを乗せ、最後にウニを盛ります」
「『鮮魚のパリパリ包み揚げ』は、カダイフを解凍して魚に巻き付けます。カダイフを巻くことで、付加価値がつきます。同店では一番人気のメニューとなっています。くずしフレンチのようなメニューでお客様も食べたことがない食感で、皆さま驚いています。冷凍カダイフの魅力は、生地なので仕込みに対して必要な分だけ解凍して、巻き付けるので使い勝手がめちゃくちゃ良いです。あとは、小さいお店なので、ストッカーに必要最低限の分だけストックすることで、作業スペースを効率よく使えます」
「ウニウニプリン※ショットグラスで(500円)」
「鮮魚のパリパリ包み揚げマュシュルームソース2P(1200円)」
「僕にとって冷凍食品とは『手間をかけずに料理に"華"を咲かせるアイテムです』」
最後は、東京・北千住、知る人ぞ知る路地裏の迷店「貝と魚と炉ばたのバンビ」。看板もなければ、エントランスもない。入店するにはインタホーンを鳴らし、お店の入口を聞いて入店する隠れ家である。毎日、三浦漁港から仕入れる朝獲れ鮮魚をダイナミックに調理する炉端焼きである。
「貝と魚と炉ばたのバンビ」
「貝と魚と炉ばたのバンビ」 内観
同店の現在の課題は、コロナ禍における人手不足である。仕込みに入れる人数も少なく、この課題をクリアしてくれるのが冷凍食品であるとオーナーの宮下悟氏は言う。また、これからの季節は食材の腐敗や食中毒の恐れも懸念材料のひとつである。宮下氏に冷凍食品の活用を具体的に教えてもらった。
オーナー:宮下悟氏
「冷凍食品はますます飲食店で普及していくアイテムだと思います。一番の理由は人手不足です。当店の課題でもありますが、仕込みの人数が少なくなると仕込みに時間がかかってしまいます。仕込みをせざるを得ない食材もありますが、全ての食材を仕込んでいたら時間が追いつきません。そこをクリアにしてくれるのが冷凍食品です」
「また、冷凍食品は味のブレが一切ないので、調理経験が浅いスタッフでも同じ味の料理をお客様に提供できます。商品の技術も上がっていますので、コロッケなどの揚げ物は手間もかかるので冷凍食品に頼るのがベストだと思います」
「当店は刺身や天ぷら、煮つけなど和食のメニューがメインとなっていますが、洋のメニューも揃えることで、メニューの選択肢が広がります。『ベーコンと明太子のパイ生地でサックサクピザ』は、若い女性客から人気のメニューとなっています。冷凍のパイ生地は水分が蒸発しないため、長期保存しても瑞々しくサクサクに焼き上がります。明太子、ベーコン、チーズをたくさん使っていますが、原価率は16%であり、当店のメニューのなかでも高利益メニューとなっています」
ベーコンと明太子のパイ生地でサックサクピザ(1000円)
「僕にとって冷凍食品とは『味のブレがなく、お客様に安心して提供できる商品です』。食材の無駄などロス削減にもなりますが、誰が調理しても味が均一であることは飲食店にとっては一番の安心材料ではないでしょうか」
今回、3つのお店の声を聞いたが、冷凍食品に対する評価は言うまでもない。食品ロスの削減、仕込み時間の短縮、人手不足の解消などもあるが、メニューに広がりが増え、お客様の選択肢が増えるという点でもよい効果となっている。業務用における冷凍食品の最前線は、活用法にも幅があって面白いことが分かった。
<取材協力>
「ミヤシタ 成ル」
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-20 10RAYARD MIYASHITA PARK North 3F
TEL:03-6712-5212
「囲炉裏バル カルボ」
〒152-0004 東京都目黒区鷹番3-7-13 ホワイトウエル鷹番 2F
TEL:03-6303-2236
「貝と魚と炉ばたのバンビ」
〒120-0034 東京都足立区千住2-62 富士ビル3F
TEL:03-3879-3559
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一般社団法人 日本冷凍食品協会
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