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取材・執筆 : 小山裕史 2020年11月20日執筆
2011年に発売した、宝酒造のスパークリング清酒「澪」。当初は、百貨店や飲食店など限定で販売していたが、2013年秋からは販売ルートをスーパーなどにも拡大して、売上を大きく伸ばしている。飲食店では定着した「澪」であるが、家庭では浸透したのか。
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スパークリング清酒市場のトップシェアを誇る「澪」。発売当初から、業務用への強化を図り、清酒への馴染みの薄い若年層にウケたこともあり、多くの飲食店で採用された。今年3月には、スパークリング清酒「澪・一果(バナナ・イチゴ)」が全国で発売された。20代、30代をコアターゲットにした「澪」は、若年層の家飲みを促進する「澪パ(澪パーティー)」というメッセージを打ち出した販売戦略を行っている。
若年層をコアターゲットにしている「澪」。レモンなど果実系RTDが多種販売されているなか、「澪」はどうなのか。スーパーなど量販店を回り、「澪」の動向を探ってみた。
視察したスーパーでは、他の酒類メーカーのスパークリング清酒も見るが、「澪」はどこのスーパーにも並んでいた。売場のスタッフに聞くと、「澪」はCMや飲食店での扱いも多いので、スパークリング清酒のなかでは圧倒的な認知度を誇っていると言う。どのスーパーも「売れています」と答える。競合のスパークリング清酒が少ないこと、エンドユーザーが多いのが理由であると思う。
ただ、スーパーを視察して気になることがあった。宝酒造は2015年3月期決算で「澪」の育成加速について以下のように発表している。
・今期の施策としては、各種の情報発信により商品認知率の向上と飲用実体験を促進し、新しいファン層を獲得していきたいと考えています。
・当社の調査によれば、「澪」をご存知ない、あるいは知っているけれども飲んだことがない、という方がまだまだ多くいらっしゃることが分かりました。
・こうした方々に、「澪」を知っていただき、実際に手に取って味わっていただくことが、 売上の拡大につながっていくと考えています。
・「澪」のユーザーには、従来の清酒ユーザーとは異なる、若い年代や女性の方が多いのが特徴です。
・こうした方々に向け、スマートホン用のアプリや動画サイトを活用した情報発信を積極的、継続的に行い、新しいファン層の獲得を図ります。
(宝ホールディングス 決算説明会資料より)
気になったのは、上記の3点目である。澪の育成を加速するために、「実際に手に取って味わって・・・・」のあるが、若年層が手に取れるような環境に整っていないことである。
多くのスーパーで「澪」は、清酒のコーナーに陳列されており、カップ酒やパック酒、360mlのミニボトル清酒など一緒に並んでいる。果たして、日本酒に馴染みの薄い若年層がスーパーの清酒コーナーに足を運ぶのだろうか。
清酒のスパークリングなので、清酒コーナーに陳列するのは当然であるが、「澪」を知って頂き、味わってもらうのであれば、スパークリングワインのコーナーに並べたほうが若年層の目に留まりやすいのではないだろうか。クリスマス商戦で、スパークリングワインのニーズが高まることは、「澪」としてもチャンスである。若年層がクリスマスに飲むアルコールを買いに、清酒コーナーに立ち寄ることは考えにくい。スパークリングワインのコーナーに「澪」を並べることで、コアターゲットである20〜30代が手に取りやすくなるのではないか。
「澪」は、清酒カテゴリーであるが、酒類のカテゴリーを飛び越えた陳列をするべきである。
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