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2019年8月14日(水)12:30

大衆酒場、大手が名店の真似をしてもダメな理由

元「居酒屋」編集長が読む飲食のイマ

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取材・執筆 : 石田晢大 2019年5月18日

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大衆酒場A.png

 大手外食企業が大衆酒場を相次いで出店している。総合居酒屋チェーンが活況を呈していたのは、いまは昔。大手居酒屋企業は、総合居酒屋の立て直しに四苦八苦だ。それを尻目に、ここ5年くらいのうちに新進の大衆酒場業態「BEETLE」に代表される支店経営レベルの外食企業や個人経営の大衆酒場が続々とオープンし、比較的若い世代の男女で大賑わい。「それならうちでも」と、大手が考えるのはわからなくもない。

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 「磯丸水産」に続き、既存ブランドである鶏料理居酒屋「鳥良」を大衆酒場「鳥良商店」にカジュアルダウンして成功したSFPホールディングスも、大衆酒場業態である「五の五」や「ホームベース」を出店している。なんというか、よく研究しているな、というのが正直な感想だ。



 「五の五」のフードメニューには、煮込みや串焼きに加え、「チューリップ」「どてスジ串」など、どこかで見たような、というラインアップがある。ドリンクも「かちかちレモンサワー」をはじめとして流行りを押えている。商品のクオリティは、おしなべて悪くない。内外観は、おそらくあえてチープなつくりにして大衆酒場らしさを演出。店員も声を張り上げて頑張っている。でも、どうも違う。たとえば、看板商品の「塩煮込み」はあっさりとした上品な味わいで、小皿で柚子コショウを添えてくれるのだが、「これじゃない感」が半端ない。
 
 この違和感はなんだろうと小首をかしげながら、アメ横にある上野6丁目店を出て、お客でごった返す向かいの立ち飲み酒場「たきおか」に移動すると、疑問はすぐに解けた。ひと言でいうと、こっちはすべてにおいて雑なのだ。

 入店すると「はい、ここ!」と有無をいわせず、店員に立ち位置を決められる。基本的に敬語を使われることはない。煮込みは「濃ゆい」味つけなうえ、店員によってだいぶ量が違うし、どっさり盛られたネギは器からこぼれているし。カウンターを拭くのもお客まかせだ。でも、大衆酒場はこれでいい。QSC(※)なんてクソくらえ、である。なぜなら、ここのお客はだれもそんなことを気にしていないからだ。それどころか、昨今、外食店の過剰なサービスに食傷気味の身にとっては、むしろこの気取らない感じが心地いい。

大衆酒場B.png

 「たきおか」は客単価1000円台の立ち飲み店ということもあって、さすがに極端な例かもしれないが、それでもアバウトな(でもおいしい)商品メイクや、ぞんざいな(それでいて気が利く)接客は、クラシカルな大衆酒場のスタンダードといっていい。それによって、活気と緊張感が同居する、そしてきちんと清潔感がある厨房と店内がある大衆酒場ならではの雰囲気が生まれるのである。

 これはどうあがいても大手外食企業には真似できないし、真似する必要もない。チェーン化とはもっとも遠いところにあるスタイルなのだから。大手外食(居酒屋)企業がその優位性を生かすなら、大衆酒場業態に安易に手を出すよりも、「串カツ田中」や「がブリチキン。」にならって、チェーン化しやすいフォーマットを開発することに精を出すべきではないか。

※Q=商品のクオリティ、S=サービス、C=クレンリネス。外食店のレベルをはかる指標とされる


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