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取材・執筆 : 小山裕史 2025年8月7日
米国大使館での認定式(2025年6月25日 開催)
【記事のポイント】
●アメリカ大使館職員150人が試食・審査して認定したハンバーガー店に贈られた最高栄誉。
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米国食肉輸出連合会(USMEF)が、アメリカンビーフの魅力を広く伝える活動の一環として「在日米国大使館公認プログラム」を始動した。
「在日米国大使館公認プログラム」とは、米国大使館より「在日米国大使館公認料理店」の認定証と認定ロゴが授与されるプログラムであり、記念すべき第一回目は、アメリカンビーフ100%を使用した国内のハンバーガーショップが対象となった。
去る、5月28日(水)、29日(木)の2日間、米国大使館(東京・赤坂)内にて、米国大使館の職員150名がハンバーガーを試食、審査を行い、「在日米国大使館公認アメリカンハンバーガーショップ」として6店舗が認定され、6月25日(水)に認定式が行われた。
アメリカンビーフのパティに一貫してこだわるハンバーガーショップにとって、これこそ唯一無二の究極の勲章である。下記、授与された6店舗を紹介する。※順不同
■American Diner ANDRA(上野)
~日本で叶うLAの味!本場のローカルフードを昇華させた絶品ハンバーガー~
「日本にいながら、まるでアメリカにいるかのような体験を」をコンセプトに掲げるアメリカンダイナー。魅力は、店主がロサンゼルス留学時代に足繁く通い、心から愛したローカルフードをアレンジ。ハンバーガーはスマッシュバーガーがベースであり、旨味を閉じ込めたパティは、こだわり抜いたハラミと肩ロースの絶妙なブレンドから生まれる。
■Louis Hamburger Restaurant(東陽町)
~名門のDNAを受け継ぐ新星!「BROZERZ」仕込みの技が光る、肉感溢れるアメリカンバーガー~
同店のハンバーガーを語る上で欠かせないのが、こだわり抜かれたパティ。厳選されたアメリカンビーフ100%を、惜しみなくハンドチョップで仕上げることで、肉本来の旨みと、噛みしめるごとに溢れるジューシーな肉感を最大限に引き出している。
■OVERWHELM HAMBURGER & BAR STAND(学芸大学)
~妥協なき情熱が宿る一皿!熟練の技が光る「ステーキのような」絶品バーガー~
東京・人形町の名店「BROZERZ」本店で3年半もの間、料理長として腕を振るい、その後、芝浦でさらなる研鑽を積んだ実力派シェフが、満を持して独立オープン。提供するのは、単なるハンバーガーの枠を超えた、まさに「ステーキのような」食べ応えを誇る至高の一品。
■Phat Q(池袋)
~煙と肉の芸術!12時間燻製ブリスケットが織りなす、本場テキサスBBQの感動~
本場テキサススタイルを継承し、オフセットスモーカーでじっくりと12時間かけて燻製された極上ブリスケットが贅沢に使用されている。店主がこだわり抜いたのは、カスタムメイドのオフセットスモーカー。この特別な窯で丁寧に焼き上げられるブリスケットは、外はカリッと香ばしく、中は驚くほどしっとりジューシー。
■Rick's Cafe American(町田)
~時代を超えて愛される、町田の老舗で味わう、これぞ王道クラシックバーガー~
創業は1984年。町田で愛され続ける看板メニューが、「クラシックチーズバーガー」。パティには、厳選されたアメリカ産100%のチャックアイロールを、あえて12㎜という超粗挽きで仕上げている。
■YUMMY BURGER(下北沢)
~T.Y. HARBORのDNAを受け継ぐ新星が魅せる、ヘルシー&ジャンキーの新感覚バーガー~
アメリカ料理への深い知識と、「美味しい×楽しい」を届けたいという熱い想いが込められており、その独創性を象徴するのが、おからと豆乳を使ったふわふわのソイバンズ。パティにはチャックアイロール100%のスマッシュパティに手作りされた濃厚なBBQソースが絡み合う。
認定されたお店のオーナーからは、「バーガー選手権で優勝するのも嬉しいですが、今回、在日米国大使館から公認をいただけたことは、それ以上に大きな喜びです。ハンバーガーの本場であるアメリカから直接、私たちのこだわりを認めてもらえたことは、この上ない最高の栄誉だと感じています」、「お店にとって大きな自信になりますし、お客様にも『本物の味』を提供しているという何よりの証明となります」などといった、歓喜の声があふれている。
今回、「在日米国大使館公認」の栄誉に輝いた6店舗。いずれもが、並々ならぬこだわりと情熱を持ってハンバーガーを追求する名店ばかりであり、その中から、特にアメリカの世界観を強く感じさせる2店舗のオーナーを取材した。

「在日米国大使館公認プログラム」から贈られた認定書 ※画像は「Rick's Cafe American」
1984年に創業した、「Rick's Cafe American」。4代目オーナーである岩室能力氏が、カジュアルからアメリカンダイナー寄りのスタイルに変更した。バーボンは約200種類以上を取り揃え、同店のシグネチャーメニューとなっているのが「クラシックチーズバーガー(1,380円 ※税込、以下同)」である。

「Rick's Cafe American」店内

「Rick's Cafe American」オーナー 岩室能力氏
都内23区のお店がフューチャーされるなか、愚直に町田でアメリカンバーガーにこだわり続けた岩室氏がアメリカンビーフにこだわり続ける理由を聞いた。
「バーボンとアメリカンビーフは必要不可欠です。代わりになるものがないと思います。今回、認定され純粋に本当に嬉しいです。最初はなんでうちなのかなと思いましたが、いろいろとそのコンセプトとか話を聞くと、真面目にやっててよかったなと思いました」(岩室氏)

「行き着いたのはやはり品質でした。一見シンプルに見えるハンバーガーだからこそ、そのクオリティには徹底的にこだわりたいと思いました。ハンバーガーの命とも言えるパティには、本当に何がベストなのか、納得がいくまで試行錯誤を繰り返しました。様々な産地の牛肉を試した結果、やはりアメリカンビーフだけが突出しており、ハンバーガーに最高の相性を見せてくれると確信したんです」(岩室氏)
「バーガーは、チャックアイロール(肩ロース)のみを使っています。パティは150g、味付けは塩こしょうだけです。ご存知の通り原価は高いですが、お客様が同店のハンバーガーを食べてリピートしてくれています。味の違いが分かる人には分かるので、裏切りはできないと思っています。純粋にアメリカンビーフ以外は考えていません(笑)」(岩室氏)

看板メニューの「クラシックチーズバーガー(1,380円)」
また、岩室氏からこんな需要を聞いた。
「最近、お酒を飲んだ後の締めとして、同店のハンバーガーを召し上がってくださるお客様が増えているんですよ。昔から飲んだあとはラーメンが定番ですが、まさにその感覚で来てくれる方が多いです。お客様に話を聞くと、『飲んだ後に食べるなら、ラーメンよりもハンバーガーの方が翌日楽なんだよね』という声が結構多いんです。特に40代、50代のお客様が目立ちます。そこで、町田で『〆バーガー』なんて言葉を流行らせようかなと(笑)」

最後に物価高騰のなか、なぜアメリカンビーフにこだわるのか。岩室氏にホンネを聞いてみた。
「もちろん、為替の問題や原価高騰は、私たち飲食店の経営にとって非常に大きな課題であり、その大変さは痛いほど分かります。しかし、飲食業の根本にあるのは、お客様に『美味しい』と心から喜んでいただくことじゃないですか。そのために何を使うかという選択は、最終的には自分の中に問いかけなければならない、譲れない部分だと思います。目先の利益も大切ですが、『美味しい』という声のために、アメリカンビーフを使い続けています」(岩室氏)
「そして、最後に一つ言わせてください。私たちにとって、アメリカンビーフは単なる食材ではありません。それは、日本の食文化に根付いた、懐かしさと新しさ、そして本物の味わいを象徴する存在だと考えています。この思いを、これからも大切にしていきたいですね」(岩室氏)
「フードリンクニュースさん!飲んだあとの"シメバーガー"流行らせてください(笑)」
2015年5月、東上野にオープンした「American Diner ANDRA」。オーナーの塩田氏は15歳からアメリカンフットボールをはじめ、高校、大学と続け、社会人になってからも3年間社会人リーグでプレー。その後、アメリカに留学し、現地のハンバーガーに魅了され、そこでの食文化体験が現在のお店のコンセプトに大きな影響を与えた。

アメリカンフットボール好きにはたまらない店内

「American Diner ANDRA」オーナー 塩田龍太郎氏
アメリカでの留学経験を持つ塩田氏。「アメリカのフリーウェイにあるガソリンスタンドの横で、気軽に立ち寄って食べるハンバーガー。あの、遠征途中に感じた、心躍るようなバーガーをこの店で再現したかったんです」と語る、塩田氏のアメリカンバーガー愛を聞いた。
「今回、このような称号をいただき、素直に嬉しいです。アメリカをコンセプトにしているお店として、本場の人に認められたことで、より本物に近づいたという気持ちがあります。アメリカ留学して2シーズンプレーしました。お金がなかったので、ローカルのバーガーショップでよく食事をしていました。その時の食文化が日本に帰ってきた時になかったので、自分で作りたいと思いました」(塩田氏)

シグネチャーバーガーである「チーズに いん したハンバーガー(2,300円)」
「パティは、単一の部位ではなく、アメリカンビーフを独自の配合でブレンドしています。使用しているのは、チャックアイロール(肩ロース)とハンギングテンダー(ハラミ)です。チャックアイロールを50%使い、そのうちの半分を粗挽き、もう半分を細挽きにすることで、肉の旨味とジューシーさを引き出しています。そして、残りの50%にはハンギングテンダーを100%粗挽きで使用しています。結果、全体としては粗挽きが75%、細挽きが25%という比率になります。このブレンドによって、噛み応えのある食感と、濃厚な肉の旨みが口いっぱいに広がる、パティが完成しました」(塩田氏)

「個人的に、バベット(ハラミ)のステーキが好きで、アメリカにいた頃はよく食べていたんです。ハラミの魅力は、脂肪が少ないのに、血液が豊富に含まれているおかげで、ジューシーで柔らかい食感を楽しめる点にあります。僕自身、脂身が少し苦手なので、このハラミの特性を活かしたいと考えました。そのため、同店のハンバーガーには牛脂を一切加えていません」(塩田氏)

最後に、アメリカンビーフにこだわり続けてきた塩田氏にとって、アメリカンビーフの魅力とは何か。フードリンクニュースの読者へのメッセージを聞いた。
「例えるなら、自分が『可愛い』と思っている女の子を、他の人が『そう思わない』と言うのは、感情の違いだと思うんです。それと同じで、僕たちが作り上げたアメリカンビーフのハンバーガーを、全てのお客様が最高だと思ってくださるわけではないかもしれません。それでも僕は、この美味しさをもっと多くの方に知ってもらい、共感してくれる方が増えれば、これほど嬉しいことはありません。ハンバーガーという身近な料理を通じて、アメリカンビーフの本当の魅力を伝えていきたいですね」

最後に、初の取り組みとなった「在日米国大使館公認プログラム」について、米国食肉輸出連合会(USMEF)の加藤悟司ジャパンディレクター(日本代表)に話を聞いた。

米国食肉輸出連合会(USMEF)ジャパンディレクター 加藤悟司氏
「アメリカンビーフを使ったハンバーガーにフォーカスを当て、『在日米国大使館公認プログラム』としてPRすることで、アメリカンビーフを使ったハンバーガーの良さを外食業界や消費者の方に、その魅力を知っていただくために発足しました。ハンバーガーはアメリカの食文化でありながら、実際には他国産のお肉を使っているケースも多いため、アメリカンビーフにこだわって提供していただいているお店を応援する目的になります」(加藤氏)
「5月28日、29日の2日間、在日米国大使館内のカフェテリアにて審査会を開催いたしました。大使館職員150名の方にご協力いただき、点数をつけてもらいました。一定の点数以上のところを認定する仕組みで、結果的に今回ご参加いただいた6店舗全てが基準を満たし認定されました」(加藤氏)

「今後はハンバーガー以外にも、ステーキレストランやバーベキューなど、他の業態でも同様のプログラムを展開する予定でいます。ハンバーガーについても来年また実施するかなど、検討していきます」(加藤氏)
昨今、アメリカンビーフの価格高騰は否めない。為替の影響による円安に加え、アメリカ国内はもちろん、中国や東南アジアなど世界中で需要が飛躍的に高まっており、人件費や物流コストの上昇、さらには畜産業界特有の「キャトルサイクル」による一時的な生産量減少も重なり、価格は上昇傾向にある。
しかし、この厳しい市場環境の中でも、アメリカンビーフにこだわり続けるお店が数多く存在する。彼らがこだわるのは、価格では決して測れない「価値」ではないだろうか。
アメリカンビーフにこだわり続けるオーナーたちの情熱は、まさに「本物の味」を追求する彼らの哲学そのものと言える。
「アメリカンビーフはパティがうまい」。それしか言えない(笑)。
<取材店舗>
「Rick's Cafe American」
東京都町田市原町田4-7-3 内藤ビル 2F
TEL:042-723-2211
「American Diner ANDRA」
東京都台東区東上野5-13-7
TEL:03-3847-8418
<協力>
米国食肉輸出連合会
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