フードリンクレポート
記事への評価
取材・執筆 : 小山裕史 2021年8月16日執筆
アメリカで購入したミートクロウフォーク(SUBURBAN GRILL 越石オーナー)
アメリカの伝統料理であるプルドポーク。17世紀頃にアメリカ南部のテネシー州メンフィスやノースカロライナ州で生まれたとされる代表的なバーべーキュー料理である。プルドポークは豚の肩ロースやウデの塊肉を用い、店ごとにアレンジした調理法で作っている。味付けやメニューは異なるものの、多くの店では共通点はアメリカンポークを使用していること。なぜ、アメリカンポークなのか、どこが違うのか?アメリカンポークに拘る理由を聞いた。
<関連記事>
「やっぱりジワジワきてるよね"プルドポーク"」アレンジレシピも多彩で売れる1品、マチガイナイ
プルドポーク専門店、東京・原宿にオープン。BBQブームに乗る
簡単&ウマいトレンド食のプルドポーク!!バーガーと合わせればコロナ禍のテイクアウト需要にもピッタリ
神奈川・湘南に本場アメリカの味を精通したオーナーが営むお店を2件見つけた。JR相模線、香川駅から住宅街に歩くこと徒歩5分の場所にあるのが、「SUBURBAN GRILL(サバーバン グリル)」。実はこの店、居酒屋「越善」を昼間の時間帯のみハンバーガー専門店として間借り営業している。店の入口にはハンバーガーのバナーやメニュースタンドが設置してあるが、外観は居酒屋のため、気づかず通り超してしまうお客も多数いると言う。オーナーである越石一貴氏は、ニューヨークやロサンゼルスで本場のバーガーを食べ歩き、グルメバーガーの虜になった。ハンバーガー専門店を渡り歩き、2019年4月にSUBURBAN GRILLをオープンさせた。
バーガーメニューは全10品、なかでも差別化メニューとしてお勧めしているのが「プルドポークチーズバーガー(1100円)」である。
越石オーナー
「アメリカンポークは供給も安定しており、大豆ととうもろこしを食べて育っているので、とてもヘルシーで、漠然とですが味が好きです。アメリカのバーベキュー料理と言えばプルドポークであり、オープン当時はそこまで浸透していなかったので、面白いと思いメニュー化しました」
「プルドポークは塊肉にチリパウダー、ガーリック、ペッパー、クレイジーソルトなどのスパイスを付けて2日ほど真空で寝かせます。バーベキューソースは甘ったるくならないように、カイエンペッパーを入れて、はっきりした味にまとめています」
「プルドポークだけを挟んだバーガーだと物足りなく、尚且つ、価格が1000円以上だと私としては高いと感じます。ビーフパテとプルドポークを合わせることで、バーベキューソースの風味にビーフパテのしょっぱさがフレーバーとして調和され、バランスのとれた味になります」
「お客さんの多くはプルドポークを知らず、『アメリカ南部の伝統料理で外国っぽい味です』と、説明すると興味本位で注文されます。一度食べると、お客さんの多くはプルドポークにハマり、リピートします」
プルドポークチーズバーガー(1100円)
JR茅ヶ崎駅北口、鉄砲通り沿いに湘南の風景によく似合う佇まいの店が、「ディグ イン サンドウィッチ」である。オーナーの内海達也氏は、日本にカフェカルチャーを根付かせてきたカフェ・カンパニーの出身。カフェ・カンパニー在籍中に1年ほど休職してアメリカに渡り、帰国後間もなくして独立。当時、住んでいたオレゴン州ポートランドで出会ったプルドポークに感銘を受け、またポートランドと湘南の風景がどこか被るところもあり、茅ケ崎の地にグリルサンドウィッチとクラフトビールの専門店として、2019年2月新規オープンした。
店名の「ディグ イン」とは、『かぶりつく』との意味があり、また、アメリカの食卓では料理を並べた際に「Let's DIGIN !(さぁ、召し上がれ!)」と言う習慣がある。オーナーの内海氏はプルドポーク単体が主役ではなく、色々な食材とプルドポークを合わせたメニュー作りがポイントであると言い、同店では様々なプルドポークメニューを提供している。
内海オーナー
「ポートランドに住んでいたとき、日常食としてプルドポークは当たり前にお店や家庭の食卓にありました。正直、アメリカに行く前にはプルドポークは聞いたことはありませんでした。昨年、トレンド予測にプルドポークがランクインされたのもあり、認知度も高まっていると思います。既に湘南のお客さんにも浸透しています」
「『BBQプルドポーク(1150円)』は、お店の看板メニューでもあり、一番人気のサンドウィッチメニューです。オープン当時はサンドウィッチのみでしたが、ディナー時のメニュー数を増やす目的で、サンドウィッチ以外のプルドポークメニューを開発しました。ニューヨークの屋台メシと言えばチキンオーバーライスですが、日本のカフェでも定番メニューのため差別化を図り、チキンではなくプルドポークを乗せた『BBQプルドポーク オーバーライス(1200円)』や、トルティーヤチップの上にプルドポークを乗せた『プルドポークのBBQナチョス(880円)』など、サンドウィッチに限らずプルドポークメニューは人気です」
内海オーナー
「プルドポークのポイントはバーベキューソースです。ソースはスパイスも調合していますが、お肉自体をスモークしていないので、スモーク感を作りたくて、バーベキューソースにピメントン(燻製のパプリカパウダー)を多めに使いソース自体にスモーキーな風味を出しています。細かくほぐしてからソースに絡め保存、注文ごとに鉄板で焼き、香ばしさを出します」
「何故、アメリカンポークなのか?シンプルな回答ですが、アメリカンカルチャーを発信しているお店なのでポークもビーフもお肉はアメリカ産に拘りました。美味しさ云々もそうですが、アメリカンな料理を作るのであれば、アメリカ産のポークやビーフと、アメリカのアルコールは必須だと思います。他の産地のお肉を使うことは最初から考えていませんでした。お店としての心構えでもあり、アメリカ産を外すわけにはいきません」
BBQプルドポーク(1150円)
BBQプルドポーク オーバーライス(1200円)
プルドポークのBBQナチョス(880円)
紹介した二人のオーナーは、本場アメリカの味を体感しており、アメリカンポークではないプルドポークは考えられないと熱く語ってくれた。
最後に紹介するのは、横浜市都筑区センター北駅から徒歩1分の場所にある「Byrd's Pizza & Ribs(バーズピッツァアンドリブス)」。アメリカではポピュラーなスポーツバー&レストランである。横浜で30年以上に渡りアメリカンカルチャーを発信し続けている有限会社マザールーシの新店舗であり、他にも横浜市内でアメリカンダイナー「バブルオーバー」や、アメリカンレストラン「トルバドール」など、同店含め4店舗を展開している。
2018年2月にオープンした「Byrd's Pizza & Ribs」は、店名にもなっている「バックリブ」がウリのレストランであるが、プルドポークを使ったメニューも人気だと言う。アメリカンバーベキューをコンセプトにしており、尚且つアメリカンレストランを展開する同社のポリシーとして、ポークもビーフもアメリカ産のみを使用する強い拘りを持っている。
二本木料理長
「アメリカンポークを使っている理由としては会社の方針もありますが、アメリカンポークではないと出せない香りや味を大事にしています。バーベキューをする際に余分な脂が落ち、イメージと裏腹にヘルシーな肉質がアメリカンポークの特徴です。また、脂が抜けたあとも、ジューシーでありしっかりと旨味は残ります」
「アメリカンポークは『バックリブ』の他、『CTバット(肩ロース)』や『ベリー(バラ)』を使ったメニューもございます。プルドポークメニューも人気であり、なかでも一番オーソドックスな『プルドポークサンドウィッチ(1500円)』は、是非、召し上がってもらいたい逸品です」
「プルドポークは20キロの塊肉を塩コショウだけで一晩寝かせ、8〜10時間ぐらいスモークして提供しています。漬けたり、マリネにしたり、ラブスパイスでスモークするなど、トライ&エラーを繰り返した結果、シンプルに肉の美味しさが一番伝わるのが塩コショウでした。バーベキューソースは、細かくはお伝えできませんがケチャップベースに糖蜜、アップルビネガーなどを使っています」
二本木料理長
上段右:プルドポークサンドイッチ(1500円)、下段左:ダーティーフライ(1100円)、下段右:BAR-B-Q PLATTERS TEXAS(4190円)
取材した3店舗が口を揃えて言うのが、アメリカの伝統料理であるプルドポークはアメリカンポークを使うのが当然であるということ。もちろん、ジューシーでやわらかな肉質の美味しさに魅力も感じているが、アメリカ料理に強い拘りを持っているからこそ、このスタイルを貫き通しているのではないか。
<取材店舗>
「SUBURBAN GRILL」
〒253-0082 神奈川県茅ヶ崎市香川4-49-18
TEL:0467-67-9697
「ディグ イン サンドウィッチ」
〒253-0053 神奈川県茅ヶ崎市東海岸北5-5-23
TEL:0467-87-1088
「Byrd's Pizza & Ribs」
〒224-0003 神奈川県横浜市都筑区中川中央1-1-6
TEL:045-515-2940
【PR】米国食肉輸出連合会(USMEF)
読者の感想
興味深い0.0 | 役に立つ0.0 | 誰かに教えたい0.0
- 総合評価
-
- 0.0