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2022年3月29日(火)14:21

和食店でフェアや新メニューづくりに役立つ"適格な調味料"の活用方法とは

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取材・執筆 : 千葉哲幸 2022年3月27日執筆

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「なぎ屋 千歳船橋店」店長  出口将平氏

和食の調味料は塩・醤油・味噌がベースとなる。これに、酒、みりん、砂糖などを加えて目的別の"適格な調味料"を整える。店の魅力を磨くためにフェアとか新メニューを検討する場合、最初のハードルはこの"適格な調味料"を整えることではなかったか。しかしながら最初から"適格な調味料"が存在すれば、難なく新メニューにトライアルできる。それを実践した和食店の事例を3つ紹介しよう。

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■既存メニューにソースをかけただけで"韓国風"をつくり常連客を飽きさせない

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「なぎ屋 千歳船橋店」の店頭。近所から引っ越していったかつての常連客が土日祝日に訪ねてくるという心安らぐ店だ。

まず「なぎ屋 千歳船橋店」。同店は小田急線・千歳船橋駅を出てすぐの道路を隔てた商店街の入り口、ビル1階の奥まったところにある。一見のお客にとって分かりにくい場所かもしれないが、常連客にとっては居心地がいいようだ。

筆者が同店を訪ねた時に、オープンキッチン前のカウンター席に通された。隣には初老の男性と40代の男性の二人連れがそれぞれの中学生当時の思い出話で盛り上がっていた。初老の男性はこの近くの大学の先生で、常連客ながら久しぶりに来店したようだ。キッチンの従業員も二人の会話に加わっていた。

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店内はアットホームな雰囲気で、常連客の会話に従業員が加わる光景が見られる

メニューは"ザ・大衆居酒屋メニュー"といったイメージ。焼きとん、焼き鳥、もつ鍋、このほか肉や野菜の一品料理で構成されている。そこで、日ごろ常連客に「新しい何か」を感じ取ってもらうための新メニューづくりを模索していた。

同店の店長で「なぎ屋」業態のエリアマネージャーを兼務している出口将洋氏は「韓国風のメニューがなかったことから、最近人気のヤンニョムチキンをつくってみることにした」と語る。

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ミツカン酢「ベース職人 濃旨しょうゆだれ」

ヤンニョムチキンのソースは、ミツカン酢の「ベース職人 濃旨しょうゆだれ」をベースにした。これは、本醸造・再仕込み・たまりの3種の醤油をブレンドし、さらに三温糖を使用している。同店ではこれに、コチュジャン・砂糖・みりんを加えて、隠し味にケチャップを入れた。試作は納得がいくまで行った。こうして、既存の「鶏の唐揚げ」450円(税別)にこのソースをかけるだけでまろやかな塩味と辛味のある新メニューが誕生した。それが「唐揚げのヤンニョムチキン風」550円(税込)である。

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「唐揚げのヤンニョムチキン風」550円

同店はほとんどが常連客で、この新メニューは大いに歓迎されている。"自分の酒場"が「韓国風」にトライアルしたことに興味を引かれているようだ。味わいが酒に合って、酒も進む。

出口氏によると、同店の客層は20代から70代までで中でも40代が多く男性が6割程度。客単価は2300円と毎日でも来ることができる価格設定だ。気の置けない男女グループが、普段使いの飲み会を楽しんでいる。

そこでメニューの一皿は2人で食べる量を想定していて「鶏の唐揚げ」のボリュームは130~140gにしている。お一人様にはハーフポーションもできることを伝えている。

「今回韓国風メニューが加わったことでお客様に喜ばれていますが、自分としてもベース職人という新しい調味料にチャレンジしたことが楽しかった。コロナが明けてお客様が戻ってきたときに『なぎ屋に新しいメニューがある』と喜んでいただけるようトライアルを続けていきたい」と出口氏は語る。

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「なぎ屋 千歳船橋店」店長の出口将平氏。「なぎ屋」業態のスーパーバイザーを兼務している。


■20代女性に人気の"ネオ大衆酒場"が完璧な調味料でエスニックにトライアル

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「渋谷109」の向かい、ビルの1階にある「呑ん処二〇九」には"ネオ大衆酒場"の風情がある。

同店の料理長、藤野晋平氏によると看板メニューは、すし、天ぷら、すきやきで「日本の代表的なメニューをリーズナブルな価格で、少しずつ食べられる大衆的な居酒屋。一方でナチュラルワインを楽しんでいただく」という、"大衆"と"マニアック"が粋な組み合わせに感じられる。

同店メインの客層である20代女性二人連れが初めて来店すると、SNSにある「これと、これと、これ」という感じで注文する。それは大抵「大根の天ぷら」と「しそ天」の上に、うに・イクラ・明太子をトッピングしているものだ。大根の天ぷらはおでんの天ぷらをスティック状にしたフリットで、意表を突く存在感が「食べてみたい」と思わせる。

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主要な客層は20代前半の女性二人連れで、金・土は前日にすべて予約で埋まる。

3つの看板メニューの中でも「天ぷら」は魚介・野菜・変わりネタとバラエティ豊富。単品が90円から400円代で、食べている途中から「次回は食べる組み合わせを変えてみよう」と思わせる。これが楽しい。客単価は3000~3500円程度となっている。

藤野氏は東南アジア料理店勤務の経験がありエスニック料理が得意で、同店でほぼ2カ月に1回エスニックメニューのトライアルを行っている。

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ミツカン酢の「ベース職人 まろやかだし酢」

今回は鶏の天ぷらをエスニック風にアレンジしたものを考えた。ベースとなる調味料としてミツカン酢の「ベース職人 まろやかだし酢」を使用。これは、焼きあごだし・かつおだし・にぼしだしに、高知県産ゆず果汁・徳島県産すだち果汁を加えたもの。鶏肉を片栗粉で粉打ちして揚げてから、この調味料を振りかけた。「味に何か足りなかったら、他の調味料を加えてみよう」と藤野氏は考えていたが、そのままでほぼ完璧なメニューが出来上がった。それが「鶏の天ぷらエスニック風みぞれあんかけ」638円(税込)である。

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「鶏の天ぷらエスニック風みぞれあんかけ」638円

藤野氏がエスニック系で新メニューのトライアルを行うのは、「二〇九」メニューの既存のイメージに、常に"新しさ"を備えていこうと考えているからだ。そこで、エスニック料理を同店の基調となる"和風"に合わせて、 "二〇九流"にアレンジしている。

ちなみに「二〇九」の店名の由来は、創業の店が「渋谷109」の裏手にオープンしたことから、その"二番手"という意味合いで「渋谷バル 209」とした。現在、渋谷ドミナントで店舗を展開しているが、店名はすべて「209」。これらを展開するAGKT株式会社では「街のエナジースポット」をポリシーとしている。「209」という遊び心に加えて、常に"新しさ"にトライアルする姿勢がお客を引き続けているのだろう。

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「呑ん処二〇九」料理長の藤野晋平氏。メニューのブラッシュアップに余念がない。


■「9割が完成された調味料」を新メニューづくりに生かし店の幅を広げる

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店名は1階が「三陸カキ小屋 THE OYSTER MANS」、2階が「三陸港町酒場 女川男」となっていて、二つの店は一体化した形になっている。

3店目は「三陸港町酒場 女川男(おながわまん)」。同店は、地下鉄東西線・門前仲町駅下車で永代通りに面した徒歩3分ほどの場所にある。向かい側には富岡八幡宮があり、周辺は常に参拝客でにぎわっている。

同店は、仙台に本拠を置く飲食企業が東日本大震災の後に、「宮城の生産者を支援する」という趣旨で2016年7月東京にオープン。「牡蠣」を看板商品として宮城や三陸の魚介類をアピールしている。牡蠣は1個190円から400円強。焼き牡蠣は10個2200円とリーズナブルだ。お値打ちメニューが揃い原価率は35%となっている。

同店の客層は地元住人、近隣のオフィスワーカー、そして"牡蠣好き"の人がグルメサイトを見てやってくる。20代から50代まで男女半々。 "三陸港町"を謳っていることから一見のお客には東北出身者が多い。同店店長の荒谷公博氏も青森出身。荒谷氏が一見客の東北なまりを聞いて話しかけると、同じ東北人として話が弾む。こうしてリピーターにつながっていく。半分が常連客、3割がリピーター、2割が一見客という。常連客はサクッと飲んで帰るが、土日に来店するファミリーはしっかりと食事する。そこで客単価は3000円となっている。

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内装は"バル風"で「牡蠣をワインと共にいただく」シーンが似合う雰囲気だ。

同店の使用食材に最近"釜揚げシラス"が加わった。そこで「釜揚げシラスと水菜のペペロンチーニ」をメニュー化。このソースのベースとしてミツカン酢の「ベース職人 鶏がらうま塩」を使用した。これは"地鶏がらだし"と"丸鶏がらだし"に、ポーク・野菜・かつおだしを加えた塩味のだしになっていて「9割方が出来上がっていて、残りの1割を料理人がアレンジする調味料」(荒谷氏)と感じたから。そこで刻んだニンニクを炒めてベース職人を加えてペペロンチーニのソースにした。

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ミツカン酢の「ベース職人 鶏がらうま塩」

さらに"浅漬け"の漬けダレや"カルパッチョ"のドレッシングにも使用。同店の浅漬けは別の調味料で行っていたが、先のパスタソースで使い勝手が良かったことからベース職人に切り替えた。カルパッチョのドレッシングは、ベース職人にオイルと酢とアンチョビを少し足してつくっている。ベース職人を使用するメニューアイテムを増やすことによって「9割方出来上がっている調味料」という持ち味を大いに活かすことができている。

そして、ベース職人を使ったフードメニューにもトライアルした。テーマは「トレンド感があること」。荒谷氏は「ベース職人を初めて舐めたときに自然と韓国料理の"チヂミ"を連想した」という。そこで、釜揚げシラス、万能ネギを使用した「釜揚げシラスとネギのチヂミ」480円(税込)をつくった。チヂミの塩味はベース職人のみ。ソースはマヨネーズとベース職人が4対1、上にラー油を少し垂らした。

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「釜揚げシラスとネギのチヂミ」480円

これらの経験から荒谷氏は「ベース職人は味が決まり過ぎていないところが特長。そこで料理人のアイデアが生かせる」と語る。同店の基調となる調味料は、オープン当初から塩、醤油で一貫していて、「ベース職人 鶏がらうま塩」を使用したメニューは全く違和感なく溶け込んでいる。荒谷氏は「ベース職人にさまざまな調味料の足し算を試みることで、いろんなメニューが考えられる」と語り、サイドメニューのブラッシュアップや新メニューを想定している。

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「三陸港町酒場 女川男」店長の荒谷公博氏。東北なまりの語り口調が東北コンセプトの店の魅力を引き立たてる。

つくろうとするメニューに対して、完成された調味料を使用することは"手抜き"とは言わない。調理担当者の本来の役割は、勘と経験に基づいてあるべき調味料をつくることではなく、料理によって"お客の笑顔"をつくることだ。ここで紹介した「ベース職人」を使用することによって調理担当者のアイデアはますます膨らんでいくことであろう。

<取材店舗>
「なぎ屋 千歳船橋店」
東京都世田谷区桜丘2-28-17
TEL:03-5426-2908

「呑ん処二〇九」
東京都渋谷区道玄坂2-9-10
TEL:03-6712-7781

「三陸港町酒場 女川男」
東京都江東区富岡1-24-6  2F
TEL:03-5646-5250

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