フードリンクレポート
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取材・執筆 : 小山裕史 2022年3月24日執筆
冷凍食品を活用したメニュー一例
メニューを作る上で、冷凍食品を便利な引出しの1つとして考えてみては。「冷凍食品はお客様に分かってしまう」、「料理人としてのこだわりがある」など、あなたはまだそんなことを言っているのですか。では、あなたは手作りで仕込んだ料理を冷凍保存していませんか。衛生面、安全面は大丈夫ですか。業務用冷凍食品は商品アイテムもさることながら、冷凍技術も各段に進化しており、お店で凍結するよりも高品質で衛生的です。今一度、冷凍食品に目を向けてみませんか。
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飲食店における冷凍食品の役割としては、仕込み・調理の時短、食材ロスの軽減、人手不足の解消、長期保存などが挙げられる。昨今はコロナ禍の影響もあり、ますます冷凍食品に注目が集まっている。都内で居酒屋を展開する中小チェーンの7割が自店で提供している料理の半数以上で冷凍食品を一部活用している。※フードリンクニュース調べ
今回、銀座・池袋・上野などで居酒屋を4業態7店舗展開している、株式会社 K's Factory(ケーズファクトリー)(本社:東京都台東区、代表取締役:永山清孝)に取材を行い、居酒屋チェーンでの冷凍食品の活用メリットやアレンジテクニック、人気メニューにおける原価率についても特別に公表してくれた。先に、ケーズファクトリーの展開ブランドを紹介する。博多もつ鍋など、こだわりの九州料理がコンセプトの『永山本店』、たこしゃぶ、塩水雲丹、国産牛リブロースステーキ等の最高級食材やSNSで人気爆発中の牛タン焼きしゃぶがウリの『紅(く)れや』、博多うどん酒場『酒と肴〆はうどん ながやま亭。』、焼売酒場の『#焼いて売ると書きますがむしろ蒸してます』の4ブランド。各ブランドのメニューを統括している総料理長の伊藤英樹氏に話を聞いた。
同グループの店舗はブランド問わず、全てのお店が年中無休で営業している。料理長や厨房スタッフの誰が休んでも、冷凍食品であれば調理したスタッフの味に偏ることなく、味の均一化が図れるのが最大の魅力だと総料理長の伊藤英樹氏は言う。
総料理長 伊藤英樹氏
「今となってはブランドごとに差はありますが、グループ各店メニューの5割以上が冷凍食品を活用した料理となっています。『紅(く)れや』については、コロナ禍でメニューの6割以上が冷凍食品を使ったメニューです。冷凍食品はアレンジの幅広さもあり、多くの料理に活用でき、コスト面でも非常に助けられています」(伊藤氏/以下同)
「『永山本店』、『紅(く)れや』の冷凍食品を活用した人気メニューを紹介します。各メニュー、冷凍食品をそのまま調理して提供するのではなく、端材部分と冷凍食品の組み合わせ、単価アップを狙う、SNS映えを意識するなどの工夫をしています」
■『永山本店』人気メニュー
・三種チーズの濃厚 餃子チーズフォンデュ
・明太ポテサラ詰めちくわの天ぷら
・明太子入り蓮根天ぷら
『三種チーズの濃厚 餃子チーズフォンデュ』(一人前1290円※税込 以下同) ※二人前からの注文
「冷凍餃子を使用していますが、単に焼餃子として提供するのではなくチーズフォンデュとして、とろ~っと伸びるチーズはSNS映えもよく、女性客は必ず注文する1品です。冷凍餃子と言っても、既に焼き目がある状態の冷凍餃子を仕入れているので、お店で焼いているような演出もできます。見た目は贅沢なメニューでありますが原価率は16%であり、利益メニューとなっています」
『明太ポテサラ詰めちくわの天ぷら』(528円)
『明太子入り蓮根天ぷら』(528円)
「冷凍の明太子チューブはとても便利です。メニューのバリエーションも広がり、お店では明太子チューブを使って4品の明太子アレンジメニューを提供しています。人気はちくわと蓮根です。原価率は蓮根の天ぷらが25%、ちくわは21%となります。ちくわの中にポテサラを詰め、カラッと揚げます。最後に、九州産の明太子チーズを贅沢にかけて提供します。冷凍の明太子チューブは居酒屋メニューには、欠かせないアイテムだと思います」
■『紅れや』人気メニュー
・蟹いくら肉巻き寿司
・たこ焼きチーズフォンデュ
・やわらかタンシチューバケット添え
『蟹いくら肉巻き寿司』(一貫638円)※二貫から注文
「蟹ほぐし身、いくらの2種が冷凍食品になります。蟹、いくらはお客様の目を引きつける商品です。蟹、いくらとも加熱調理をする必要がないので、二人前ずつ小分けにして冷凍保存しています。また、キャビアも添えているので客単価アップを狙える商品でありながら、原価率は29%となります」
『たこ焼きチーズフォンデュ』(748円)
「冷凍のたこ焼きを油で4分揚げるだけ、手間が全くかかりません。たこ焼きも餃子もきれいに焼き目がはいっているので手間も省け、なおかつ、シズル感が演出できます。『永山本店』の餃子同様に、女性客に人気のチーズ"とろっ~"を意識したメニューであり、客単価アップに貢献している商品と言えます。なお、原価率も33%と高利益商品でもあります」
『やわらかタンシチューバケット添え』(1078円)
「冷凍野菜をうまく活用しているメニューなのが、タンシチューです。野菜は全て冷凍野菜を使用しています。その時によって冷凍野菜は異なりますが、今はじゃがいも、ロマネスコ、とうもろこしの3種になります。『紅(く)れや』で注文率9割を超える人気メニューとなっている『牛たん焼しゃぶ』や「厚切り牛タン岩塩焼き』を仕込む際に出る大量の牛タン端材部分を使いシチューやカレー、メンチカツとしてメニュー化しています。タンシチューは一人前ごとのポーションで冷凍して、注文ごとに解凍しています。牛タンが高騰していることもあり、原価率は47%と高めとなっていますが、牛タンの端材部分に冷凍食品を組合わせるのがテクニックです(笑)」
「冷凍食品を使ったメニューはたくさんありますが、人気のメニューはこの5品になります。冷凍食品のなかでも使い勝手が良いのが冷凍野菜です。昔の冷凍野菜は水が出てしまい、状態はあまり良くなかったのですが、ここ数年は冷凍技術も発達しており、茹でても蒸してもフレッシュの野菜と同じ、いやそれ以上の品質です」
ケーズファクトリーでは、今後も積極的に冷凍食品を活用していくと伊藤氏は言う。ひと昔前であれば「冷凍食品は手抜き、手作りではない」と、冷凍食品の見方に偏りがあった料理人も今では少なくはなってきていると言う。
最後に、伊藤氏に冷凍食品について総括してもらった。
「もはや、冷凍食品は飲食業をやるうえでの必須アイテムとなっています。昔で言う、手作りじゃないとダメでしょみたいな料理も今は冷凍食品でもたくさんあります。全てのメニューが冷凍食品をベースにして提供できるのではないかと思います」
今回、日本冷凍食品協会をはじめ、冷凍食品メーカー、外食企業など各分野の立場から冷凍食品についての取材を行い、4回シリーズ(本記事上段の関連記事を参照)で記事化したが、改めて冷凍食品の強みを実感した。冷凍食品は長期保存、時短調理、仕込み時間の短縮だけではなく、コロナ禍での人手不足にも一端を担っている。また、SDGsでも注目されている食品ロスの軽減など、飲食店における冷凍食品の役割は数知れない。冷凍食品は手作りではない、手抜き料理だと思い込んでいる飲食店に冷凍食品が持つ本来の魅力を伝え、外食市場に一層浸透させる効果的な情報を発信するのが業界メディアの役割でもある。
最後に、飲食店における冷凍食品の活用は『技術ではなくテクニック』である。
<取材協力>
株式会社 K's Factory
〒111-0041 東京都台東区元浅草2-11-11 芹澤ビル3階 A号
代表取締役 永山 清孝
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一般社団法人 日本冷凍食品協会
〒104-0045 東京都中央区築地3-17-9 興和日東ビル4階
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