「情熱のサルサうどん！」759円

「サルサ」とは、スペイン語でソースのこと。これがメキシコにわたってメキシコ料理に欠かせない調味料となっている。日本で知られているサルサはトマトがベースとなっているが、これに酸味と辛味が加わっている。春を迎え暑い夏に向かうこれからの新メニューづくりにサルサでトライアルをした３店の事例を紹介しよう。

「ESOLA戸塚駅前店（神奈川県横浜市）」

JR戸塚駅から徒歩３分、住宅地の入口となる商店街の中にある「ESOLA戸塚駅前店」

まず訪ねたのは、JR東海道線戸塚駅から徒歩３分のところにある「ESOLA戸塚駅前店」。日曜日の14時ごろに訪ねたところ、1階約30席の店内は半分が埋まっていて、中でも20代半ばごろの男女７人グループが昼飲みをしていたのが楽しそうだった。店内には満開の桜があしらわれて春の到来を感じさせる。店長の奥田翔平氏によるとこの装飾は季節ごとに変えているのだという。まさに今どきは"満開の桜"、梅雨時には"あじさい"、初夏から真夏にかけては"ひまわり"、9月から"紅葉"、そして11月からは"クリスマスの飾りつけ"になるという。

店内の装飾で季節感を醸し出している。今は"満開の桜"

同店の一番の特徴は、100種類のワインをはじめとした酒類が飲み放題であること。土日祝日は12時からの営業（平日は16時から）で2時間1099円（税込、以下同）、最大5時間で2199円としている。ワインはコーナーにボトルが並べられて、お客がそれぞれ飲み比べを楽しんでいる。

フードメニューでまずお客を引き付けるのは「ESOLA's  Amtipast」、6種類の前菜と3種類の生ハムが木製のプレートに盛り付けられ、2名様用1869円（税込、以下同）、３名様用2749円となっている。さらに「Pizza」が全品550円というのも目を引く。基本メニューが25品目あって、さらにトッピング（110円、165円）でカスタマイズできる。他に人気メニューとして、ソーセージ、からあげ、ローストビーフを挙げてくれた。

同店がトライしたサルサを使用したメニューは、「生ハムとアボカドのカツレツ サルサソースディップ」659円と「サルサソースを使った超メキシカンpizza」550円。まず、サルサを使用することを念頭においたところ、相性のいいアボカドが連想され、４等分したフレッシュのアボカドの一つに生ハムを巻いて、小麦粉、卵、パン粉で揚げた。

「生ハムとアボカドのカツレツ サルサソースディップ」659円

pizzaは既存メニューに「激辛メキシカン」があるが、サルサを使用することでよりメリハリがはっきりとした"メキシカン"をアピールできるようにした。トッピングにはチョリソーとハラペーニョ、オニオン、パプリカを使用している。通常のpizzaの原価率は30％だが、今回のトライアルでは40％に設定している。

「サルサソースを使った超メキシカンpizza」550円

　使用したサルサはカゴメの「冷凍サルサ500G」。冷凍ならではのトマト、たまねぎ、ピーマン、ハラペーニョの風味、彩りが活かされたエスニックテイストのソースで、奥田氏が目指した「メリハリがはっきりとした"メキシカン"」に適格にマッチした。

「カゴメ 冷凍サルサ 500g」

同店のお客は20代から70代まで老若男女さまざま、特に30代40代の男性が多い。住宅地の入口の商店街にあることから、ほとんどが地元の常連客である。この２品目は「サルサフェア」を謳って目出つように壁に掲げていることから、常連客の目に止まり、新鮮味を感じて注文をいただいては好評を博している。奥田氏は、サルサのトライアルが同店の客層とってプラスの効果を生んでいると感じ取っている。

「ESOLA戸塚駅前店」店長の奥田翔平氏。同店店長就任6年目で常連客から信頼をされている

「ちゃい九炉 浜松町 芝大門店（東京都港区）」

大江戸線・大門駅から徒歩３分、JR浜松町駅からは徒歩10分程度の場所。常連客のサラリーマンから愛されている風情がある

次に訪ねたのは「ちゃい九炉 浜松町 芝大門店」。同店は芝の増上寺大門近く飲食店街の路地裏にある。近隣のサラリーマン常連客が仕事帰りに立ち寄る店という雰囲気が漂っている。

「ちゃい九炉」の店名の由来は「チャイルド・クロック」、つまり「子供時間」ということで、子供の頃のような夢や希望といった想いを託しているという。ハイボール、生ビール、サワーにはじゃんけんゲームがあり、これらを注文したお客が従業員とじゃんけんをして、お客が勝つとビールは半額、ハイボールやサワーは大ジョッキに変更される（お客が負けると通常の大きさで正価）。

店舗は１階と2階の２フロア。2階がテーブル席でメインの客席となる

看板メニューは「串カツ」。この他に「枝豆つかみ取り」555円（税別、以下同）とか、たこの形をしたウインナーを大量に盛り付けた「大漁たこさんウインナー」777円といった遊び心のあるメニューもラインアップしている。駄菓子の「うまい棒」を砕いて卵で溶いて生地をつくりキャベツと豚肉を入れてお好み焼きのようにした「豚玉うまいぞー」598円は大抵の常連客が注文する。客層は30代から40代の男性サラリーマンが７割、8割を占めて客単価は2500円あたり。

同店では春に向けての新メニューを検討していて、サルサを使用したものを２品取り入れた。サルサはカゴメの「サルサ（ピリ辛）925ｇ」を使用した。トマト、たまねぎ、ピーマン、ハラペーニョなどの固形野菜がたっぷりと入ったしっかりとした食感のスパイシーソースが特長だ。

「カゴメ　サルサ（ピリ辛）925ｇ」

一つは、常連客から親しまれているうまい棒をサルサディップにしていただく「サルサソースで食べるうまいぞー」319円（税込、以下同）。うまい棒は縦に半分にカットし溝の部分にポテトサラダを入れた。カリッとしたうまい棒としっとりしたポテトサラダの食感が、酸味のあるサルサによって引き立つ。これをラインアップしてから、常連客には新感覚のおつまみとして親しまれるようになった。

「サルサソースで食べるうまいぞー」319円

もう一つは「情熱のサルサうどん！」759円。茹でおきの市販のうどんを熱い湯に通し、その後流水でさましてからサルサソースを敷いた皿に入れる。その上にうどんに絡むようにちぎったサニーレタスをのせて、炒めたひき肉と玉ねぎのみじん切りをサルサソースに和えたものをトッピングし、仕上げに「マヨビーム」をかけて"映える"ようにしている。ポイントはサルサソースのトッピングを立体的にすること。酸味の利いたボロネーゼといった趣がある。夏場に向けて人気がでてくることであろう。

「情熱のサルサうどん！」759円

また、この度サルサソースに取り組んだことから、ランチのテイクアウトメニューに、タコライスやジャンバラヤをメニュー化するなどバラエティが広がった。これからは看板メニューである串カツのディップに加えることも検討している。

料理長の川野晃義氏は「サルサソースは万能」と語り、同店の新メニューづくりに意欲を見せている。

右：「ちゃい九炉」立ち上げメンバーの辻登志彦氏（ビーシージー執行役員商品最高責任者）

左：「ちゃい九炉 浜松町 芝大門店」店長の川野晃義氏

「港町バル（東京都目黒区）」

小さな飲食店が立ち並ぶ中目黒高架下に同店がある。11時30分から翌5時まで営業し、一日にピークの山が４回ある

サルサでトライアルした店の3つ目は「港町バル」。東京・中目黒の高架下にある。中目黒は近年著しく"外食のワンダーランド"の様相を呈していて、特に高架下では飲食店街としての開発が進み、これらのホッピングが楽しい。そんな賑わいの中にある一店だ。

同店は、かつて仙台で飲食店を展開していた会社が東京に進出し、東日本大震災をきっかけに「宮城の生産者と東京をつなぐ」ことをコンセプトとしてオープン。近年はメニューに「南三陸の金華サバ」「下関のフグ」、そして黒毛和牛も加わり、強いコンテンツがそろうバルとなった。

メニューのこだわりを一品一品イラストで表現して、店頭と店内で表示している

まず、"ディップ派"として「南三陸 金華鯖ツナのサルサディップ」890円（税込、以下同）。この金華サバのツナは水煮の缶詰を使用。水を切ってニンニクと玉ねぎを炒め、ブイヨンを加えて、それにサルサソースを和える。薄切りでカリカリにしたバケットと一緒にいただくという趣向。冷えたドライ系の白ワインが合う。

「南三陸 金華鯖ツナのサルサディップ」850円

次に、"ソース派"として「宮城県石巻産ブランド牡蠣【新昌】のサルサソース焼き」1p600円。マイナス50度で保管している殻付きの牡蠣を冷蔵庫で自然解凍し、殻ごと焼き上げて、焼きあがる手前でオーブンから取り出し、サルサソースをかけてもう一度焼き上げる。サルサソースをかけた状態で焼くとなかなか焼き上がらないことからこの調理法にした。こちらはスパークリングワインやハイボール等の泡系が合う。

「宮城県石巻産ブランド牡蠣【新昌】のサルサソース焼き」1p 600円

「港町バル」店長の松岡暁氏。お客への細やかな気配りがうかがわれる

メキシコ料理専門店でない限り「サルサ」を使用する機会はほとんどない。しかし「サルサ」の"酸味と辛味"は印象深い味覚で、常連客の多い店でこのソースを新メニューに使用すると、常連客に新しい"発見"をもたらす。いつものメニューに「何か、もうちょっとほしい」という常連客の潜在的な欲求を満たすことであろう。

＜取材協力＞

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