新橋の裏路地にあるO'tacos。原色使いの鮮やかな店構えは遠くからでもよく目立つ。

　運営するのはサニーカラー・ジャパン有限会社（東京都港区。代表取締役　川上"カルロス"義貴氏）。輸出入業やイベント・プロモーション、飲食業を手がける会社である。2012年には、同じ新橋にテキーラバー「SIDE B BAR(サイドビーバー)をオープン、2013年にはテキーラについて幅広い情報を発信するWebサイト「テキーラムーチョ」も立ち上げ、テキーラの通信販売も行っている。

　「本格的なメキシカンタコスに出会ったのは、もう30年近く前のことです。メキシコの屋台で食べたのですが、そのタコスに衝撃を受けたんです。コーンの香りが広がるトルティーヤと新鮮なサルサの辛さや酸味、肉の旨味が絶妙にマッチしていて、もうノックアウトでしたね(笑)。メキシコのソウルフードという感じで、屋台の雰囲気にも感動しました。いつか日本でこの味を再現したいと思い続け、今回念願叶っての出店となりました。本場の味の再現はなかなか難しかったのですが、この店では限りなく本場メキシコの味を再現できていると思います。店の雰囲気もメキシコの屋台をイメージしたんですよ」O'tacos　オーナー　川上"カルロス"義貴氏）

川上"カルロス"義貴氏

　日本でタコスと聞いて思い浮かぶのは、箱入りで売られている固いシェル状に揚げたトルティーヤではないだろうか。しかし本場メキシコでは焼いた、柔らかいトルティーヤが主流、それも専用のコーン粉100％で作られたものが伝統だという。"マサ"と呼ばれるこの粉は、メキシコ産ホワイトコーンを石灰水処理して作られるもので、日本ではなかなか手に入らない。そのため日本の店では、小麦粉100％もしくはコーングリッツやコーンフラワーに小麦粉をブレンドしたフラワートルティーヤを提供しているところが多い。

ワンハンドで食べられる手軽なタコスはフレッシュな野菜がたっぷりのヘルシーな食べ物だ。

　「タコスの味はトルティーヤで決まるといっても過言ではありません。やはりマサで作るトルティーヤは他とは一線を画します。出店にあたっては、まずこの粉をどこから仕入れるかで苦労しました。扱っている業者が少ないため、なかなかたどり着けなくて。マサが手に入ってからはプレスの仕方や焼き方など、作り方に試行錯誤。さまざまな方にご意見をいただいて本場の味に近づけていきました。プレオープンの期間中、メキシコ大使館の方々にもご来店いただいたのですが、"メキシコの味だ！"とみなさんおっしゃってくださったんですよ。嬉しかったですね（笑）」（サニーカラー・ジャパン有限会社　ディレクター　服部　誠氏）

　同店では、トルティーヤは一枚一枚店内で焼き上げている。

　「コーンの風味は時間が経つにつれて失われていきますので。メキシコの高級レストランでは、できたてのハンドメイドトルティーヤを提供することが最も贅沢とされているんですよ。マサ100％のコーントルティーヤのほか、フラワートルティーヤも2種類（柔らかい食感のものと、かりっとした食感が楽しめるクリスピータイプ）用意しているので、ぜひ食べ比べてみてください」（服部氏）

　注文はまずトルティーヤを3種類の中から選び、具材やトッピングをチョイスしていくスタイル。タコスは１つ400円だ。

　メインの具材はPASTOR（豚肉）、BISTEK（牛肉）、POLLO(鶏肉)、CAMARON（海老）、CHORIZO（ソーセージ）、ALAMBLE（野菜ミックス）の6種類。PASTOR(パストール)とは、スパイスなどで漬け込んだ豚肉を縦回転式ロースター（TROMPO）で炙り、削り出したもののこと。ケバブに似ているが、豚肉は焼き方が難しく、理想の味に仕上がるまでには時間がかかったという。使用する豚肉は「メキシコ最高品質認証」（メキシコ政府が最高の品質と安全性を保証したもの）のメキシカンポーク。旨味が凝縮されたジューシーでスパイシーな味わいと、ほどよく焦げた香ばしい香りが絶品で、同店のイチオシメニューとなっている。

国内独占輸入販売の大容量プレミアムテキーラ「ドンティンボン」。おもちゃのように可愛らしいパッケージとは裏腹に、まろやかで深い味わいが楽しめる高品質テキーラだ。

メキシコの伝統製法で作られるメスカルの「シエテミステリオス」も独占販売。なかなか手に入らない逸品で、テキーラよりもシャープな味わい。ハイセンスなボトルデザインも人気のお酒だ。

　もうひとつの目玉は、メキシコ伝統のチョコレートドリンク「チョコラテ・オアハケーニョ」の提供だ。シナモンやアーモンドなどで香りがつけられたスパイシーさが特徴で、一般的なチョコラテとは異なる味わいだが、これが癖になる味なのだ。

　「メキシコはカカオの原産地で、チョコレート発祥の地でもあります。カカオ本来の素朴な味を楽しんでください。このチョコラテをテキーラやメスカルで割ったお酒も美味しいですよ。ほか、オリジナルドリンクとしては、テキーラをホッピーで割ったテキーラホッピーも人気です。爽やかでタコスによく合うんですよ」（服部氏）

「チョコラテ・オアハケーニョ」は、チョコボールを溶かして作るドリンク。古代メキシコではアステカの皇帝も飲んでいたとか。

店内にはメキシコらしい雑貨で飾られている。

　将来的には、飲食業だけにとどまらず、店で提供している食材やドリンクやメキシコの雑貨などの販売も行っていく予定だという。

　「日本でも珍しいタコスバルとして、広くみなさんに知っていただくとともに、メキシコのアートやストリートカルチャーの情報発信基地としても機能させていきたいと考えています。日本とメキシコは非常によい友好関係を築いている国で、これからますますその絆は深まっていくでしょう。在日メキシコ人やメキシコ大使館の方々、メキシコ料理などに携わる方など、いろいろな方から温かな応援をいただいていることが、それを物語っています。みんなで力を合わせて日本にメキシコの文化を広めていきたいですね。ゆくゆくは日本発のタコスバルとして海外展開も視野に入れながら、オリジナルのメニューやサービスを考えていきたいと思っています」（服部氏）

　新橋の裏路地に誕生した小さな店には、そこに収まりきらない熱いソウルが凝縮されていた。この店のタコスは、エネルギーが詰まったメキシコの太陽の味がする。食べれば元気になれること間違いなしだ。

住所：東京都港区新橋3-14-1　KAZUMI BLD.１F

TEL：03‐5425-1905

営業時間：18：00～24：00

定休日：日

  ＊営業時間と定休日は今後変更の可能性あり