3月23日（火）、キリンビールから発売された『SPRING VALLEY 豊潤（496）』が、一部のスーパーでは既に品薄状態になっている。クラフトビールニーズがひと段落と言ったビール市場に、再度、クラフトビールが存在感を放つことができるのか。

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　キリンビールは、2011年からクラフトビール事業の構想を開始し、2014年から本格始動。2015年にはクラフトブルワリーとなる、「スプリングバレーブルワリー」を東京・代官山と横浜に開業した。スプリングバレーの名前が浸透したのも、ブルワリー、タップ・マルシェ設置店舗からの発信である。「SPRING VALLEY 豊潤（496）」は、既存アイテムの「SPRING VALLEY　オリジナル（496）」をベースに誕生した商品であり、コンセプトや味のバランスは現行のままであるが、複数のホップの旨味と苦味のバランスが万人ウケする味に仕上がっている。お世辞抜きで、高級感あるバランスがとれたビールだと思う。

　発売から１週間、テレビＣＭも積極的に流しているが、正直、記憶に残るCMではなく、他社のビールCMとさほど変わらない。実際に売れているのか、スーパーやディスカウントストアを数軒回ってみた。

　ディスカウントストアでは、棚に並んではいるものの、"新発売"など目につくPOPの掲示はなく、他のビールと同化している。しかし、他のビールに比べて並んでいる本数が少ない。お店のスタッフに在庫状況を聞くと、「ここに並んでいるだけです。発売当初、ケースで買われるお客さんが多く、ケースの在庫は切れて、ここにあるバラで並んでいるだけです。キリンビールも新商品であり、クラフトビールなので、売上の動向をつかむまで、まずは手探りで出荷しています。豊潤は、コアなビールファンから人気です。次回の入荷については把握していません」との回答があり、ビールファンからは水面下で話題になっているのではと伺えた。

　別の電鉄系スーパーに行くと、やはりケース売りはなく、バラ売りのみであった。350ml、500mlと並んでいるが、数は少ない。スタッフに在庫を聞くと、同じような質問を他のお客からもされているようで、慣れた口調で回答された。驚いたのは、自社のスーパーには在庫はないが、近隣のスーパーには十分な数があると教えてくれた。

　紹介されたスーパーに行くと、発売当初であり、しっかりとディスプレイされており、数も豊富に並んでいた。

　スタッフに、「SPRING VALLEY 豊潤（496）」について聞くと、面白い回答が返ってきた。「プレモルよりも値段は高いですが、味はまったく違います。プレモルが輸入牛だったら、このビールは松坂牛です（笑）。クラフトビールは、大量生産できないビールであり、数に限りがあります。発売当初から売れていますよ。発売当初にこれだけ売れるビールは久々です」

　既に、スーパーやディスカウントストアなどのスタッフの評価も高く、ケース売りをしているスーパーは少なかった。発売から１週間で、在庫薄のスーパーがいくつもあるのは、クラフトビールファンからの注目度が高いのか、それとも、スプリングバレーファンなのかは不明であるが、売れていることは間違いない。

　酒類に詳しく、忖度なしに感想を聞ける業務用酒販店のセールスに話を聞いた。

　「豊潤、めちゃくちゃ美味いですよ。サンプルで１ケース貰いましたが、毎日、家で飲んでいます。クラフトビールって、作り手の主張が強く、味の個性も強すぎて、好き嫌いが分かれます。単なるビール好きは敬遠しがちですが、豊潤は万人ウケするビールであり、そこまで味がとがっていません。個性が際立ちすぎるビールは売れないですよ（笑）。豊潤は、クラフトビールの位置づけですが、プレミアムビールだと感じます。豊潤、売れると思いますよ」

　酒販店セールスの回答は、まさにその通りである。確かに、クラフトビールは玄人には好まれるが、万人のビールファンには尖りすぎている味である。豊潤は琥珀色であり高級感、贅沢感があり、苦味や香りが想定内に収まっていると思う。

　今月には、アサヒビールからビールの泡が楽しめる「スーパードライ生ジョッキ缶」が発売され、恐らく、注目を浴びると思われる。益々、競争が激化する家庭用ビール市場で、「SPRING VALLEY 豊潤（496）」は、どのように差別化を図り戦っていくのか楽しみである。