フードリンクレポート
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昨今、飲食店で誕生、定着した商品が量販店を通じて家庭でも楽しむことができる。今回は、家庭用として誕生した商品ではあるが、業務用でも圧倒的な存在感を放ち、居酒屋でも再認知され量販の販売増に繋がった「男梅サワー」に注目した。
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「男梅サワー」は、ノーベル製菓が販売するキャンディー「男梅」とのコラボレーション商品で、2013年4月数量限定で発売後、販売が好調で同年9月に通年商品として復活発売をした。復活発売と併せ、同月には業務用商品として「男梅シロップ」を発売した。
業務用では梅サワーや梅干サワーはグランドメニューとして定着していたが、梅サワーは、メーカーのコンクリキュールを使用、梅干サワーであれば甲類焼酎に梅干を落とす程度の提供でしかなく、梅サワーのアイテムでは飛びぬけた商品は存在していなかった。量販市場でも、RTD缶はハイボールが主流であり、梅サワーに対する消費者の関心は低くかったと思われる。
「男梅サワー」が家庭でヒットした要因はノーベル製菓の「男梅キャンディー」の認知度もあり、コラボした梅サワーであれば本格的な梅エキスが入っているサワーであることが、消費者の購買意欲を高めたと思われる。業務用市場でも居酒屋のドリンクメニューカテゴリで、手付かずのカテゴリであった梅系サワー(梅酒は除く)の分野を独占したことは大きかった。
しかし、これだけがヒットの要因ではないと思う。商品のネーミングにヒットの要因が隠されているのではないか。例えば、スーパーやコンビニでハイボールやレモンサワーのRTDが売られており、各社のRTDのネーミングを見ると、「〇〇ハイボール」や「○○のレモンサワー」と、商品名で他社との差別化を図ってはいるが、消費者からはハイボールやレモンサワーとひとくくりにされてしまっている気がする。
「男梅サワー」のネーミングは、ノーベル製菓の「男梅」の認知度が手助けしていることもあるが、「男梅サワー」と独り立ちした確固たるネーミングが消費者に浸透したのではないか。居酒屋のメニューに「梅サワー」や「サワー(梅)」などの表記ではく、「男梅サワー」の表記を徹底したことで、居酒屋で飲用した消費者が「男梅サワー」の商品を認知しなくてもネーミングが頭に残り、スーパーで購買する仕組みができていると思われる。
ある居酒屋で、「男梅サワー」を注文、スタッフに梅サワーと男梅サワーの違いについて聞くと、男梅シロップを持参して、キャンディーとのコラボ商品であると説明された。また、スーパーなどにも男梅の缶が売っているとも伝えてくれた。サッポロビールは居酒屋を媒体として、「男梅サワー」の量販市場へ導いている。
多摩地区のスーパー5店舗で「男梅サワー」の陳列されている場を見ると、5店舗ともハイボールやレモンサワーと並んで陳列されている。この陳列が逆に目立っている。多くのスーパーではRTDはレモンサワーや果実系サワー、ハイボールとカテゴリ別に並んでいる。例えばレモンサワーであれば、多数の商品が混合しているので、ヘビーユーザーでなければ迷ってしまう。「男梅サワー」は、レモンサワーと並んで陳列されていても、梅のサワーと別物のサワーであることが直ぐに分かり、また、缶のパッケージに記載されている「男梅」の文字が目立っており、居酒屋で飲用した消費者も直ぐに思い出すのではないか。「男梅サワー」は、業務用、家庭用のクロスマーケティングが成功した商品であると言える。
リサーチした5店舗のスーパーで梅系のサワーのお勧めを聞くと。5店舗とも「男梅サワー」を手に持ってきた。担当者も居酒屋での認知度があるので、RTDのなかでは人気の商品であると言う。
インパクトがあり、差別化に繋がるネーミングであれば、居酒屋のメニューでもしっかりと表記してくれるはずである。居酒屋で飲用から家庭での飲用に繋がっていることは間違いない。
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