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2015年1月14日(水)16:10 トレンド

食事とアルコールを楽しむ食文化は廃れない。いかに時流に合わせた提案ができるか。

2015年、居酒屋復活!第3回

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取材・執筆 : さとう木誉 2015年1月14日

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 株式会社ダイヤモンドダイニングは、2011年に「100店舗100業態」を達成し、その後は高収益ブランドへの集約など大胆なスクラップ&ビルドを敢行していた。新体制の整った2014年は、新たな攻勢を仕掛ける年と位置づけて新規出店を加速。新店だけでなく既存店も好調を維持して、売上げも期初計画を上回る見込みだ。好調の背景には、居酒屋復活に不可欠な戦略が随所に仕込まれている。執行役員で管理本部長とIR部長を兼務する須藤大輔氏に、聞いた。

2015年、居酒屋復活!第1回

2015年、居酒屋の復活。第2回

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客単価4000円〜の業態が好調。
  
 実のところ2014年は「増収減益」で計画していた。というのも、増税の影響がどの程度出るのか予測がつかなかったというのもありますが、戦略として新規出店を増やす「投資の年」と位置づけていたことが大きな理由です。

 ところが蓋を開けてみれば、新店だけでなく既存店も昨対2%を超える好成績。第一四半期と第二四半期の2回も上方修正をリリースしたほどで、期末には「増収増益」に転じる計算だ。そのうえ新規出店数も期初に計画していた21店から、M&Aを含めて35店に増える見込みだ。

 好調を支える外的な要因としては、法人需要がかなり上昇した感覚がある。弊社は東京都心部に店舗が集中しているが、アベノミクス効果はそれなりにあったのだと思う。

 内的な要因としては、主力業態として集約した高収益ブランドが、今のお客様のニーズをがっちり掴んだことだ。九州業態の「熱中屋」とベルギービール業態の「グラスダンス」の客単価が4000円弱、高知業態の「わらやき屋」が同4000円強、高級焼鳥の「今井屋」が同6000円強だが、この客単価4000〜6000円のラインが、もっともバリューを打ち出しやすく、かつお客様が出しやすい金額なのだ。

 わかりやすい例が「熱中屋」だ。居抜きの低投資出店をコンセプトにしているため「箱」では差別化ができない。差別化の武器になるのは料理だ。チェーンの居酒屋で、活のサバやアナゴ、イカを客単価4000円弱で提供している店があるかというと、そうはない。それがコストパフォーマンスが高いとお客様に支持されている。

 同社は全ブランドにおいてセントラルキッチンを持たず、PB品も使わず、店内で手作りの味を提供している。コストパフォーマンスに対するお客様の目がどんどん厳しくなってきている。良いものには金を出すが、粗悪なものにはどんなに安くても手は出さない。これは外食に限ったことではなく、小売りでも同じだ。セントラルキッチンやPBの料理を提供していては、コンビニエンスストアをはじめとする中食・内食との差別化が難しい。家で食べられるもの以上のクオリティを提供しなければ外食していただく意味がない。

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ブランドポートフォリオで時流の変化に対応。
  
 居酒屋は確かに下降トレンドの業界ではある。だが、そこに根づいている「食事とアルコールを一緒に楽しむ」という日本独特の食文化そのものがなくなるとは考えられない。なぜ居酒屋業界が下降線をたどっているかと考えたとき、いま述べたようにセントラルキッチン化を進めたことで、中食・内食と差別化できなくなったことが1つ。そしてもう1つが、単一チェーンによる全国展開を優先してきたことで、マーケットの変化に対応できる「ブランドポートフォリオ」を構築してこなかったことにあるのではないだろうか。
 
 同社は全店舗の72%にあたる161店が山手線内にあるという特異なドミナント展開をしている。100店舗100業態達成後にブランドを集約していってもカニバリをおこさずにいられるのも、特徴の異なる複数ブランドを持つブランドポートフォリオが武器になっているからだ。例えば、1次会をわらやき屋で飲食して、2次会はバグースでダーツなどを楽しむなどお客様に「回遊」していただくことができるといった具合だ。

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予約の利便性向上で機会損失を回避。
 
 マルチブランド戦略の効果を最大化させているのが、1年前からスタートした会員システム「DDマイル」や予約コールセンター「宴会コンシェルジュ」といった後方支援による顧客の囲い込みだ。これによって、利用動機ごとにお客様の回遊を促したり、機会損失の回避が実現している。
 
DDマイルが、一般的な会員システムと異なるのは、余計な入会手続き不要で電話かネットで予約して来店するだけでポイント加算がスタートする点だ。2012年12月からスタートして丸2年経つが、すでに会員数は12万人を数えるが、弊社ブランドの平均組客数は5人強なので、60万人の潜在顧客を持っている計算になる。現時点で、じつに予約売上げの10%、総売上の3〜4%がDDマイル会員の利用で占めている。

 宴会コンシェルジュは朝8時から電話予約が可能で、もし目的の店が満席だった場合でも近隣の系列店を案内するので、幹事様にとっては店選びの面倒が省ける。また、お客様が店に直接電話した際、何らかの理由で出られないケースでも、自動的にコールセンターに転送されて対応する。お客様の予約時のストレスを最小化しつつ、我々にとっても機会損失を回避できるというわけだ。

 またスマートフォン向けに「即飲み」アプリを2013年11月にリリースした。これは2次会3次会の店を探す際に、複数の系列店を選択して一斉に電話ができ、受け入れ可能な店にだけつながる仕組みだ。幹事様な急な店探しで何件もの店に電話をする煩わしさから開放される。加えてパソコンなどから24時間365日いつでも予約が可能なオンライン予約システムも独自に開発している。コールセンターの利用だけで売上げ全体の6%を超える効果が出ている。これらのツールの使い勝手を実感してくれたお客様はリピート来店につながって、売上げの安定化に大きく貢献している。時流の変化に対応した施策を打ち、楽しさと便利さを提供し続けていれば、居酒屋も成長できる。それを我々が示していき、居酒屋復活を牽引していきたい。

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