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フードリンクレポート

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2015年4月17日(金)13:03

クラフト麦酒ビストロ「クラフトマン」は多彩なメニューを用意して自由なフードペアリングを提案。

クラフトビールのマリアージュを語る日は来るか?(3-2)

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取材・執筆 : 中山秀明 2015年4月17日

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 昨年秋、フードリンクニュースでは3回に渡ってさまざまなクラフトビールの飲食店を紹介するとともにブームの最先端をレポートしたが、その勢いはとどまることを知らず今年も外食トレンドの一翼を担っている。大きなトピックとしては大手のキリンビールが今春ついに直営レストラン「スプリングバレーブルワリー」をオープンさせたり、海外でも有名な国産クラフトビール・常陸野ネストのビアバー「常陸野ブルーイング・ラボ」が誕生したりといったことが挙げられるように、この潮流はまだまだ続くであろう。人気の理由のひとつが、世界的なコンペで優勝するほど国産クラフトビールの味が向上したことだが、一方で食中酒としてのクラフトビールはまだ一般的に受け入れられておらず、主には嗜好品として楽しまれているように思われる。しかしワインや焼酎と同じように、食事に合うポテンシャルは十分にあると確信してやまない。そこで今回は数あるクラフトビアレストランの中でも、特に料理にも力を入れている店舗に取材を申し入れ、ビールと料理のペアリングについて語ってもらった。全3回のレポートでお届けしよう。

クラフトビールのマリアージュを語る日は来るか?(3-1)

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五反田にある「クラフトマン」のカウンター。31種のタップや、名物のシャルキュトリーが入ったショーケースなどが目に入る。料理に力を入れているため厨房には4人ものコックがスタンバイしているとか。

 前回は赤坂と神田に店舗がある、ワンダーテーブル運営の「よなよなビアキッチン」を紹介。ヤッホーブルーイングの個性的なビールに合わせ、インパクトのある味わいのフードペアリングを解説したが、第2回は東京・五反田に1号店があり、昨年末に2号店となる仙台店がオープンした「クラフトマン」をレポートしたい。プロダクトオブタイムグループ(東京・品川区 代表:干 倫義氏)が運営する同店。五反田店の特徴といえば、店名に冠する"クラフト麦酒ビストロ"。豊富にそろう31種類の樽生ビールと、旬の食材や産地直送の素材から生み出されるビストロ料理の数々である。

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毎日更新されるクラフトビールはスモールが500円(税抜き)、ラージが800円(税抜き)。均一で分かりやすい料金体系なのも魅力だ。

 あえて和のテイストを少し入れている理由は、扱うビールのほとんどが国産であるから。クラフトビールは、大手が提供するピルスナースタイルに比べるとキレやノド越しよりもコクや濃厚さ、フルーティーな香りなどを強調したものが中心だが、そうであってもどこか優しかったり繊細であったりと、ものづくり精神の宿った上品な味わいのものが多い。そんな日本ならではのビールとのペアリングを楽しめるのが「クラフトマン」の魅力なのである。

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契約農家の新鮮野菜が美味な「本日の野菜のグリル」(540円~)。レンコンやシメジなど、日本らしい種類も。

 また、2月に紹介した「クラフトマン仙台」は、また違った方向性で国産クラフトビールとのペアリングをアプローチしている。そのコンセプトは"イートローカル"。東京よりも自然の恵みが豊富な東北の山海の幸をふんだんに使う地産地消の店だ。料理ジャンルも、より郷土の特色を重んじて食材の特徴を活かすイタリアンを主体にしている。

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クラフトビール×イート東北×ハイカジュアルイタリアンがテーマの「クラフトマン仙台」ではピッツァも人気。写真は「トマトとモッツァレラとバジリコ」(780円)。

 冒頭で述べたように、味が向上するとともにブームの影響で消費者の認知や趣向も深まるなど、ここ数年でクラフトビールを取り巻く環境は大きく前進した。また東日本大震災以降、自国の素晴らしさに一層目を向け、盛り上げていこうという潮流が強まったのも周知の通り。プロダクトオブタイムグループでは、もともとベルギービールを主体とした「WINE&Belgian Beer Hemel ミヤマス」と「BISTRO&BELGIAN BEER In De Bourgondische Hemel」を展開してきたが、そんな背景を受けながら新しいテーマで立ち上げたビアビストロが「クラフトマン」なのである。

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「Hemel」の名物といえば、本場フランスでシャルキュティエとしての修業経験を持つシェフによるシャルキュトリーだが、「クラフトマン」でもその美味なる一皿を堪能できる。写真はそれらをアミューズとともに楽しめる「前菜の盛り合わせ」で1814円。

 とはいえ、「クラフトマン」では積極的に個々の料理とビールのペアリングを提案することは控えている。確かに、どの料理も提供するビールとの相性を考慮し尽くして生み出したものであることには違いない。そして、もちろんお薦めや相性を聞かれれば、それに答えるだけの知識を備えたスタッフが案内してくれるし、味の方向性を分布図で記したりスタイルの特徴を解説したりといった楽しみ方の手引きも用意されている。

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「クラフトマン仙台」は昼から営業。ランチでもビールを楽しめ、ドリンクセット+100円で150mlのふた口ビールを飲めるというサービスもある。またカフェタイムではイタリアンパンケーキやラテトーストといったフードが提供され、本格エスプレッソのメニューも。

 では、積極的にペアリングを提案しないのはなぜか。同社の常務取締役・胡桃澤 忍氏は語る。「『クラフトマン』には31種ものビールがそろっていますが、ビアバーではなくあくまでもビストロ。ゆっくりと食事を召し上がっていただける、シェフ渾身のフードがビールに負けないくらい多彩にそろっています。確かにシェフやスタッフが個人的に好きなペアリングはあるかもしれませんが、幅広い組み合わせの中からお客様ご自身の好みで自由なペアリングを楽しんでいただきたい。メニューが豊富だったり、単に料理の味を濃厚にしないのにはそんな想いもあります」

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「クラフトマン仙台」のカウンター。同店のコンセプトのひとつである"EAT LOCAL"が大胆にデザインされている。

 とはいえ、店では毎月スタッフを集めてビールと料理のテイスティングを兼ねたテストや、ビールの特徴と背景の勉強会を行い、知識の向上に努めている。そこでは新しい発見も生まれるが、一方でペアリングは奥が深いことも実感するという。考えてみれば、好みには個人差があるため、正解のペアリングというのも千差万別といえよう。

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胡桃澤常務はこうも付け加える。「赤・白・ロゼで大きな3つの方向性があるワインと比べ、ビールは色だけでなくスタイルなども多種多様。分類が難しいだけあって自由度も非常に高いんです。食中酒としてはもちろんペアリングの楽しみ方など、計り知れない可能性を秘めたお酒といえるでしょう。ブームとはいえ、今はまだはじまったばかりなのでクラフトビールはビール全体の1%程度の消費量ですが、この可能性をもっと広げてシェアを拡大していきたいですね」

 仙台に続く地方都市への出店も目標に掲げる「クラフトマン」。一方で都内にも目を向けており、その際はより大きな規模で開放感のある店舗をオープンさせたいと意欲的だが、この勢いが次なるフォロワーを生むことも大いに期待できる。今後クラフトビールがより身近な存在になるなかで、日本中にビールと料理の相乗効果を楽しませてくれる新世代レストランのムーブメントが広まっていくことを楽しみにしたい。

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