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フードリンクレポート

2015年4月10日(金)13:59 トレンド

「よなよなビアキッチン」は個性派ビールと好相性の料理開発に注力。ビアバーながらフードオーダー率の高いビジネスモデルを確立。

クラフトビールのマリアージュを語る日は来るか?(3-1)

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取材・執筆 : 中山秀明 2015年4月10日

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 昨年秋、フードリンクニュースでは3回に渡ってさまざまなクラフトビールの飲食店を紹介するとともにブームの最先端をレポートしたが、その勢いはとどまることを知らず今年も外食トレンドの一翼を担っている。大きなトピックとしては大手のキリンビールが今春ついに直営レストラン「スプリングバレーブルワリー」をオープンさせたり、海外でも有名な国産クラフトビール・常陸野ネストのビアバー「常陸野ブルーイング・ラボ」が誕生したりといったことが挙げられるように、この潮流はまだまだ続くであろう。人気の理由のひとつが、世界的なコンペで優勝するほど国産クラフトビールの味が向上したことだが、一方で食中酒としてのクラフトビールはまだ一般的に受け入れられておらず、主には嗜好品として楽しまれているように思われる。しかしワインや焼酎と同じように、食事に合うポテンシャルは十分にあると確信してやまない。そこで今回は数あるクラフトビアレストランの中でも、特に料理にも力を入れている店舗に取材を申し入れ、ビールと料理のペアリングについて語ってもらった。全3回のレポートでお届けしよう。

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木目のナチュラルな風合いに、武骨なスチール家具などを合わせたモダンアメリカンテイストな空間。「個性」がコンセプトのひとつである「よなよなエール」の世界観を見事に表現している。

 第1回目に紹介するのは、赤坂に続く2号店として先日3月24日にオープンしたばかりの「よなよなビアキッチン 神田店」だ。ここは国内クラフトビール市場で最大の売り上げを誇るヤッホーブルーイング社のアンテナショップとしての役割を果たす一軒であるが直営ではなく、「ローストチキンハウス」や「バルバッコア」などを手掛ける株式会社ワンダーテーブル(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:秋元 巳智雄氏)が運営を担っている。ヤッホーブルーイングは国内有数のホテル企業である星野リゾートのグループであるが、単独のレストラン業態は持っていない。和洋さまざまなジャンルの飲食店を持つワンダーテーブルに店舗プロデュースや運営を任せるというのは、理にかなった戦略といえよう。

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同店の名物「ローストチキン」。1/4が1058円、1/2が1944円で、丸ごと1羽は3780円だ。味はオリジナルスパイスと、スパイシーの2種から選べる。

 「よなよなビアキッチン」の看板メニューは、先述の「ローストチキンハウス」譲りの豪快なチキンであるが、神田ではソーセージにも力を入れ、二枚看板として打ち出している。それは、1号店の赤坂がキャパ110名の大バコで団体でも利用しやすい設計になっているのに対し、神田は1~2名の少人数でも気軽に楽しめるような使い方をしてほしいからだという。そこで神田店ではソーセージとビールとのペアリングをおすすめしたり、専用のディップソースを新たに開発してソーセージの新しい味わい方を提案している。

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肉はワンダーテーブルが長年愛用している千葉県産の「かぶらぎ豚」というブランドポークによるもの。赤坂店のソーセージは100gという大サイズの3種類(すべて1本702円)のみだが、神田店では約2年かけて新たに開発した60gのソーセージ9種(1本410~756円)も味わえる。

 味付けに関しても、当然ながらビールとのペアリングを考慮したレシピになっている。とはいえ、そのビールというのは一般的な飲食店にある大手のラガー(下面発酵)・ピルスナースタイルではない。クラフトビールというのは、その多くがキレやノド越しよりも味わいそのものを際立たせた濃厚なタイプが多く、中でもヤッホーブルーイングの商品はすべてがエール(上面発酵)ビールでどれも個性的だ。それに負けないインパクトのある料理と味付けでラインナップされたのが、同店のフードの数々なのである。

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ソーセージのメニューリストには、各商品に合うビールが紹介されている。また、ビールのリストにはスタイルやIBU(国際苦味単位)といった味の特徴が詳細に書かれていて読むだけでも面白い。

 料理はローストチキンとソーセージ以外にもピンチョスや温菜、野菜料理、ご飯もの、デザートと約30種を用意し、そのどれもがしっかりと作られた美食ばかり。そんな努力もあり、同店はビアバーでありながら約45%という高いフードオーダー率を保っている。そしてさらには、ちょい飲みにも使えるような規模やメニュー構成にしているというのもあって、1日に3回転、150~200名の来客があるという。また女性比率も45%と、ビアバーとしては高めの割合だ。

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神田店のオープンに合わせて開発されたオリジナルのディップソース。「よなよなエール」の味に合わせたケチャップや、ブドウなどを混ぜて甘めに仕上げたマスタードをはじめとする4種類があり、さらに「シードル」や「ディジョン」など3種類が近日追加予定だ。

 昨今のクラフトビールブームによって、それまでほぼピルスナー一辺倒だった日本でも、やっとそれ以外のスタイルが認知されはじめたところだ。しかしビールのスタイルというのは100以上もあり、たとえば大麦ではなく小麦を使った"ウィートエール"、さらにハーブや果実の皮を混ぜる"ベルジャンホワイト"、燻製させる"ラオホ"などなどその豊富さはほかの酒を凌駕するほど多彩。そして日本という国は和食という自国の繊細な伝統食を持ちつつも、海外のあらゆる国の料理を忠実に再現したりアレンジして取り入れたりする世界有数のグルメ大国である。今回取材に応じてくれた、赤坂店の春日大志支配人はそんな状況を俯瞰しつつ、「クラフトビールこそ料理とのペアリングを楽しむために最適な食中酒です。いずれワインのような立ち位置を築くに違いありません」と語ってくれた。

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神田店に駆けつけてくれた赤坂店支配人の春日氏。ワンダーテーブルの「ラヂオホール」や「居酒屋六蔵」などを経て現職に。

 さらに春日氏はこうも語る。「クラフトビールもワインと同じように、『和食にはさっぱりとした"ピルスナー"』とか『野菜にはフルーティーな"ヴァイツェン"』とか、スタイルで選ばれるようになっていけば面白いですよね。今は一部での盛り上がりかもしれませんが、近い未来には多くのお客様がそれぞれの好みでペアリングを楽しむ日が必ず来ます。1日も早くそうなってもらえるように、私たちも試行錯誤しながらではありますが、クラフトビールと料理の可能性をより発信していきたいですね」

 2号店がオープンしたばかりの同ブランドだが、今年も夏には六本木と表参道に「よなよなビアガーデン」が展開され、神田に次ぐ3店舗目の「よなよなビアキッチン」も意欲的に検討しているという。特に今後は神田店のようなカジュアルなダイニングを出店していきたいとか。ワンダーテーブルとヤッホーブルーイングというビッグネームのタッグが外食業界全体に与えたインパクトは大きい。とはいえその衝撃はクラフトビール全体からすれば非常に強い追い風であり、希望に満ちた明るいニュースであるともいえよう。次回以降もそんな話題店のブランディングや商品開発に対する考え方などを中心に、フードペアリング例を紹介していきたい。

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