若者のアルコール離れ、高齢化、家飲み思考など、年々、規模が減少傾向にある居酒屋市場。だが、ちょい飲み・昼飲み・ファミ飲み・プチ贅沢利用の増加など、新しいニーズが次々と創出する進化が著しい業態でもある。そこで今回は居酒屋業態を展開する各社に、今後の展望や取り組みなどを伺った。

　東京・田町を中心にドミナント展開する「駒八ブランド」をはじめ、近年は青物横丁の「青横ハイボール酒場」も好調の株式会社駒八。代表は"駒八おやじ"の愛称で親しまれ、3月からは社団法人日本居酒屋協会の顧問も担当する八百坂 仁氏。還暦を迎えたことを機に、6年前から「居酒屋経営塾」を立ち上げ、若手経営者の育成にも取り組んできた。

■食事とアルコールを楽しむ食文化は廃れない。いかに時流に合わせた提案ができるか。 

2015年、居酒屋復活！第3回

八百坂 仁氏　株式会社駒八　代表

　八百坂氏は1975年に高円寺駅前に、夫婦二人で営む7坪の居酒屋「駒八」をオープン。その5年後に田町に移転し、現在は15店舗を運営する。「駒八は2015年で40年目を迎えます。この間は連日満員のバブル時代や、その後のリーマンショックなど、さまざまなことがありましたが、振り返ってみるとあっという間ですね。ただ現在、居酒屋業態は特に、上り調子の拡大路線やチェーン展開の時代から下山の時代に入って来ているのではないかと思います」。その心は、着実にパイが限られてきている日本の人口構造、また高齢化社会を無視できないからである。「団塊世代といわれる昭和22～24年生まれ、また昭和26年生まれまでを含めると、人口は一千万人にも及びます。およそ日本の人口の1割ですからね。居酒屋人口が減っていくことは仕方がありませんし、これ以上拡大路線を引いてはいけない。ちゃんとソフトランディングできないところは倒産もあり得る。従業員のためにもハードランディングは絶対にダメです」。

　一方でチェーン展開する居酒屋としても模範となる企業はあるという。「例えば毎年2～30店舗増やしている鳥貴族さんは、昼はパートのおばちゃんたちが出勤して、焼鳥の串打ちなどの仕込みを終わらせておく。その後に社員が出勤するという、誰も不満なく回れる効率のいい仕組みを作った。チェーン展開では稀にみる、もう超ホワイト企業ですよ。こうして一業態に特化して、お客様のニーズに合わせたものをきちっとしたコンセプトで掘り下げれば、魅力のある商売ができるという好例ですね」。

　また現在好調な企業、また若くして成功している経営者には共通性があるそうだ。「やはり従業員満足度が高いんです。報酬面のインセンティブや、旅行といった福利厚生など、モチベーションをアップさせる囲い込みをしっかり行っている。すると必然的にお客様の満足度にもいい影響が出てきますよね」。

1975年から続く代表的な老舗居酒屋。

　そして今後の駒八の展望を聞いてみた。田町でのドミナント経営でブランド力を培った駒八は、三菱地所からのオファーによって駒八豊洲店、サントリーの紹介による青横ハイボール酒場を出店。その後も出店オファーが絶えないという。「ただウチではずっと、『居酒屋は企業ではなく家業だ』と言ってきました。また息子が起業したため、後継ぎがいなく拡大することはできません。一人で見れるのは5～10店舗が限界でしょう。今後はより家業的なものにシフトしていくと思います」。

　ただ高齢化社会の到来に向け、思い描くビジネスモデルもあるそうだ。「機会があれば、高齢層をターゲットにした、コの字居酒屋をやってみたいですね。営業は午後3時くらい9時くらいまでで、リーズナブルな焼鳥やおばんざいを並べる。理想は近場の時間のある高年齢層の方が、毎日一杯二杯さっと飲みに来てくれる。そこで他愛もない世間話なんかをしながら、僕も楽しんでね。客単価2～3000円でも毎日来てくれたら、それなりに売上は立つでしょう。孫へのお年玉くらいにはなるんじゃないかな（笑）」