外食ニュース
鶏肉のカテゴリーにおいて、外食と中食の両業態、さらには精肉の分野でも強い存在感を放つ店舗がある。名古屋を拠点としながら、東京をはじめ首都圏でも有名な「鶏三和」だ。増税をはじめ、人々のライフスタイルや消費マインドが激しく変化をする中、同社はどのようにしてその地位を築いているのか。強さの秘密を探った。
「鶏三和」を運営する、さんわグループは事業別に6つの企業からなり、「鶏三和」をはじめとする鶏肉特化型専門小売外食店舗を展開するのは株式会社オールドリバーとなる。母体の創業は120年前の、ちょうど1900(明治33)年のこと。名古屋市西区に米穀、および雑穀、飼料商として開業したのがはじまりだ。
その後1933(昭和8)年には、愛知県知多郡に名古屋コーチンなど約8万羽の鶏を育成し、東洋一の規模を誇る三和農場が建設される。戦後の急速な復興の中、1956(昭和31)年には外食の直営1号店「若鶏のさんわ」を名古屋にオープン。翌年には小売り業態を名古屋駅前地下街に出店し、多方面における名古屋コーチンのリーディングカンパニーとしての礎を築いていく。
現在の「鶏三和」にも関係するエポックメイキングな出来事は、1990年代に起きる。まず1990年には「そごう千葉」に、関東地区の百貨店に初めて出店した。当時は「若鶏のさんわ」の屋号だったが、1994年にリニューアル。それが、同社の誇るブランド地鶏「三和の純鶏 名古屋コーチン」を中心とした「鶏三和」である。そこから拡大し、今に至る同店のブランディングについて、総務・広報の統括である後藤有里氏が教えてくれた。
「千葉市の百貨店への出店をひとつのきっかけに、関東首都圏の出店を強化してまいりました。現在は東京ですと、銀座三越や伊勢丹新宿店など日本屈指の百貨店にも出店させていただいております。基本的には、大きな商圏がある拠点の繁華街型の複合商業施設やターミナル駅の駅ナカが多いですね。施設への出店が増える中で、首都圏有数の『ららぽーとBAY-SIDE』のような大型ショッピングモールのフードコートへの出店の機会もいただきました」
フードコートや、イートイン併設型店舗の名物といえば、「三和の純鶏 名古屋コーチン親子丼」だ。これは、ポピュラーな鶏料理の中で、名古屋コーチンの良さを生かせることを追求した結果、生まれた。聞けばイートインの客単価は1500円程度。では、惣菜店の場合はどれぐらいか? また、人気商品や焼鳥で人気の部位は?
「小売業態の平均客単価は1150円(中日本エリアの1月実績)です。人気の商品は『名古屋コーチン入りつくね』と『国産ねぎま串』ですね。時季によっても変わり、クリスマスには限定のローストチキンが圧倒的です。毎年行列ができるほど、多くのお客様にご利用いただいております。生肉ではお雑煮用とおせち用の名古屋コーチンなどのモモ肉に人気が集まりますね。また、当店は名古屋コーチンという特別な鶏肉をウリにしていることもあって、ハレの日のご馳走として選んでいただける鶏料理店という側面ももっています」
さんわグループオリジナルの銘柄鶏である「香草美水鶏」や、一部では「匠味赤鶏」なども取り扱っているが、同店の真骨頂は、やはり名古屋コーチン。決して安くはないが、このブランド地鶏を看板に掲げることで、他の鶏惣菜店との差別化ができているのだ。そのため、同店の競合はテイクアウトの焼鳥店や唐揚店などではなく、百貨店系の惣菜店や精肉店なのである。
「鶏肉に特化しているゆえ、鶏料理を多彩に用意しておりますので、たとえば朝は昼食用のお弁当、お昼は親子丼、夕方は惣菜のテイクアウトなどとラインナップを変えることで、お客様のニーズに合った商品をご用意しております。これによってアイドルタイムをなくせるんですね。また、出店先をマーケティングし、その立地に合った客層と商品ラインナップを組み合わせることで、出店先に合わせた業態開発ができることも強みだと思います」
2019年は秋に消費増税が施行されたが、売り上げに変化はあったのだろうか。
「特別に大きな変化はありません。むしろ全体的な買い控えの結果、中食も減るという予想もあり、むしろ不安の方が大きかったです。ただ実際に大きな変動はなく、安心したというのが正直なところですね。ただ、長期的にみると少子高齢化が進んでいきますし、当社も時代に合わせていかなければなりません。国内はもちろん、現在台湾に5店舗を展開していますが、海外進出にも力を入れていきます」
比内地鶏などと並び、日本三大地鶏のひとつと称される名古屋コーチン。その理由には品質の高さはもちろん、国内の地鶏の中で唯一100%血統であること、日本家畜協会から国産実用品種第一号の鶏として公認されていることなども挙げられるが、品種の発展に養鶏から尽力してきた、さんわグループの貢献もあってのことだろう。そして、この卓越したブランディング力や開拓精神は、「鶏三和」をはじめとする各業態にも脈々と受け継がれている。
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