大阪市・北区。梅田の南東側にある天満宮の参道に、「粋なおつまみとお酒にこ」、「ニコノトナリ」、「ニコノスタンド」と並びあった3店舗を展開する「にこ」グループ。代表の東村奈緒美氏に創業から10年間を振り返ってもらい、ドミナントで成功している秘訣を伺った。

「にこ」グループ。代表の東村奈緒美氏

　2009年12月、大阪天満宮前「粋なおつまみとお酒にこ」で独立。当時、日本酒の提供は１合売りが中心だったが、いち早くグラス売りを導入。焼酎やクラフトビールなど選択肢を揃え、一工夫加えた小ポーションの料理、気の利いたサービスで、半年も経たずに人気店となった。

壁一面に一升瓶が飾られた「粋なおつまみとお酒 にこ」。カウンター席、テーブル席合わせて20席が日々予約で満席になる。客単価は2800円

　「物件を見た時から、日常使いでありながら、わざわざ足を運んでもらう目的来店のお店が、感覚的にイメージできました。立ち飲み店にするつもりでしたが、オープン前日、天神橋筋界隈にお年寄りが多いのに気付いて、急いで家具店のIKEAに椅子を買いに走ったのを覚えています」と、東村氏。

　「私にとって、お酒に料理は必需品なんです。お酒はいろんな種類を飲みたいから、１合だと多過ぎます。お酒に合う料理がいろいろと選べると良いなと、料理も豊富になりました」。

　独立当初は1人で営業していくつもりだったという東村氏。

　「お店を増やす計画はありませんでした。まったく計算外でしたが、大家さんから声をかけてもらって、『にこ』のすぐ横の立地、この形で何ができるかを考えて、立ち飲み店を始めました」。

13年1月に現在の「ニコノスタンド」の原型である立ち飲み店をオープン。数度のリニューアルを経て現在の姿に。客単価は2000円

　「『ニコノトナリ』は長年事務所だった物件です。飲食店に貸したいということで、1番にお声がけいただきました。他のお店が派手な看板や外観のお店を出すかもしれないし、10年かけて作ってきた通りの景観が変わるとイヤだな、後から後悔したくないなと。覚悟を決めて、自分たちのリソースで何ができるか、必要とされるお店は何かを必死に考えて、イチから作り上げました」

　18年5月にオープンした「ニコノトナリ」はグループ最大の30席。ワインに合う洋食メニューや、コース料理も提供する。客単価は3500円。

　「ワインに合う洋食をご用意しているのでボトルワインがよく出ます。1〜2名のお客様が多いこれまでの2店舗とは違う客層が増えました。12名座れる大テーブルは、部署単位のグループ利用にちょうど良いサイズみたいです」。

　天満宮〜西天満界隈は職住混合エリア。中小企業の事業所も多い一方、飲食店は小バコのお店が多く、30人収容できるところがほとんどないため、歓送迎会シーズンは貸切予約も多かったという。

18年5月にオープンの「ニコノトナリ」

　「日常使いに特化しながら非日常空間。お酒と料理が楽しめるお店というコンセプトは全店変わりません。お客様にとって適正価格かどうかは常に意識しています」。

　長く愛されるお店であり続けるためには、変わらないようで、少しずつ進化する必要がある。

　「ひとつのことを掘り下げてブラッシュアップしていくのは得意なんです。メニューは日々手を加えて、お客様の満足度を測っています。投資も絶対必要です。小さなものを含めると『にこ』は10回以上、『ニコノスタンド』も5回以上改装しています」

　長く続くためには、長く働ける環境が大切と、労働環境の整備を進めている。女性スタッフが多く、独立願望がない人もいるので、なおさらとか。

　帳簿から雇用関係の書類など、本社機能のほとんどを東村氏自身が行う。出店するとなると、店舗設計も建築士任せにせず、積極的に意見を言う。スタッフには、経営者として泥臭い部分も包み隠さず見せる。

　「全部自分でやると、他人のせいにしなくて済みますから、自責の方が楽なんです。最悪、ひとりでやっていけば良いだけですから。常に肩に力が入っているのが私らしいかなと思います」

　「独立したら、大変なことはたくさんあります。一喜一憂する私の姿を見て、これは無理だと思うなら、独立には向いていないでしょうね」と、厳しいようで優しさを見せる。

　「偶然が重なって、現在の形になりました。後から振り返った時に、すべて必然だったと言えるように、末長く愛されるお店にしていきたいです」。

■粋なおつまみとお酒 にこ

住所：大阪府大阪市北区天神橋１丁目１８−２７ 天神ビル１０１

TEL.06-6355-4147

https://www.facebook.com/sakeniko/