フードリンクレポート
記事への評価
取材・執筆 : 豊本豊 2022年11月25日
株式会社タケル・シシクラ 代表取締役 宍倉たける氏
【記事のポイント】
●アメリカンポークが安くて美味しい理由
●歩留まり率が良いアメリカンポークはこう使おう
●ロース、ヒレ、カタ肉を使った、高付加価値メニューの提案
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「アメリカの伝統料理なのに、アメリカンポークを使わないのはマズイでしょ」プルドポークと言えばアメリカン。
米国食肉輸出連合会(以下、USMEF)主催のフードリンクセミナー、「アメリカンポーク外食向けセミナー」が、10月28日(金)、株式会社名畑「NABATAテストキッチン&バー」にて開催された。大阪での開催はコロナ禍前の2019年3月以来とあって大盛況だった。
米国食肉輸出連合会(以下、USMEF)は、1976年に米国政府、米国食肉業界により設立された非営利団体で、アメリカン・ビーフ、ポーク、ラムの海外市場(米国以外の国)での販売促進・広報・教育活動による需要拡大と、消費者、業界での認知の向上を目的としている。日本事務所の開設は1977年で、今年2022年は45周年にあたる。
USMEFの山庄司岳道氏
セミナーはまず、USMEFの山庄司岳道氏よる「アメリカンポークの特徴と部位について」でスタート。インバウンド需要の復活が期待される外食業界事情の今後の展望から、USMEFの沿革と目的、アメリカンポークの魅力について語られた。
「日本はアメリカにとって輸出量の約30%、輸出量は1位の大切な国です。養豚は主に8品種あり、日本を含めた多くの国が、ランドレース種、大ヨークシャー種、デュロック種を掛け合わせた三元豚が一般的です。アメリカでは、チェスター・ホワイト種を掛け合わせた四元豚が存在します。それぞれの豚種の良いところ取りは、規模があるからこそ可能です。1日あたりの加工量(生産量)は日本の6倍以上、40万頭あります」
「アメリカンポークはリーズナブルなので、『安かろう、悪かろう』と誤解されている方もおられるかもしれません。アメリカンポークがリーズナブルでご提供できる理由は、スケールメリットにあります。飼料はコーン、大豆など自家配合。世界のコーン生産量の4割が米国産です。土地コストも安いので、生産コストは日本の6割です」
日本に輸出される豚肉の8割がチルド品。通関含めて、日本に到着するまで3~4週間で、熟成(ウェットエイジング)が進み、旨味が乗り、柔らかくなる。高品質で美味しい理由だ。それでいて、賞味期限は加工日から55日ある。、チルド輸出できるのはアメリカ、カナダ、メキシコの北米くらいで、それ以外の国からの輸入豚肉は、ほぼ冷凍品だとか。
パッカーと呼ばれる加工業者はトップ4で82%、上位を占める4社は、牧畜から安全管理を徹底した加工まで、一貫生産している。
豚肉にかかる関税は、段階的に安くなってきている。豚正肉の従価税は4.3%から2027年には0%に、重量税も70円/kgから2027年には50円/kgに。豚内蔵も冷凍品は2025年から、チルド品も2028年には0%になる。ほかソーセージやランチョンミートは来年2023年に関税0%になる。円安であらゆる食材が値上がりし続ける中、心強い。
続いて、フードリンクグループ第一営業局 局長の植村太一による、「飲食店からみるアメリカンポークについて」
居酒屋・バル業態30店舗にヒアリングしたところ、今年10月に値上げしたとの回答が67%(20店)。うち75%(15点)がフード、ドリンク両方とも値上げを実施している。値上げせざるを得ない今こそ、より良い商品の提供を。そこで提案しているのが、アメリカンポークを使った、高付加価値なメニューだ。
アメリカンポークは歩留まり率が良く、肉質が安定している。それでも、日本でのシェアは、メキシコ、スペインに次ぐ第3位。和食店なら日本産、バルならハモンセラーノなどスペイン産が好まれるという業態事情、卸業者のお薦めや、とにかく安けりゃ良いという飲食店側の事情が大きいらしい。
豚肉の仕入れ先や輸入地域、部位の変更を考えるきっかけになるか。
株式会社タケル・シシクラ 代表取締役の宍倉たける氏(左)
続いて、株式会社タケル・シシクラ 代表取締役の宍倉たける氏による、「部位ごとで作る高付加価値メニュー」の料理実演。
まずは歩留まり率90%以上、ヒレ肉を使った「よだれ豚」から。
塩コショウしたら、同じ太さの棒状に整えて、ラップで空気が入らないように包む。
食品用耐熱袋に入れたら、60℃で30分間低温調理するだけ。袋の上が開いて真空でなくても、中心部まで均一に熱が入る。
低温調理だと、肉の縮みが少なく、誰が作っても硬くなることや失敗もない。アレンジメニューとしては、揚げれば極厚ヒレカツもお薦めとのこと。
ソースを混ぜ合わせたら完成。
「よだれ豚」(ヒレ)
低温調理で柔らかい肉に、脂が少ないきめ細やか旨味がぎゅっと詰まっている。
続いて、程よく油があるカタ肉を使った「プルドポークチャプチェ」。
塩を振ったカタ肉塊に下味ソースを揉みこみ、30分寝かす。
空気が入らないよう、アルミホイルでしっかり巻いて、120℃のオーブンで3時間焼くと、フォークで裂ける、柔らかいプルドポークの完成。
春雨と調味料を炒めて、割いたプルドポークを混ぜ合わせる。
お好みでパクチーを乗せて。
「プルドポークチャプチェ」(カタ)
ピリ辛味でご飯に乗せて丼でもイケる。プルドポークの時点で充分美味い上に、汎用性の高さが魅力。カタ肉の魅力を再発見。
続いては、ロース肉を使った「究極のポークチョップ」
綺麗サシの入った断面。アメリカンポークは肉の掃除済みのため、作業が少ない。
塩コショウをして、厚さ3㎝の厚切りだと火入れが難しいところ。60℃の低温調理で3時間。耐熱袋に入れる時に、形を整えるのがポイント。
ソース作り。ニンニクを色付くまで炒めて、トマトケチャップと唐辛子を炒めて煮詰めたら、トマトを入れ、モッツァレラチーズが溶けるよう、少量の水を。
低温調理したロース肉は火が入っているので、表面を強めに焼くだけ。
「究極のポークチョップ」(ロース)
表面カリっと、中は低温調理で柔らかい。ひと手間かけるだけで驚くほどジューシーな豚肉の旨さ。
宍倉シェフの実演が終わると、USMEFの加藤 悟司氏の挨拶でセミナーは締めくくられた
その間、急ピッチで試食の準備が進められていく
何やら調理を続ける宍倉シェフ
登場したのは、薄切り肉を使った「豚カラ」だった。
「豚カラ」(ロース)と「究極のポークチョップ」(ロース)
スタック感覚で楽しめて、おつまみにももってこい。ジューシーなバラ肉でも良さそうだ。
参加者から「薄切り以外も食べてみたい」との声に、予定になかったメニューにも臨機応変に対応する宍倉シェフ。
急きょ登場した「スティックフィンガーフライ(仮名)」は、薄切り肉の「豚カラ」と比べると、歯ごたえと肉の旨味が楽しめる
自社や自店にひとつでも多くヒントを持ち帰ろうと、試食する参加者も真剣。大盛況の中、充実したセミナーは幕を閉じた。
なお、宍戸シェフによる料理実演を含むセミナー動画は、下記のアドレスでご覧いただける。
<セミナー概要>
開催日:2022年10月28日(金)
主催:米国食肉輸出連合会(USMEF)
企画運営:株式会社フードリンクグループ(フードリンクニュース)
会場:株式会社名畑 NABATAテストキッチン&バー
時間:14:00~16:00 ※ウェビナー同時開催
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米国食肉輸出連合会(USMEF)
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