神楽坂料理飲食業組合長　平鍋孝夫 氏

　神楽坂で生まれ育ち、昭和39年、22歳の時にバー『鼓』を開業。以来51年の歴史を重ね、いまも店に立つ。「昔と違って、いまは喫煙、禁煙、分煙と様々な飲食店があります。店頭に表示がないと、たばこを吸える店なのか、吸えない店なのか、入店してみないと分からない。店頭に喫煙ルールステッカーを貼ってあれば、そうした分かりづらさを解消できます」と話す。

神楽坂の「毘沙門天」をモチーフにした、濃い赤色をベースにした目を引くデザイン。日本語に加えて、英語、中国語、ハングルも併記して、外国人客にも対応する。時間帯分煙のステッカーは、禁煙の時間帯を書き込めるようになっている。

　「この喫煙ルールステッカーが、神楽坂を訪れる外国人の方々に対するサービス向上にもつながればと思っています」（平鍋氏）

　偶然にも平鍋氏がバー『鼓』を開業した昭和39年は、"１回目"の東京オリンピックが開催された年。それから50年以上の時を経て、"２回目"の東京オリンピック開催に向けた店頭表示の取り組みを、いま平鍋氏が地域の飲食店のリーダーとして取り組んでいる。

　その半世紀の間、当然ながら時代は大きく変わった。それでも地域の飲食店が協力し合えば大きな力が生まれ、新しい時代の扉を開く力にもなる。

　２０２０年の東京オリンピックに向けて、神楽坂料理飲食業組合が開始した多言語表示の喫煙ルールステッカーは、まさにそうした取り組みと言えるだろう。

喫煙ルールステッカーを表示した組合の加盟店の中から３店舗を紹介。エリア分煙、時間帯分煙、喫煙可の店舗で、各店がそれぞれの客層に合った喫煙環境を工夫している。

　戦後間もない昭和20年代頃から営業していた料亭がルーツの店で、２００３年に『和食ダイニング 花かぐら』としてリニューアルオープン。小さな入口からは想像できないほど奥に広がりのある店内は、趣の異なる大小の個室を用意。接待や宴会利用客も取り込んでおり、予約で席が埋まることも多い。

　同店では３年前からエリア分煙を採用。まずランチは、全83席のうち20席ほどを喫煙席とし、他は禁煙席に。この20席は、他の客席フロアよりも一段高いロフト部分に設けており、換気も完備していることから、たばこの煙が他の客席に流れにくいのである。

　一方、夜は４つの個室を喫煙にも禁煙にも対応する席にして分煙を実施。他の席は禁煙席にしているが、入口近くの小部屋風に設えたカウンター４席を「喫煙場所」とし、ここでもたばこを吸えるようにして好評だ。まさにフレキシブルな分煙で、たばこを吸うお客にも吸わないお客にも対応している。

住所：東京都新宿区

　　 　神楽坂5-35 安達ビル1F

店舗規模：12坪・13席

客単価：4000 〜5000円

営業時間：

（月〜木）18:00〜翌2:00

（金・土）18:00〜翌4:00

（日）18:00〜24時（※バー営業のみ）

禁煙の時間を書き込んだ時間帯分煙のステッカーを表示。店内はカウンター席が中心。遠方からの目的客も来店する評判店だ。

　チャコールグリルとスペインのバスク料理が楽しめる『神蔵』（かぐら）。13席の小さな店だが、その本格的な料理で評判を集める。一方で、アルコールは約80種のヨーロッパワインを中心に、焼酎やウイスキーなども用意し、深夜まで気軽に飲める一軒として地元客に親しまれている。オーナーの岡本保彦氏が英語やフランス語を話せることもあり、外国人利用客が約２割と多いのも特徴だ。

　同店は、食事利用客の多い18時〜22時までは全席禁煙。２、３軒目利用のお客が増える22時以降はバータイムとし、喫煙可で営業。夜の営業時間の中でも、時間帯ごとにお客のニーズが変わる。その変化に合わせた効果的な時間帯分煙を行なっている。

　

　さらに喫煙可の時間でも、「吸わないお客様に気を遣って、外で吸われるお客様も多いです」と岡本氏。お客同士の気遣いも生まれている。

住所：東京都新宿区袋町2 鈴木ビル1F

店舗規模：10坪・20席

客単価：3000 〜4000円

営業時間：17:00 〜翌1:00

店主の若林隆一氏（写真左）と弟で調理長の恒夫氏（同右）。喫煙可のステッカーは、入口の扉ののれん下に表示。

　『神楽坂 鳥竹』は、昭和53年から神楽坂の地で営業している居酒屋。料理は、焼とりから鮮魚の刺身、参鶏湯まで幅広く揃え、一人飲みからグループ客まで対応する。経営するのは店主・若林隆一氏と、弟の恒夫氏の兄弟。カウンターメインの小さな店内はお客との距離が近く、二人の人柄にひかれて通う常連客も多い。

　

　そうした中、お酒と一緒にたばこを楽しみたいという常連客が多い同店では、全席喫煙可で営業。「常連のお客様が主体なの

で、僕らもお客様も、誰がたばこを吸うのか、吸わないのか、だいたい分かっています。新規のお客様が隣の席に座った時は、『たばこいいですか？』と声をかけるなど、常連のお客様が気を遣ってくれます」と隆一氏。

　店頭表示については、「入口が狭く、外から客席の様子が見えにくい当店のようなお店は、特に店頭表示が必要ですね」（隆一氏）と話す。