スマートフォン版のフードリンクニュースを見る

RSSフィード

トレンド

フードリンクレポート

2015年10月26日(月)17:41 トレンド

気になる中国人観光客の"銀ブラ"事情。 和食だけじゃない!洋食!喫茶も!

訪日爆買い中国人観光客の“爆食”を狙え!(5-1)

記事への評価

  • ★
  • ★
  • ★
  • ★
  • ★
0.0

取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年10月25日執筆

キーワード :      

 今年8月に起こった上海株式市場の大暴落、いわゆる"チャイナショク"も何のその。10月1日~7日、中華人民共和国の建国記念日にあたる国慶節の大型連休には、大挙して中国人が日本を訪れ、東京、大阪など日本の主要都市の目抜き通りが中国人観光客で占拠された。家電製品、薬品などを買い漁る中国人の"爆買い"は目を見張るが、レストランを団体客があたかもジャックして嵐のように食べていく"爆食"にも注目が集まる。外食がどのように中国人の"爆食"に対処しているのか。また、"爆食"に引き込むにはどうすればいいのか。(5回シリーズ)

DSCF6106.JPG
大きな爆買い用トランクを押して、「ビヤホールライオン」銀座七丁目店にぞろぞろと入店する中国人観光客一行。

 中国人観光客の爆買いスポットとして名を馳せる、銀座中央通りの家電量販・免税店「ラオックス」銀座本店から、買物を終えた中国人一行が、ぞろぞろと重いトランクを引きずって通りに出てきた。既に13時をまわり、空腹を満たそうとレストランを物色しようとしていたところ、何人かが目と鼻の先にある「ビヤホールライオン」銀座七丁目店のショーウインドウに飾られた、精巧な食品サンプル群に釘付けとなった。

 実は我々が当たり前のように飲食店で目にする、食品サンプルは日本独特の文化であり、海外からの観光客にとって物珍しい。「ビヤホールライオン」においては、食品サンプルが大々的に掲げられており、中国人の中には、食品サンプルを背景に、お気に入りのポーズを決めて記念撮影をしていく者もいた。

DSCF6102.JPG
「ビヤホールライオン」銀座七丁目店の食品サンプル前で、記念撮影する中国人観光客。一種の観光スポット、撮影ポイントとなっている。

 どういう店なのか手持ちのスマートホンで検索したり、たまたますぐ近くにいた者同士でここで食べるべきか話し合ったりと、店の前で20分近くたむろした後、メールで呼び寄せたのか、銀座界隈に散っていた残りのメンバーも集合し、店内に吸い込まれていった。

 「ランチから17時までは、外国人のお客様が多く8割を占めますね。その中でも中国の方が非常に多いです。ディナータイムの外国人は少ないです。食品サンプルを見て入られるので、言葉が通じなくてもどういう料理が出てくるのかわかるので、注文もしやすく外国人には好評ですね。中国の方は、よく食品サンプルの前で写真を撮っていらっしゃいます。こだわりがあって、いろいろポーズを変えて写しています」(サッポロライオン経営戦略部 広報担当・西村礼佳氏)。

suteat.png
中国人は2階にある「BEER&WINE GRILL 銀座ライオン」の高価な「熟成肉サーロインステーキ」(200g:3280円~)を、ランチタイムにペロリと食べていくという。

 よく、「訪日外国人は和食が食べたい。寿司だ。天ぷらだ。インバウンドは和食に限る」という人がいるが、はっきりと間違いである。「ビヤホールライオン」は洋食の店であって、インバウンドでチャンスがあるのは和食のみではない。日本に来るからには和食はもちろん楽しみたいだろうが、食品サンプルでレストランの提供内容がわかれば、洋食を選ぶ中国人がいるのが、銀座の実情なのである。「アジア圏の方はビールを飲まないですね。食事利用です。冷たいドリンクも好みません。付け合わせやサラダもほとんど召し上がりません。時間が限られているので、滞在時間は短くて回転率が高いです。料理を早く出すように急かされます」(西村氏)。

メインダイニング.jpg
「BEER&WINE GRILL 銀座ライオン」店内。2013年4月、新歌舞伎座の顧客を当て込んでオープン。今は昼間の顧客の8割が中国人をメインとした外国人。

 中国人の食文化として、食べる場所と飲む場所をはっきり分ける、冷たいものを飲まない、最近は寿司という例外もあるが生の食材を食べないなどといった慣習があり忠実に反映されている。また、中国人は観光バスを使ったツアーのフリータイムに、爆買いしている。観光バスが、夕方ピックアップしていくのは18時半~19時頃。彼らは買物で忙しく、親戚、一族に頼まれたものも買わなくてはいけない人も多いので、食事はさっさと済ませたいのが本音のようだ。大きな荷物や子供を残して、買物に出かけてしまう人もいるという。食べる前に会計を求める人も多い。

DSCF5570.JPG
銀座中央通りに大型観光バスで乗り付ける、中国人観光客。爆買い、爆食の宴が連日繰り広げられている。まさに「銀爆」。

 人気メニューは、ステーキ、ナポリタン、カレー。日本人の感覚では西洋料理であるが、日本に特徴的な洋食が挙がっている。2階は「BEER&WINE GRILL 銀座ライオン」銀座7丁目店となっていて、主に赤身部分を1ヶ月間乾燥熟成させた、ドライエイジング製法のサーロインステーキやローストビーフを売りにしているが、これがよく売れるので、中国人観光客の顧客単価は高めだ。「熟成牛サーロインステーキ」は200gで3280円(税抜)するが、「皆様、ペロリと召し上がっていかれます」と西村氏は、その"爆食"ぶりに目を丸くする。回転率が高くて、高単価。中国人の"爆食"は、うまくすれば外食の"爆利"にも貢献してくれる魅力があると言えよう。

DSCF5600.JPG
銀座コアの「オスロコーヒー」は顧客の半分が中国人。1杯750円するスペシャルティコーヒーを躊躇なく飲んでいく。

 銀座の中央通りの飲食店は日中、中国人観光客で賑わっている。観光庁の10月21日に発表した訪日外国人旅行者数調査によれば、1~9月の中国人訪日数は前年同期比2.1倍の383万人で国・地域別のトップ。しかも、中国人は免税店目当てに、銀座に観光バスでやってくる。次いで、韓国285万人(43.1%増)、台湾277万人(30.7%増)、香港110万人(68.5%増)の順となっている。道理で、中華系の人の通行が目立つはずだ。しかも、中国人の旅行消費額(今年7~9月)は4660億円で、その全体構成比の46.6%と半分近くを占めるのである。中国人観光客を制する者が、インバウンドを制する。その最前線が銀座なのである。

 銀座5丁目「銀座コア」1階の「オスロ コーヒー」も、中国人の顧客比率が5割を占める。この店の売りである、エアロプレスとハンドドリップのサードウエーブ系スペシャルティコーヒーを楽しんでいるのかどうかはわからないが、買物の合間に休憩で使っている。

IMG_1856[1].JPG
シンガポール料理「ウィーナムキー(威南記)」。中国人観光客で占拠される時間帯もある。

 9月18日に「ニューメルサ」が全面改装して、「イグジットメルサ」と装いも変えてオープンしたばかりの7階レストラン街に入居する、シンガポール料理「ウィーナムキーハイナンチキンライス(威南記海南鶏飯)」の田町に続く2号店も、時間帯によっては中国人観光客に占拠されることもある。

 店員によれば、「レストラン街を一周回って、あれこれ検討した結果、どういう料理か想像がつくので当店に入られるお客様が多い」とのこと。中華の流れをくむシンガポール料理なら、異国に居ても何が出てくるのかわかるので、安心というわけだ。なお、「イグジットメルサ」にも、5~6階に「ラオックス」が入居しており、爆買いの中国人が多い商業施設である。

ブルーリリー2-1024x683.jpg
「ブルーリリー 青百合飯荘」銀座店。和食に飽きた中国人の長期訪日旅行者にも好評という。

 「中国人が観光で日本に来てまで、中華料理は食べないだろう」というのも、誤った先入観による思い込みだ。銀座4丁目の際コーポレーションが経営する「ブルーリリー 青百合飯荘」では、顧客の2~3割が中国人だという。顧客単価でディナー3000円、ランチ1000円くらいの、ややアッパーな店である。団体客ではなくて、個人で観光している少人数グループの利用が主流。

 広報担当の當山三枝氏によれば、「銀座では中国人観光客に占拠されているお店が多い中で、ウチは少ない方です。ランチは日本人と同じで麺や定食が人気。ディナーは麺と点心を注文して2000円くらいで済ませる人もいれば、1万円くらい使われる人もいます。全般に単価は高めですが、お酒は出ません」とのこと。日本というと魚のイメージが強いのか、ディナーでは魚料理がよく売れるそうだ。同店では長崎県五島列島から直送の魚を使っているが、中国人には産地のこだわりはないようで、単に魚料理だから選ばれている。

551cb9253bac4.jpg
「ブルーリリー 青百合飯荘」銀座店の店内。

 ゴールデンルートで1週間旅行するとなると、関空から入った場合、大阪、京都、名古屋、富士山、箱根を経て東京に着き、成田から出国するわけだが、毎日和食ばかり食べていると、旅程の最後の方になる東京では、さすがに飽きてくる。そうした時に、「ブルーリリー 青百合飯荘」では、「中国本場の味に近い料理を提供しているので、ほっと一息付ける安心感があるのではないか」と、當山氏は分析している。もちろん、和食の人気は言わずもがなだ。

640x640_rect_9489862.jpg
「かに道楽」銀座八丁目店。国慶節期間中は中国人観光客で3時間待ちとなった。

 「かに道楽」銀座八丁目店は、「ギンザナイン2号館」2階にあるが、国慶節の時は中国人で溢れかえって、3時間待ちにもなった。「普段から、台湾や香港からの観光客が多いのですが、国慶節は本土からの個人旅行者でいっぱいでした。銀座に限らず、新宿、渋谷、大阪の道頓堀の店は、皆そんな感じです。本土の人は英語ができないからわかります。中国の富裕層はお金に糸目を付けないですね」と経営する、かに道楽ではホクホク顔だ。

 銀座八丁目店の場合は、土曜、日曜、祝日の昼間、中央通りが歩行者天国になるので、中国人を乗せた観光バスが、ちょうど「ギンザナイン2号館」の前に集結する。高速道路の高架下で目立たない立地であるが、バスに乗降する中国人がちょうど、かにの看板を目にすることになる。そのため、中国人の間で「かに道楽」の知名度は抜群だ。

DSCF5903.JPG
銀座8丁目「ギンザナイン2号館」の前に集結する中国人観光客向けの大型バス。週末と休日の昼間は中央通りが歩行者天国となるため、このような光景が見られる。

 中央通りから少し離れた、昭和通りに近い「一風堂」銀座店でも、昼間の時間帯は4割ほどが中国、台湾からの観光客。特に中国人は7、8人の団体で来るので、30席の店内が占拠されたような雰囲気になってしまう。福岡空港に近い山王店は、ロードサイドにあって大型バスが留められる駐車場がある。「一風堂」では予約を取らないが、ガイドとその都度交渉して、海外の観光客を受け入れている。日本でラーメンを食べるのは、中国人にとって楽しみの1つで、豚骨は特に人気が高い。海外にも積極出店し、上海に6店、北京に2店、広州に2店など中国国内に13店を展開している「一風堂」は、知名度が高く、爆食の対象として選ばれている。

DSCF6251.JPG
「一風堂」銀座店。中国人客で店内が溢れることもある。

 このほか、寿司の名店「久兵衛」、俺のシリーズの「俺のだし」など、本来日本人の食通しか行かないような、中央通りから入った店にも中国人が押し寄せており、あくまで買物がメインとはいえ、買物の間に"爆食"している風景が、銀座一帯で見られるのである。


読者の感想

興味深い0.0 | 役に立つ0.0 | 誰かに教えたい0.0

  • 総合評価
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
  • 0.0

この記事をどう思いますか?(★をクリックして送信ボタンを押してください)

興味深い
役に立つ
送信する
誰かに教えたい
  • 総合評価
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
    • ★
  • 0.0

( 興味深い0.0 | 役に立つ0.0 | 誰かに教えたい0.0

Page Top