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2015年9月28日(月)15:13

スナックの今昔から考察する未来のスナックの可能性。

密かなブームが到来しているスナックの今(4-1)

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取材・執筆 : 中山秀明 2015年9月28日

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 数ある飲食業態の中で、極めて特異なジャンルがある。それが「スナック」だ。飲食を楽しむところであり、多くはカラオケで歌える店であり、ママをはじめとする店員とディープな話ができる場所でもある。歴史は古く、全国に20万軒は存在するという説があるものの、詳しい実態は謎だ。また、紹介する情報誌は希少で、『食べログ』にもジャンルはなく、検索してもほぼ出てこない。

 そう考えると一見では衰退していくと思われそうだが、そんなことはない。最近では「全日本連盟スナック連盟」が誕生したり、その会長である玉袋筋太郎氏によるTV番組が放送されていたりと、盛り上がりを見せている。さらには『スナッカーズ』という専門の情報サイトがあったり、有名雑誌で特集号が出版されたりと、実は密かなブームになっているのだ。ということで今回はスナックに焦点を当て、その魅力を改めて紹介するととともに人気の秘密に迫りたい。玉袋氏や現役ママなど関係者の証言を交えながら全4回のレポートで綴っていく。

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スナックといえば街灯。中には鮮やかなネオンサインもある。ママの名前や当て字を採用するなど、独特の店名もスナックならではだ。

 第1回は、今一度スナックについて考察していきたい。まず、スナックとは何だろうか。歴史をたどると、原型は欧米の「スナックバー」という業態らしいが、海外のスナックバーは必ずしもアルコールを提供する店ではなく、日本のスナックとは別物である。とはいえ、アルコール以外に軽食=スナックを提供するバーというのがスナックの由来らしい。そして日本において厳密な誕生年を記すとすれば、1964年がそれにあたる。

 それまで、バーやキャバレーといったいわゆる「風俗」は、この年に行われた都道府県条例改正により、24時を越えての深夜営業が不可能となった。そこで深夜営業が可能な「スナック・バー(いわゆるスナック)」が誕生することになる。やがて1980年代にはサラリーマンを中心に2次会需要の定番として親しまれるようになり、スナックへの賃貸を目的とする雑居ビルの建設ラッシュが出現した。スナックの店内の雰囲気やイメージそのものが昭和やバブルを彷彿とさせるのには、おそらくこの時代に増えたというのが大きな理由であろう。

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都内の駅前であれば比較的よく見かける、スナックがひしめく雑居ビル。これだけの数があっても営業を続けられるのは、それだけの需要があるからなのだ。

 また、ビジネスにおいては男性中心だった当時、女性経営者を多く生み出すなど、女性の社会進出に貢献した。相次ぐ新規参入に伴い、スナックへの賃貸店舗としての飲食ビルが、大都会のみならず地方都市にまで出現するなど、かつては建設投資の誘因にもなっていたという。キャバレーや高級クラブよりも安価で、特に2次会の流れでカラオケを楽しめる場としてスナックは重宝されていたのだ。

 カラオケに関していえば、この文化の礎をつくったのはスナックといっていいだろう。当時、カラオケボックスはおろか今のようなカラオケ専門店はほぼなかったため、カラオケを楽しめる場所といえばスナックだった。また、先述の女性の社会進出といえば、1980年代から顕著に働くようになった女性、いわゆるOLが仕事終わりに飲食店に足を運ぶきっかけになったのも、カラオケの存在が大きい。

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いわゆるスナックの店内。カラオケの端末や、水割り用に置かれたテーブル上のペットボトルなど、独特のアイテムがある。

 その後、バブル崩壊などの景気変動に伴う法人の経費削減や顧客ニーズの変化によって需要は後退。キャバクラやガールズバー、カラオケボックスやカラオケ専門店などの出現も脅威となったであろう。また、「行きたくても店の情報がオープンにされていない」、「一見では入りづらい」といった特徴もあって、新規顧客である若者が"スナック離れ"していったのも事実。時代の流れやさまざまな影響によって、確かにスナックの数自体は減少しているかもしれない。しかし、スナックならではの特性によってスナックが成り立っているのもまた事実なのだ。

 その特性こそが"常連にとっての居心地の良さ"であり、スナックを特異なものにしているのである。極端にいえば、スナックは店ではなく家。だからママがいて、人と人との距離感が近くアットホームなのだ。常連が住人となって入り浸ることのできるゆるい空間にするためには、暗黙の内輪な世界をつくらなければならない。そのためスナックの入口は大低が窓のないノブ付きのドアであり、オープンなガラス張りの引き戸などではないのである。客同士が顔見知りであるからカラオケが頻繁に歌われ、会員制にしている店やメニューリストが存在しない店もある。

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筆者の自宅付近のスナック。駅からは離れているが、だからこそ地域密着で営業がしやすいといえよう。

 だが、やはり今は平成の世。オーセンティックなスナックばかりではないし、ママの世代交代も存在する。新時代のスナックが誕生しているのだ。代表のひとつが字のごとく、「ニュースナック」と呼ばれるもの。ママをはじめとするスタッフの若さが一番の特徴で、20~30代のママも珍しくはない。都市部に多く、客が常連のみで構成されるようなタイプの店ではないので、カラオケをあえて置かないというケースもある。また、ホームページなども設置して料金システムを明記するなど、気軽に入店できるような工夫が随所にみられるのだ。

 こういったニュースナックのママは、キャバクラ譲のOGなど何らかの水商売の経験者であることが多い。他店との競争や経営難を回避するためだったり、ノルマや指名制度などに嫌気がさしたりして、自らがママになったり、同じ考えのキャストをスタッフにするというケースがよくあるとか。そして当然、通常のスナックよりも客層が若いという傾向がある。

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本特集でも登場予定である、玉袋筋太郎氏が編集した『スナックパスポート』(880円)。首都圏にあるさまざまなスナックの情報が100店も紹介されており、クーポン付きで気軽に楽しめるという画期的な一冊だ。

 しかし、実際にスナックに行ったことのない人からすれば、料金システムや暗黙のルール、交わされる話の内容はどのようなものかなどが気になるところだろう。ということで、次回は実際に筆者が有名なスナックを訪れ、体験レポートをしようと思う。システム的な部分はもちろん、メニュー、話の内容、常連客のこと、店の歴史など、多岐に渡って紹介していきたい。

出展:『公共財団法人 全国生活衛生営業指導センター』内、経営アドバイス・業界動向

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