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フードリンクレポート

2015年5月20日(水)11:55 トレンド

焼鳥に続いてラーメン店も訴えられた! 秀インターワンはパクリのデパート!?

パクリのボーダーライン。繁盛店の知的財産はどこまで守られるか。(5-2)

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年5月19日執筆

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 フードリンクニュースによる、「鳥貴族」に極めて酷似した「鳥二郎」の仁義なきパクリ疑惑報道(2014年12月11日付)は大きな反響を呼び、「鳥貴族」が「鳥二郎」を不正競争防止法違反で訴える訴訟にまで発展。各種メディアでも独自取材により報道合戦が繰り広げられ、情報が拡散されて、「いくらなんでも、ここまで似るとはあり得ない」という驚きの声が読者、視聴者の間で広まっている。新業態、新商品、新サービスが生まれ、それがヒットすると真似る行為は古今東西で行われてきているが、似ていることはどこまで許されるのか。過去の模造業態を振り返るとともに、不正競争防止法のポイントに踏み込んでみた。(5回シリーズ)

パクリのボーダーライン。繁盛店の知的財産はどこまで守られるか。(5-1)

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左が「にく次郎」(秀インターワン)、右が「丸源ラーメン」(物語コーポレーション)。紛らわしいのぼりだが、外観も似せているので遠目には判別しにくい。

 秀インターワン(本社・京都市中京区)が展開する焼鳥チェーン「鳥二郎」の、「鳥貴族」に対するリミットを振り切るほどの猛烈な"仁義なきパクリ!?"ぶりに驚いていると、今度は兵庫県西宮市で出店しているラーメン店「にく次郎」もパクリ疑惑で訴えられた。

 不正競争防止法に基づき、似た表記などを止めるように、5月14日、大阪地方裁判所に仮処分を申し立てたのは、物語コーポレーション。同社が本州と四国で106店を展開する人気ラーメンチェーン「丸源ラーメン」に、「にく次郎」の外観、店員の服装、メニューなどが酷似していると主張。損害賠償こそ求めていないが、秀インターワンには現状のままでの「にく次郎」ならば営業停止を要求している。

 「にく次郎」は元々、秀インターワンが「五右衛門」の名前で経営していたラーメン店で、黄色と赤、黒などの飲食店でよく使われる人目につきやすい看板で、「肉そば」を売りにして営業していたのだが、2013年5月にリニューアル。わざわざ、木の格子の外観に、水彩画風のラーメンのイラスト、「熟成醤油」の烙印、「肉そば」ののぼりまで、「丸源ラーメン」に酷似させて、「にく次郎」なる店名で再オープンしている。

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「丸源ラーメン」外観。

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「にく次郎」外観。

 申立書によれば、物語コーポレーション側では「同じチェーンだと走行または通行する者が混同する」としているが、リニューアルを敢行したことから見て、むしろ「丸源ラーメン」と錯覚させて入店を誘う、あやかり商法というより顧客の横取りと取られても仕方ないのではないか。

 訴えた側の「丸源ラーメン」は、2001年6月に、物語コーポレーションの郊外型大型ラーメン店1号店として、三河安城店をオープンしている。どちらのほうが、歴史が古いのかは明らかだ。物語コーポレーションは1949年、愛知県豊橋市におでん屋「酒房源氏」として創業。97年6月に物語コーポレーションへと社名変更。2011年6月には東証一部上場を果たしている。

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「にく次郎」にリニューアル前の「五右衛門」。秀インターワン経営。やはり肉そばを売りにしていた。この外観でなぜいけないのか。

 焼肉業態の「焼肉きんぐ」、「焼肉一番カルビ」、「焼肉一番かるび」、ラーメン業態の「丸源ラーメン」、「二代目丸源」、お好み焼業態の「お好み焼本舗」、寿司・しゃぶしゃぶ食べ放題「ゆず庵」、しゃぶしゃぶ「源氏総本店」、和食「魚介三昧げん屋」といったブランドを有し、特に郊外ロードサイド店の開発に定評のある外食企業である。

 2014年6月期の年商約268億円、2期前約226億円、3期前約182億円であって、成長力の高い会社だ。「丸源ラーメン」はラーメンの主力業態で、2013年において133億5000万円を売り上げており、「にく次郎」の所在地より半径25km以内に6店、兵庫県と大阪府のロードサイドだけで18店が営業。TVでCMも打っている。つまり、「丸源ラーメン」のエリアでの周知性が高い。

 「にく次郎」の秀インターワンも、平成15年3月の創業と社歴は浅いが、店舗数87店、FC6店と、総合外食企業としてかなり大きな会社である。多ブランドを有する中で、主力をなす「お好み焼・鉄板焼 いっきゅうさん」からして、老舗お好み焼きチェーンの「お好み焼・鉄板焼 きん太」に似ているという噂が絶えない。

 「にく次郎」は名神高速道路・阪神高速道路、西宮インターチェンジにほど近く、遠目には判別しにくい酷似した外観、入店後も酷似した店服、メニューを用いるTTP(徹底的にパクる)の手法により、「丸源ラーメン」の系列の別名店のように見せかけ、集客しようとしたとの意図が疑われる。

 そもそも「熟成醤油」という言葉は醤油として一般的な呼び方でなく、「肉そば」もラーメンの名称としてなくはないがそれほど一般的ではない。この2つの言葉をつなげた「熟成醤油肉そば」となると、「丸源ラーメン」のほかには、「にく次郎」でしかお目に掛からないのである。それほど、偶然に一致するには、困難なメニュー名だ。

 物語コーポレーション広報では、「FC本部として、加盟店の店の売上に影響があるなら、オーナーに申し訳が立たない」としており、ブランドを守るのが仮処分を申し立てた理由の1つであるとしている。

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「丸源ラーメン」の「熟成醤油肉そば」半熟煮玉子入り 750円。

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「にく次郎」の「熟成醤油肉そば」半熟煮玉子入り 780円。

 新横浜ラーメン博物館の広報担当・中野正博氏によれば、「ラーメンは個人経営が多く、大きなチェーンがそもそも少ない。100店舗を超えているというと、幸楽苑、日高屋、花月嵐など数えるほどしかない。丸源ラーメンは目に付く有名店と言えるでしょう」と語る。

 ラーメンファン、ロードサイドで車を運転して働いている人にとっては、知名度が浸透している店だ。

 また、ラーメンのスタイルについては、「肉そば、肉ラーメンと呼び方はさまざまですが、薄切りの肉を敷き詰めて、600円から700円くらいで提供するラーメンは、3、4年前に流行ったスタイルで、それ自体は珍しくない。しかし、そこにあれほど大量の柚子おろしが乗っているのは、丸源ラーメンくらいしか見たことないですね」とのこと。

 外観については、「木材を使った格子状の装飾をしたラーメン店は案外あるが、イラスト付きとなると丸源ラーメンしか思い浮かびません。それと、にく次郎はのぼりもよく似ていますね」と、指摘した。

 
つまり中野氏の見立てでは、「丸源ラーメン」は有名ラーメンチェーンの一角であり、肉をスライスして敷き詰めたラーメンに大量の柚子おろしをトッピングするのは、「丸源ラーメン」と「にく次郎」しか思い当たらない非常に珍しいスタイルである。「丸源ラーメン」が、秀インターワンが主張しているような、ありふれたラーメン屋ではなく、極めて個性的であり、似たような店があるとすれば「にく次郎」しか存在しないと断言するのである。中野氏も「ラーメン業界は店の味を磨き合って発展してきた。ここまで酷似した店を出店したケースは、初めて見た」と驚きを隠さなかった。

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「丸源ラーメン」メニュー。

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「にく次郎」メニュー。「すた丼」みたいなのが加わるなど全く同じではないが、紛らわしい。

 焼鳥の「鳥貴族」に対して「鳥二郎」、ラーメンの「丸源ラーメン」に対して「にく次郎」、今はなくなってしまったがかつて存在していた学校風居酒屋の「6年4組」に対して「京都私立 河原町小学校」。秀インターワンは判明している限り、少なくとも3業態は、商標に引っかからないように店名だけは変えて、あとは間違い探しのクイズのレベルで酷似しているとしか表現のしようがない店を出店している。これはもうTTPを戦略的、確信的、常習的に行っているとしか、言いようがないではないか。

 これだけ酷似した店を、どうすれば3つも偶然に思いつくことができるのか。

 「たまたま似てしまった」では、シンクロニシティを信じるオカルトマニアでも信じないだろう。どういう超能力、霊視を使って、もやもやとした深層の集合的無意識から奇跡的に要素をピックアップ、組合わせて、3つもの超激似業態を偶然具現できたのか。秀インターワン社長の橋本秀恒社長は、自社ホームページ「企業情報」の「当社の方針」の項で「株式公開や飲食業以外の事業展開をめざしています」とうたっているのなら、「所用で終日出払っている」などとメディアの取材を全て断るのでなく、むしろ積極的に出てTTP疑惑を払拭するべく雄弁に説明する必要がある。

 インターネットの掲示板などに、秀インターワン関係者が、自社の有利になるような書き込み工作をあれこれ行っているという噂も絶えないが、自らメディアに出て「私はやってない。潔白だ」、「どこも真似していない。わが社のオリジナリティーだ」、「私はミスターTTPではない」と真正面から訴えればいい。

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「丸源ラーメン」制服。

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「にく次郎」制服。全体に黒っぽく前掛けをしてるのが同じだ。

 秀インターワンの社名からして、エイチ・アイ・エスの海外旅行ブランド「秀インター」と紛らわしい感があるが、どうしてこういう社名にしたのかも知りたいところだ。海外展開の第一歩として中国にも進出し、アジアを関東地区とともに「攻めの経営」で攻略して、20年後に売上高1000億円突破を目指しているというなら、悪知恵をつける弁護士、弁理士だけでなく、メディアともきっちりつきあうことが重要だ。
まさか、エイチ・アイ・エスの関連会社であるかのように見せかけて、中国など外国で、日本の繁盛業態の模造店舗をつくりまくろうとまでは考えてないと思いたいが。

 株式公開企業の責任は重い。事業の業績のみならず内容に関して、株主にしっかり説明しなければならない。もちろん消費者に対してもだ。予行演習としては絶好の機会が訪れている。秀インターワンは今、こうして話題になっている時こそが、メディアを通して瞬く間にスターダムに駆け上がり、時代の寵児となるチャンスなのだ。

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