クリエイト・レストランツHDによる、イートウォークとSFPダイニングの買収というビッグニュースが流れてきました。発表の翌朝にシンガポールから帰国した私はとても驚きました。「鳥良」などを展開するSFPダイニング、元サムカワフードプランニングはファンドが大株主であり外食企業に売却することが予測されていましたが、イートウォークの買収は青天の霹靂でした。

　代表の渡邉明氏は1992年、「タブローズ」開店とともに、長谷川実業（現グローバルダイニング）入社。同社総料理長に就任。2001年、レインズインターナショナル子会社のアートフードインターナショナル代表取締役社長に就任。2003年、イートウォークを創業。今は、「AWキッチン」「やさい家めい」など23店舗を展開しています。帝国データバンクによると2012年4月決算で売上高23億円、利益5千2百万円とまずまずの業績。

　渡邉氏自身は経営者と言うより、クリエイティブな料理人。彼が野菜に注目し、「やさい家めい」の多店舗展開が始まった頃、フードリンクニュースが取材した記事があります。その中で渡邉氏はこう語っています。

　「上場はないですね。会社の規模も大きくなって、社員に中期計画も話さなきゃいけないのでいろいろと考えています。店を増やしても、利益が変わらないんです。大変になるだけかな。5店の時の方が自分の時間がありました。従業員のモチベーションも、仲間意識も強かった。以前は売上高30億円をやることでした。今はある程度の利益を出せるだけでいいと思います。まずは会社を強くしたい。」（フードリンクニュース2009年5月27日）

　経営者というより、自分の時間を大切にするクリエイター。グローバルダイニングを経て、レインズの子会社の代表に移りましたが、僅か2年で退社し独立を選びました。そして10年後の今、再度、外食大手の傘下に入ることを決めた訳です。

　クリエイト・レストランツは三菱商事の子会社としてスタート。特徴は「マルチブランド・マルチロケーション戦略」。集客が見込める商業施設で、その立地に適したレストランを企画・開発するという手法で成長しています。2012年2月の連結決算は、売上高346億円、経常利益36億円という優良企業。今後は、Ｍ＆Ａと海外に注力する方針。シンガポールでは2011年12月に1号店を出店以来、既に5店舗。中国・東南アジアで、3年で30店舗、5年で100店舗という目標を掲げており、それに対応できる業態を試行錯誤しながら探し続けています。

　社長の岡本晴彦氏は三菱商事出身。フードリンクニュースでも取材しました。会長の後藤仁史氏は新橋で有名な焼肉「徳壽」の2代目。組織を知る方と外食の現場を知る方の二人三脚で成長してきました。

　「新橋で有名な焼肉『徳壽』の２代目、後藤仁史氏が当社の会長です。後藤氏とは、ＫＦＣの社長室で会いました。またもや大河原社長がキューピット役だったのです。後藤氏の第一印象は変わった人だなぁと思いましたが、彼のスピードある判断や行動力に魅力を感じました。その後、自分で経営する会社を作ろうとした時、一緒に経営をやっていくパートナーとして後藤氏に声をかけました。僕が一人でやると三菱商事に完全にコントロールされます。外側に軸足を置けば、独立性が保てます。そこで、徳壽にも出資してもらい、後藤氏と一緒にクリエイト・レストランツを立ち上げました。」（フードリンクニュース2009年9月25日）

　シンガポールで後藤会長と食事させていただきましたが、人にどんどん任せるタイプで社員を伸び伸び育てようというスタンス。シンガポールで街コンに店舗として参加いただいた同社　社員も、伸び伸び仕事をされていてクリエイト・レストランツという企業に魅力を感じました。

　渡邉氏もクリエイ・トレストランツの傘下に入ることにより、さらに飛躍できると思います。イートウォークは日本だけではなく、中国・東南アジアにも展開できるコンテンツを持っています。野菜はこれから有望なアジアのコンテンツです。クリエイト・レストランツにさらに期待がかかります。