お店を知る
今、最も勢いのある業態のひとつが大衆酒場といえよう。どこか懐かしくにぎやかな雰囲気の中、格安で楽しめることが繁盛する理由だ。そこにあって特に注目されているのが、プロダクトオブタイムグループ(東京・品川区 代表:干 倫義氏)が運営する「BEETLE」である。その3店舗目が5月17日、原宿にオープンした。聞けばこの新店は、これまでにない要素も盛り込んでいるという。常務取締役・胡桃澤 忍氏へのインタビューをもとに、店の紹介と同社のビジョンに迫った。
店は原宿駅から徒歩4分ほど。表参道と竹下通りの間の裏路地、「ラフォーレ原宿」の裏手にある。外には代表的なメニューがひと目でわかるオブジェや「めしと酒」の提灯など、同店おなじみの設えが。
前身は、2013年2月に誕生した同社初のオリジナル酒場業態「お値段以上の大衆酒場 大鶴見食堂」。その後、「BEETLE」の1号店は蒲田に2015年11月、そして昨年12月に2号店を五反田にオープンし、今回の3号店「大衆食堂 BEETLE」へと至る。これまでと大きく違うのは、時の如く"食堂"。昼夜の通し営業で定食が食べられる点だ。
「アジフライ定食」(税抜780円)。飯にも酒にも合う惣菜に、大盛無料のライスと味噌汁、サラダが付く。なおアジフライは単品の場合税抜330円だ。
1号店のオープン時より「めしと酒」としてうたってはいたが、「めし」の部分がよりクローズアップされているといえよう。そしてその理由には、原宿という街ならではの理由があった。
「伝統的な業態でいえば、飲める定食屋や、逆に定食を出す居酒屋、町中華などはありますよね。もともとそういった形でもやりたかったんですが、実現させたのがここです。原宿は安く食べられる定食の店が少なかったというのもありますし、ファッション系で働く方々はランチが遅め。そのため、昼からの通し営業で定食もつまみも楽しめるようにしたんです」(胡桃澤氏)
黄色い短冊に書くスタイルは大衆ならでは。定食は焼き物、揚げ物、カレー、煮込み、刺身と11種類が多様にそろう。
聞けばアパレルや美容、クリエイティブ系だけでなく、スーツ姿の層も全体の3割程度訪れるそう。また男女比は半々で、年齢は20代後半から。これまで出店してきた街とはやや異なるものの、だからこそ大衆食堂という業態がマッチしているといえよう。そして基本的なメニューは他店と変わりなく、定食が増えた分を一部減らしたが累計はほぼ一緒。
「ハムエッグ」(税抜230円)。定食の場合、ハムが2枚、目玉焼きが2つになって税抜630円だ。
「原宿はいろんなお客様がいらっしゃいます。ランチに使っていただくのはもちろん、夜は仕事帰りに夕食を召し上がっていただきラストでビール一杯とか。また軽くつまみながら飲んで、〆に定食というのもいいと思います。大衆酒場がそうであるように、ホっとくつろぎながら飲めて定食もある激安食堂っていまも存在していますよね。ある意味最強だなって思うんです。出店する街によりけりですが、大衆食堂タイプも今後増やしていきたいですね」(胡桃澤氏)
店内にはおなじみといえるコの字型カウンターのほか、テーブル席も。店の規模は13坪で、実は同社の物件中最もコンパクト。とはいえキッチンの収納棚を吊るなどの工夫を施し、計35席が用意されている
また、この物件は同社にとって間接的な縁がある。それは日本初のベルギービール専門店として知られ、同業態を数店舗展開する「ブラッセルズ」の原宿店がかつて存在した場所であることだ。プロダクトオブタイムグループといえば、ベルギービールレストラン「ヘイメル」ブランドも運営しているが、立ち上げのきっかけのひとつが「ブラッセルズ」であり、つまりは縁深い土地なのである。
ベルギービールの大びん(750ml)を特別に2種類用意(税抜1770円/1970円)するほか、同社「クラフトマン」ゆずりの樽生クラフトビールを入れ替わりで常時2種類提供している(税抜各500円)。
「ブラッセルズさんには今でもクラフトビールを中心としたお店でお世話になっていますし、なんといっても思い出の場所ですからね。歴史を残しておきたいという意味と、オマージュの想いを込めて、『モアネットブラウン』と『ボンヴー』は提供させていただいているんですよ。知っている方にだけ分かっていただければと思います」(胡桃澤氏)
既存の「BEETLE」の人気メニューも健在だ。「オニオンスライス(パクチーあり)」(360円)、「レバーペースト」(340円)、「タンサン」(150円)、「ホッピー」(240円)、「サッポロラガー赤星」(570円)※すべて税抜。
今後の展開を聞くと、実はこの7月に浦和で「大衆酒場 BEETLE」をオープン予定。そして別ブランドとしては、6月10日にクラフトビール業態の5店舗目として「Pizzeria e Craft Beer CRAFTSMAN」が、いわきにオープンしている。クラフトマンは福島県への進出や、既存の仙台クラフトマンとの東北ドミナント形成を含めた熱い意気込みがあるものの、「BEETLE」は開発のしやすさもあって非常に意欲的だ。
日本初の商業施設複合型クラブハウスとしてオープン(グランドオープンは7月15日)した「いわきFCパーク」。飲食店は、老舗を含め和洋多彩な業態がビルトインする。
「たとえば、弊社は『串カツ田中 西船橋店』をやってますし、千葉でも物件があればぜひ『BEETLE』をやりたいです。仙台でも探していますし、年内にあと4店舗とかオープンできたら理想ですね。もちろん長期的な視野も含めて展開していきたいです。また、現在いくつかの飲食店プロデュースもお願いされており、今後はプロデュース業にも力を入れてきたいですね」(胡桃澤氏)
「大衆食堂 BEETLE」のスタッフ。左より原田氏、上野氏、山口氏。
あくまで大衆酒場でありながら、クラフトビールや自家製シャルキュトリーといった革新的なメニューを取り入れられるのは「BEETLE」ならではの強みである。胡桃澤氏は「次世代大衆酒場のパイオニアといえば『BEETLE』と言われるように。そして何よりも、街に根付いて何世代にもわたって利用いただき、今の古典酒場のように何十年も愛されるようにがんばりたいです」と謙遜するが、俯瞰してみるとすでに模倣したような後追い酒場はちらほらみかける。トップランナーとして、今後の革命や拡大に注目したい。
■大衆食堂 BEETLE
住所:東京都渋谷区神宮前1-10-23 原宿ふらっとビル 1F
TEL. 050-5593-7429
営業時間:11:30~23:30
定休日:なし
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