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取材・執筆 : 西尾明彦 2016年12月15日
高感度な飲食店が集まる大阪・福島に、熟成日本酒とのマッチングが楽しめる焼き鳥店「日本酒と焼鳥 百(momo) 福島店」が9月16日にオープンした。店内に−5度の氷温熟成庫と、18度の保冷庫と、ふたつの温度帯の日本酒保冷庫を完備。現在流通している酒だけでなく、飲み頃まで熟成させた日本酒が、鮮度の良い焼き鳥とともに楽しめる。
日本酒保冷庫は氷温貯蔵、低温貯蔵合わせて最大1000本を保存可能。現在その数600本近く。
瀟洒な割烹のような佇まい。店頭には杉玉が飾られている。
「これは寝かせると伸びるだろうな、というものは、数年間熟成させます。人気銘柄のレアものも、飲み頃はまだ先なので寝かせています」と、SSI認定利き酒師でもある、店主の百合岡誠志朗氏。
-5度の氷温庫では生酒などフレッシュなタイプから、純米酒、本醸造、普通酒まで、長期熟成に向く日本酒を保存。18度で常温保存するのは、短期熟成向きのタイプ。あえて開栓してから放置、追熟で味の乗った状態の日本酒を提供する。
日本酒は1銘柄につき3本購入する。出荷すぐ、3年後、5年間後と、時を経た熟成による味わいの違いを楽しめる。
メニューには、日本酒が常時50種類、グラス600円から。現行のものに混じり、BY(酒造年度)違いの熟成酒が多数ラインナップされている。自家熟成酒は、その時しか飲めない一期一会(※価格はすべて税抜き価格)。
H17BY(2005酒造年度)「小笹屋 竹鶴 生もと純米原酒」瓶貯蔵・低温熟成を、更に氷温熟成。
合わせる料理は、朝挽きの但馬鶏を店内で毎日串打ちした焼き鳥。火加減の見極めが難しい、備長炭の強火で直焼きして、1本ずつ提供。1本210円からとリーズナブル。
「最近は日本酒が豊富な焼き鳥店もありますが、日本酒と焼き鳥の相性は考えず、香り立つ大吟醸タイプを置く店が多い。味の濃い焼き鳥なら、食中酒タイプの熟成酒の方がマッチします」。
日本酒と料理のマッチングも楽しめる。
百合岡氏がお薦めするのは、脂の乗った部位の塩焼きなら、柔らかい旨みあるタイプを常温で。肝のタレ焼きには、長期熟成酒のお燗。お薦めのマッチングのひとつが、つくね串に「天遊琳 特別純米14BY」
「『店主お勧めの7本セット』(1380円)を注文して、1串ごとに違う銘柄を飲まれる方もおられますね」。
日本酒と料理のマッチングをより幅広く楽しんでもらうために、旬の食材を使った一品料理も豊富。「レバーフォアグラのパテ」(880円)など、和洋問わず酒に合う料理揃い。
「鶏ガラスープのおでん」(680円)
ワインは「小布施ワイナリー」(長野)、ウイスキーは「岩井トラディション」など、日本酒以外も粋なセレクト。
「レモンサワー」(480円)。シロップの代わりに「杉錦」を醸す杉井酒造(静岡)の
「純米本みりん 飛鳥山」を使用している。
エントランスには、日本酒の升をイメージしたオブジェ。
「元々ワインも好きで、同じように、熟成によって味の変化が楽しめる日本酒の熟成酒にもハマりました。先日は、『竹雀』(岐阜)の蔵見学に、その前は兵庫・三木市の特A地区の山田錦の稲刈りに参加してきました」。
今や店休日には酒蔵を回り、時には休暇を取って酒造りの手伝いもするほどに。蔵見学をする飲食人は多いが、酒蔵で仕込みや手伝いまでする人はさすがに少数派。
「今後は蔵元を招いて日本酒の会や、洋菓子など異ジャンルの料理とお酒のペアリングのイベント、日本酒と料理、音楽を絡めたイベントなどもやっていきたいですね」。
アイランドキッチン仕様の焼き場を取り囲むような、コの字型の白木のカウンター。
店内奥には、接待にも使える落ち着いた4名個室が3室。連結で最大12名まで可。カウンターと合わせて28席。
雰囲気は高級店そのものだが、客単価は5000円程度。客層は界隈の勤め人に加え、近隣住人も多い。
一流の料亭や割烹でも、料理に見合う日本酒が飲める店はまだまだ稀。日本酒バーや立ち飲みの場合は、逆に料理が難しい。大衆的な焼鳥を、熟成日本酒に合う料理として提供する「日本酒と焼鳥 百」は、他では味わえないマッチングで、日本酒ファンを魅了してくれそうだ。
■日本酒と焼鳥 百(momo) 福島店
住所:大阪府大阪市福島区福島1-6-10 パールハイツ1F
TEL.06-6454-3339
営業時間:17:00~23:00
定休日:不定休
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