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お店を知る

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2016年9月08日(木)14:11

看板もエントランスもなし!五感で楽しむ演出とともに、その日の朝とれた魚介を提供する「貝と魚と炉ばたのバンビ」(東京・北千住/炉ばた焼き)

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取材・執筆 : 関川隆 2016年9月8日

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 最近、昔ながらの昭和な雰囲気の飲み屋街の人気が高まっている。北千住の飲み屋横丁も、狭い路地に老舗の居酒屋や赤提灯の焼き鳥屋、立ち飲み屋などが並び、ブラブラと歩いているだけでも楽しい場所だ。そんな飲み屋横町の一画に、まさに隠れ家と呼ぶのがふさわしいお店が7月にオープンした。株式会社ちゃらり(東京都北区赤羽南)が運営する「貝と魚と炉ばたのバンビ」だ。

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カウンターに新鮮な魚貝がずらりと並び、目の前で焼いてくれる炉ばた焼きの店

 「北千住に最初の店を出したのは10年前。当時、乗降客が多かった割に飲食店が少なくて、家賃も手頃でした。近年、駅前に飲食ビルができ、チェーンの飲食店も増え、一時期はそちらにお客様が移りました。でも最近、飲み屋横丁などの老舗居酒屋や個人店にお客様が戻ってきています」と語るのは、株式会社ちゃらり代表取締役の新井裕一さん。

 そんな北千住の駅から徒歩1〜2分と、抜群のロケーションにあるのが「貝と魚と炉ばたのバンビ」だ。しかし住所だけを頼りに、このお店にたどりつける人は少ないだろう。店が入っているのは、狭い路地裏にある古い雑居ビル。そこにはお店の看板もエントランスもなく、木の箱に入ったインターフォンがポツンとあるだけなのだ。

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まずはこのインターフォンを見つけるところから

 このインターフォンで来店をつげると、お店のスタッフが番号を教えてくれる。そして階段で3階まで登るのだが、そこにも何の変哲もないビルのドアがあるだけ。お店らしい雰囲気はない。思い切ってドアを開けると、番号が書かれた障子が並んでいる。自分の番号の障子を恐る恐る開けると、突然、炉ばたを囲んでお客様がお酒や料理を楽しんでいる風景が目の前に広がるのだ。

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ドアを開けると、このような数字が書かれた障子が目の前に

 「このビルはもともとわかりづらい場所にあって、どうせならそのマイナスをプラスにできないか。いっそのこと、お店を探すところからお客様に楽しんでもらってはどうだろう。そんな考えから生まれた演出です。最初はとまどったり、不安になる人もいるかもしれません(笑)」

 株式会社ちゃらりは、赤羽や北千住、池袋、九段下などに炭火串焼や牡蛎と鮮魚をメインとした居酒屋など6店を展開してきた。「貝と魚と炉ばたのバンビ」は7店目となり、同社が手がけるものとしては、もっとも小さなお店だという。

 「炉ばたは前々からやりたかったんです。以前、仙台にある炉ばた発祥の店『郷土酒亭 元祖 炉ばた』にいった時、炉ばたを囲んだお客様たちが和気あいあいと料理やお酒、会話を楽しんでいる様子がすごくいいと思いました。最近は、東京でも個室の居酒屋が増えましたが、居酒屋の基本はやっぱり見知らぬ人同士が楽しい時間を共有できるところにあると思うんです」

 お客様に非日常的なワクワク感を楽しんでほしいとの思いは、料理の演出にも現れている。例えば、バンビ三大名物のひとつ「藁薫るスモークカルパッチョ」。藁焼きのけむりをガラスの器のなかに閉じ込めた状態で席まで運び、お客様の目の前で器を開ける。その瞬間、けむりとともに薫りが広がり、目と鼻と舌を楽しませてくれる。この店一番の人気料理だ。

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その場で燻製をつくる演出が粋な「藁薫るスモークカルパッチョ」(1,380円、以下すべて税別価格)

 またカウンターから見える位置に、じゃがいもを一瞬でカットするアメリカ製のマシンが置かれている。お客様が見ている前で生のじゃがいもをカットし、すぐに揚げる「できたて生ポテトフライ」(530円)は、生ポテトならではのホクホクしっとりとした食感が好評だ。

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生のじゃがいもを、ところてんのように裁断するガッチャンコマシーン
 
 地元のおばちゃんが白身魚を練ってつくっているタネに、紫蘇チーズをいれたり、しいたけでくるんだりした自家製さつま揚げも人気だという。だが何よりもこの店で味わうべきは、新鮮さが売りの刺身だ。三浦漁港でその日の朝、漁師がとってきた魚介を、市場を通さずに直接、店に送ってもらっているという。

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その日の朝とれた新鮮な魚介類がずらりと並ぶ

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鮮度が命の貝の刺身盛(3点1,680円)は自慢の一品

 またお客様のほとんどが頼むというのが、生抹茶割りや抹茶ビールだ。スタッフがお客様の目の前で抹茶を泡立て、ビールなどとミックしてつくってくれる。抹茶の香りと風味が、意外と魚介料理に合う。ちなみに抹茶の入れ方は、明治時代に創業した老舗、川本屋茶舗の社長からスタッフがじきじきに教わったという。カクテル類も豊富にそろえているが、とくに女性に人気があるのが自家製イチゴソースのシャーベットでつくるシャリキーン生イチゴだ。

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川本屋茶舗の風味豊かな抹茶をつかった生抹茶割り(680円)

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シャリシャリした食感が魅力のシャリキーン生イチゴ(480円) 

 「僕は20代で独立してから、ずっと自分と同じ年代のお客様をターゲットにしてきました。だからこの店のターゲットは40代。ただ女性はかなり意識しています。炉ばたというと和風の渋い名前が多いけど、あえてバンビというかわいらしい店名をつけたのもそのためです。うちの一番の売りは新鮮な魚貝ですが、日本酒や焼酎だけでなく、ぜひ白ワインやカクテルと一緒に楽しんでいただきたいです」

 入り口をあえてわかりづらくしているため、今のところお客様は、ネットで見つけたり、ちゃらりが運営する他の店舗で配っているショップカードで知って訪れる人が中心。飛び込み客はまずいない。リピーターとなってくれるお店のファンをあせらず、じっくり育てていくつもりだという。

 「まずは、この店ならではの驚きや発見、感動をお客様に提供したい。でも同じことをずっとやっていても飽きられてしまう。リピーターには日常的に気軽なお店としても使っていただきたい。そういった意味では、今後はスピーディーに出せるおつまみを増やしたり、ときには抹茶も厨房で立てるなど、お客様が一番心地よくこのお店にいられるよう、臨機応変なサービスをしていきたいと考えています」

 最後に、株式会社ちゃらりとしての今後の店舗展開について聞いた。

 「うちはチェーン化したり、多店舗展開する気はありません。ただ長年、働いてくれている社員が次のステップとして活躍できる場は用意してあげたい。実はバンビをオープンしたのもそのためです。ここの店長はうちで10年近く働いてくれていますが、ゆくゆくはこのお店のオーナーになってもらいたい。前々から雇われ店長ではなく、店主がやっているお店は強いと感じています。うちの社員がやがてどんどん店主になって、ともに刺激しあったり、助けあったりしながら、みんなでお客様に喜んでいただけるお店をつくっていけるといいですね」

■ 株式会社ちゃらり
住所:東京都北区赤羽南2-10-15 ニュー赤羽ハイツ605
TEL:03-3903-7559
www.charari.co.jp

■ 貝と魚と炉ばたのバンビ
住所:東京都足立区千住2-62富士ビル3F
TEL:03-3879-3559
営業時間:17:00〜24:00
定休日:日曜日
 




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