近年人気の日本酒を手軽に飲んでほしいと「にほんしゅ かのう」が大阪・天王寺にオープンした。入場料を払えば"原価"で日本酒が楽しめる。最も手頃な「梅乃宿 辛 純米吟醸」は、通常価格380円が原価だと90円。「獺祭　純米大吟醸50」も原価なら290円。日本酒5銘柄が飲み放題になるコースも3500円から用意した。あくまで安売りではなく、日本酒に触れ、価値を感じてもらうことを大切にしている。

飲み放題付きのコースは3500円から6種類。一番安いコースから日本酒5銘柄が飲み放題になる。「獺祭」を含め、すべての日本酒が飲み放題の「獺祭コース」は5500円（※「獺祭」は数量限定）。

　日本酒を何種類も飲みたいなら、入場料1180円（オープン記念で880円）で飲むのがお得。日本酒にこだわらず居酒屋使いをするなら、お通し（380円で）通常価格で注文もできる選択制。

　「僕自身お酒が大好き。日本酒を外で飲むと、1合（180ml）や、升で提供だったり1杯の量が多い。これだと、あまり種類は飲めないですよね。1杯が90mlなら4、5種類は飲めます。飲み比べを楽しんでいただきたいですね」と、株式会社DIC代表取締役の加納明氏。

色や香りも楽しんでほしいから、日本酒はワイングラスで提供する。

壁面のディスプレイ。日本酒は約30種類。「獺祭」「東洋美人」「作（ZAKU）」などの人気銘柄から、「笑四季」「浅間山」「片野桜」と、通好みの銘柄も豊富に揃う。

　「日本酒は詳しいお客様も多いので、勉強しながら40～50種類くらいまで増やしていきたいですね。ただ、日本酒だけに特化するのではなく、居酒屋として料理も大事にしています。腕の良い料理人に実力を発揮して貰いたいので、原価をかけても美味しいものを提供することを心がけています」。

サプライズを大切にしているという「お造り5種盛り合わせ」（1680円）

本格的な酒肴も人気。「鮭とば」（580円）、「へしこ」（680円）、「焼き味噌」（480円）。

既成品は使わず一から手作り。「青海苔出汁豆腐」（580円）

　30、40代のサラリーマンが中心で、客単価は3500円。日本酒を飲まないような20代も多く、客層は幅広い。集客ツールに頼るのではなく、リピーター獲得を重視している。料理の質もその一つで、原価率は平均35％。

店舗の外観。天王寺の有名飲食ビル、新宿ごちそうビル（通称ごちビル）3階。

　「日本酒に特化したお店は裏なんばや梅田に多いですが、僕はあまのじゃくなので天王寺を選びました。ニーズを創り出せれば格好いいかなと（笑）」。

　「今後の目標として、具体的に何年後に何店舗数というのはありませんが、会社としては『成長』以外の選択肢はないと考えています。できれば、年内にもう1店出店したいですね。この物件なら何ができるか、立地や今いるスタッフに合わせてできるお店、やりたいお店を決めていこうと思います」。

ウッディでシンプルカジュアルな店内。席数は48席。

　「人が活きるために、その人がどのレベルにあるかをフラットに見極める事が重要だと考えています。ちょっと上のレベルにチャレンジして、成長していってほしい。今いるメンバーで展開するには、どうすればいいか。サッカー・プレミアリーグのレスターのような、今ある戦力で最大の力を発揮できるよう努力しています」。

 

　「これまでの経験から、『企業文化』、『道徳心』というものは、後付けできない。だからこそ精神的なものを大事にしています。その一つが感謝の気持ちを伝えること。月1回社員と僕だけで食事会を開き、一人ひとりにありがとうと伝えています。また、店長や社員からスタッフに感謝の思いを伝えるために、月1回営業を休みにして飲み会を開き、ありがとうと伝えることを創業時から続けています」。

株式会社DIC代表取締役の加納明氏。「会社が大きくなれば、ポジションは増えますが、競争もおきます。やり甲斐や居場所を創造していく事が私の役割だと考えています。ですが、将来の夢や人生設計は人によって様々です。DICを離れる日が来ても、独立できたり、違う業界や、同業他社で通用する職業人になってもらいたいので、DICで技術や地力を積み重ね、自分の人生を創造していってほしいと、社員に伝えています。なるべく離れてほしくないですけどね（笑）」。

　日本酒はコアなファンが多いゆえ、専門店志向になりがちで、間口が広がりにくい。初心者にも広がってこそ、息の長いブームになる。加納氏のフラットな発想の「にほんしゅ かのう」は、幅広い層から支持を集めそうだ。

■株式会社DIC

住所：大阪府大阪市北区太融寺町3-30 903

TEL.06-6312-3373

■にほんしゅ かのう 天王寺店

住所：大阪府大阪市阿倍野区阿倍野筋1-1-61 3F

TEL.06-6623-3670