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お店を知る

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2015年6月24日(水)10:02

国分寺の雄、猿屋一家が商業施設初出店。 ユニークなつけ蕎麦を提供する「蕎麦 酔処 猿夢来庵(さむらいあん)」 (東京・神保町/蕎麦居酒屋)

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取材・執筆 : 石村紀子 2015年6月15日執筆

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 神保町駅から徒歩2分。5月15日にオープンした商業施設「神保町テラススクエア」の2Fに、特徴のある"つけ蕎麦"を提供する「蕎麦 酔処 猿夢来庵(さむらいあん)」が出店を果たした。経営するのは国分寺や花小金井でドミナント展開(現在6店舗)している株式会社猿屋一家(東京都国分寺市 代表取締役社長 藤野裕章氏)。この店は7店舗目。都心への出店は今回が初となる。

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高い天井が開放的な店内。オープンキッチンが眺められる桜の木のカウンターは14席。中央にある換気扇を囲むように貼られたタイルは「さいとう工房」に特注したもの。椅子やテーブルは世界に誇る職人集団「桜製作所」のものだ。

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店内奥に描かれた迫力のあるウォールペインティングは京都絵描きユニット「だるま商店」の手によるもの。オープニングセレモニーの際、下絵なしにライブで一気に描いたという。能舞台をイメージしたこのスペースはテーブル席となっている。

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(左から)株式会社猿屋一家 代表取締役 藤野裕章氏、「猿夢来庵」料理長 高崎政文氏、小池健一氏

 「今回の出店のきっかけは、"神保町にできる新しいビルで、住友不動産さんが蕎麦居酒屋の業態で出店できる店を探しているが、どうか?"と知り合いから声をかけられたことでした。蕎麦は初めての業態でしたが、可能性を感じたし、オープンまで準備期間が1年あったので挑戦することに決めました。都心で、しかもこうした大きな商業施設に出店するのは初めてだったので、戸惑うことも多かったですが、いろいろ勉強になりました」(藤野氏)

 同社の既存店は、看板がなかったり、入り口が茶室のように小さかったりと、一風変わった店作りが特徴。「そのほうが入店するまでどんな店かわからなくてドキドキするでしょ?(笑)でも、入ってみるとものすごくアットホームでくつろげる。そんな振れ幅をわざと大きくする演出を大切にしているんです。でも、同じことはここでは消防法やバリアフリーの問題があって無理でした。商業施設ならではの店づくりを、今回の出店で学びましたね」(藤野氏)

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ランチメニューは蕎麦がメイン。蕎麦とごはんのセットメニューもある。

 お品書きを外に張り出すことはしていないが、ランチメニューだけは大きな立て看板で案内している。「既存店ではやったことがないので、"看板を作る"ということ自体、最初は頭にありませんでした。開店してから、こうした都心のランチタイムでは、何がいくらで食べられるか、一目でわかることが大切なんだと気づいて作ったんです(笑)」(藤野氏)

 現在、ランチでの提供は平均70食。"まずは想定通り"とのこと。「ディナータイムはまだフル稼働とはいかないですね。でも、開店当初に余裕があってよかったと思っています。初めての都心、商業施設、蕎麦業態と、初めて尽くしの環境の中、オペレーションに磨きをかけたり、メニューを吟味したりといろいろとトライアルできましたから」(藤野氏)同ビルの4階以上はオフィスフロアになっているが、まだほとんど入居していない。入居するにつれて来店者数は右肩上がりに増加するだろう。

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心地よい風が吹くテラス席は6人掛けが2卓と立ち飲み用テーブルが2卓。これからの季節にはもってこいのスペースだ。

 同店の蕎麦は、太めの固ゆで麺と、甘辛く煮た牛しぐれ煮が入ったつけ汁が特徴。ラー油が効いているパンチのある味は港屋インスパイア系ではあるが、独特のこだわりがある。

 「流行のスタイルをよりブラッシュアップしてオリジナルのつけ蕎麦に仕上げています。正統派というよりジャンクな味ですが、"一見ジャンクでもベースは本格的な和食で、職人がきちんと作っている蕎麦である"、というスタンスは貫いています。出汁も羅臼昆布、鰹節、宗太鰹節、鯖節を使って、毎日ひいているんですよ。実は、蕎麦業態に取り組むことが決まった当初から、海外も視野に入れて考えていまして。日本の食材の素晴らしさ、本物の"出汁"の味を世界に向けても発信できるよう、こだわり抜いて作っています」(藤野氏)

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看板商品の「猿夢来肉汁つけ蕎麦」(1000円、大盛:1300円、〆サイズ:800円、いずれも税抜。以下同)。牛肉はアメリカ産を使用。

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普通盛で茹で上がり280g、大盛では420gもあるボリューミーな麺は、つけ汁にしっかり絡むよう、あえて太めのオリジナル麺を特注。現在は製麺所に発注しているが、多店舗展開した暁には自家製麺に取り組む予定だという。

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蕎麦にはなんと5種類もの薬味(右から天かす、魚粉(かつお)、揚げ蕎麦の実、粉末桜海老、揚げ玉ねぎ)が無料で用意されており、味変は思いのまま。ランチタイムにも提供される太っ腹ぶり!

 味の総監督を任されているのは、高崎政文氏。藤野氏からの厚い信頼を得て、料理長として迎えられた。国内の和食店を始め、NYやドーハなどにグローバル展開していた「MEGU Modern Japanese Cuisine」のモスクワ店で腕を振るった経験をもち、蕎麦にも造詣が深い人物である。

 「日本のソウルフードである蕎麦をぜひ海外に紹介したい。あちらではラーメンが変わらず人気ですが、蕎麦はまだあまり知られていません。モスクワ時代の経験を生かして、海外への展開を積極的に考えていきたいですね。第一歩はアジア圏からと考えています」(高崎氏)夜は蕎麦以外にも、「おばんざい」や「珍味」を始め、お酒との相性がいい料理が目白押し。どれもきちんと出汁をきかせた本格的な"和食"となっている。

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注文が入ってから作る「蕎麦出汁仕立ての出汁巻き玉子」(700円)。シンプルな料理だからこそ出汁の上質さが引き立つ。熱々ふわふわな食感がたまらない。

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「土鍋仕立ての肉じゃが」(800円)。出汁の効いた職人の手仕事による肉じゃがながら、どこか懐かしさを感じる味。

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肉質が自慢の大山鶏を使った焼き鳥は9種類。もも、葱間、ささみ、手羽、砂肝、レバー、せせり、ぼんじり(各250円)、手ごねつくね(700円)。

 客単価は平均5000~5500円とこの界隈の相場としては高め。役職を持っているサラリーマンがターゲットだという。質を重視し、落ち着いて美味い料理と酒を楽しみたい層だ。

 ドリンクは、日本酒はもちろんビール、焼酎、ワインなど一通り揃っているが、どれも"和食に合うもの"を基準にセレクト。ビールではこだわりをもった厳選店のみでしか提供されていない無濾過の樽生ビール「白穂乃香」や定番の赤星が、ワインは国産ものを数多く揃えている。「オリジナルドリンクも人気です。おすすめは塩レモンサワー。既存店で提供していたオリジナルですが、非常に美味しいのでこちらでも提供することにしたんです。蕎麦湯や蕎麦茶で割ったものなど蕎麦屋らしいお飲み物もご用意させていただいています」(藤野氏)

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ボトルキープの「金宮焼酎」(3800円)では、キープした人の名前を入れたラベルを貼ってもらえる。テンションが上がる心憎いサービスだ。

 「メニューはこれからどんどんブラッシュアップしていきますよ。夏はサラダ蕎麦、冬は鍋焼き蕎麦など、季節ごとに変えていきたいと考えています。ほか、テラス席を使ってのイベントやパッケージプランも企画したいですね。浴衣ナイトとか、竹酒で鯛の塩釜を愉しむ会などアイデアは無限にあります」(高崎氏)

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カウンター前には食器がずらり。こだわり抜いた器たちが目を楽しませてくれる。客が自分で好みの器を選ぶこともできるそうだ。

 新しい都心の大型商業施設の中に、そうした場所での出店実績がない小規模な飲食店がテナントとして入るのは珍しいことだろう。デベロッパーにとって賭けとなるからだ。だがまだ知られていない名店を発掘し、いち早く紹介することでこそ、そのビルの注目度も価値も上がるというもの。知名度のある店をはめこんでばかりいては個性がない。

 「郊外で4~5店舗のベンチャーを発掘して都心のビルに入れるというのは、なかなか勇気のいることだと思います。このビルはチャレンジャーですよね(笑)。でも郊外にはまだおもしろい店ってたくさんあると思うんです。ユニークな発想やサービスでお客様を楽しませるソフト力に長けているところが。テナントに個人商店のパワーを入れることで、都心のビルもより面白くなっていくのではないでしょうか。当社にも、次のオファーがいくつか来ていますよ。こういう商業施設に出店すると展開が早いですね(笑)。今はまだ"猿夢来庵とは何ぞや?"を固める時期なので、出店に関しては明確な回答は出していません。でも、海外展開も含め、積極的にチャレンジしていきたいと思っています」(藤野氏)

 織田信長に発掘され天下人にまで登りつめた"猿"こと豊臣秀吉のように、猿屋一家の躍進ぶりはこれからますます加速していくに違いない。蕎麦業界で、商業施設で、さらには海外で、旋風を巻き起こしそうな予感のする店である。

■蕎麦 酔処 猿夢来庵(さむらいあん)
住所:東京都千代田区神田錦町3-22 神保町テラススクエア2F
TEL:03-5244-5222

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