わずか7坪の立ち飲み店ながら、25人が最大3回転と、「地酒蔵大阪 大正店」が3月25日のオープン早々人気店となっている。同店は日本酒1杯（90cc）が150円からで人気の大阪難波の「地酒蔵大阪」の2号店にあたる。オープンから1週間で日本酒50升を売り切った。

日本酒は150円から、常時20種類が揃う。

　「弊社の業態が可能なのは、約40蔵の蔵元と、長崎芳寿豚の生産者にバックアップしていただけているからです。普通ならありえない、ありがたいこと」と、同店を運営する地酒蔵フーズ株式会社の2人の経営者は口を揃える。

　同社は、それぞれ異なる得意分野を持つ2人の経営者による共同経営会社。7年の付き合いで、お互いの存在は「メリットしかない」。

店舗ファサード。店舗施工は西条氏の担当。元イタリアンの居抜き店舗を200万円で内外装をフル改装した。価格に転嫁しないために、時にはスタッフ総出で作業し、出店費用は可能な限り抑えた。垂れ幕の文字は、両オーナーと親交のある若の里関（田子ノ浦部屋）によるもの。

距離感が近く、見知らぬ人同士でもすぐ仲良くなるのは立ち飲み店ならでは。60cm角のテーブルを最大9人でシェアすることも。「狭い立ち飲み店ですが、新たにお客様が来たら、お客様が奥に詰めて場所を空けてもらったり、ありがたいことに、お客様に気遣っていただいています」。

　日本酒1杯150円からの立ち飲み店ながら、滞在時間は平均1時間で客単価は2000円。価格が安いため、値段を気にせず何杯も飲むお客様も多い。

　「日本酒のすそ野をもっと広げていくことが僕の使命。不当に値引きしているわけではなく、日本酒150円でもきちんと利益は出ていますし、適正価格だと思っています。日本酒の価値を下げることなく、安く、おいしく、楽しんでいただきたいですね」と、地酒蔵フーズ株式会社 代表取締役の西条氏。

代表取締役の西条和秀氏。店舗施工と酒の仕入れ、料理と日本酒のマリアージュを担当する。日本酒の蔵元約40蔵と直取引する酒販店、地酒蔵大阪と、店舗の内外装、設計施工を請け負う有限会社興和プロジェクトの代表取締役でもある。

　卸問屋の過剰在庫を数百本単位で現金一括購入するなど、自店2店舗だけで月に百升単位で日本酒を売り切る販売力を背景に、仕入れ力も増してきているという。

90cc150円の銘柄が常時1種類。ソフトドリンクより安い。

仕入れ値の高い国産クラフトビールも600円から。生ビールは「マスターズドリーム」（500円）。立ち飲み店では日本唯一の取り扱いとか。

　「立地に合わせて業態を考えました。素材と流通は押さえているので、あとはいかに魅力的な商品に落とし込むかでした。長崎芳寿豚の卸売では、どうしてもヒレ（フィレ）やロースなど人気の部位に注文が集中します。それ以外の余りがちな部位をいかにうまく活用して魅力的な商品をつくるか。そうして生まれたのが長崎芳寿豚のチャーシューです。PB化して、産地と協力して現地で加工までできるようにしたいですね」と取締役副社長の町田氏。

取締役副社長の町田 透氏。食材仕入れや人材教育、店舗オペレーションを担当する。自身の有限会社エムエーツーユニオンでは「長崎芳寿豚と地場野菜 なみなみ」「長崎芳寿豚と地場野菜 くんち」の飲食店2店舗を運営。長崎芳寿豚の卸売も行っている。

　「長崎芳寿豚を取り扱うようになって11年になりますが、おいしいことに加えて、当時はまだあまり流通量が少なく、有名銘柄豚と比べて割安でした。ブランド力のある有名銘柄を高値で仕入れるより、ブランディング次第で高付加価値を付けられることに魅力を感じました」。

大正店の看板料理はレアでも食べられる唯一の豚、長崎芳寿豚の炭焼き吊るしチャーシュー。上バラと肩ロース、肩ウデと3種類の部位が食べ比べられる。

レアで食べられる唯一の豚、長崎芳寿豚を使用しているので、チャーシューはレア気味で柔らかくジューシー。「肩ロースチャーシュー薄切り」（580円）

「肩ロース　厚焼き」（680円）。辛子・自家製タルタルソース・ピリ辛味噌で。

立ち飲み店ではシメがない店も多いが、立ち飲み価格でシメまで充実。「切り落としチャーシュー丼（大）」（380円）

　長崎芳寿豚の卸売を始めて6年、卸先は100社以上になる。あまりの人気で供給が追い付かず、現在ご新規の受け付けは停止している状態。長年かけて築いた信頼関係で、品薄のなか、商品を回してもらっているという。

日替わりの地場野菜メニューも充実。冷蔵庫には300本近いストックが眠っている。

　常時スタッフ3名で最大25名を相手に切り盛りする。スタッフ採用の基準は独立願望があるかどうか。

　「会社として独立支援制度（のれん分け）を設けており、仕組みを使って独立してもらえれば。アルバイトも、社員を目指すような人であってほしいですね」と町田氏。創業2年で、アルバイトから社員登用もすでに数人いる。

90cc200円の銘柄が5種類。5種類飲んでも1000円。

　「5月には、2店舗隣に串カツとドテ焼きメインの立ち飲み店をもう1店出店します。立ち飲みだからとクオリティは下げない。最高の食材を立ち飲み価格で提供します。真似する店が出てきたら大歓迎です」と西条氏。

90cc200円より、「甲子正宗 磨き八割 純米酒」。 

 価格破壊ともいえるリーズナブルさで日本酒を提供する地酒蔵フーズ株式会社。日本酒と食材、両方の生産者の協力があってこそ可能な、高品質・低価格業態で店舗展開を始めた同社の活躍は、日本酒ファンの拡大に一役買ってくれそうだ。

■地酒蔵フーズ株式会社

住所：大阪府大阪市浪速区難波中2-8-80

TEL. 06-6630-7039

■地酒蔵大阪 大正店

住所：大阪府大阪市大正区三軒家西1-6-6 JR大正駅高架下

TEL. 06-6551-5151