兵庫県産食材に徹底的にこだわった「居酒屋ひょうご食農ふぁん」が2015年2月17日に神戸・三宮にオープンした。運営するのは株式会社ING FACTORY。「農業高校レストラン」に次ぐ2店舗目は"地産地消"をより推し進めた "旬産旬消"をキーワードに、兵庫県産食材のアンテナショップとしての役割を持つ。

兵庫食材尽くしのコース料理も、2500円、3000円、3500円と居酒屋価格で用意している。

　「兵庫県は太平洋と日本海に面しており、海の幸、山の幸が両方とも豊富。まだまだ知られていない食材がたくさんあるので、どんどん紹介していきたいですね。若手で頑張っている農家も多いので、もっと光が当たるように」と、自身も兵庫県立農業高校（県農）OBである株式会社ING FACTORY 代表取締役の北原拓将氏。

　株式会社オクノ 代表取締役の奥野克哉氏が同じ県農の出身ということもあり意気投合、コラボレーションから生まれた店舗だという。同社はTKGチャンピオンシップ（卵かけご飯選手権）3年連続優勝の「加古川農家食堂」を運営、「オクノの卵」でフード・アクション・ニッポン・アワードを2度受賞している。

県農の先輩である株式会社オクノ代表取締役の奥野克哉氏。

「小池農園さんの神戸米で食べる日本一のオクノ卵でいかなごくぎ煮TKG」（450円）

　2013年4月にオープンした1号店「農業高校レストラン」は、名前通り、兵庫県立農業高校のバックアップを受けて、同校卒業生の農家と提携することで生まれた業態。ただ、県農つながりでは限界もある。より広く自分が住んでいる地域、兵庫県の食材を発信したい、という想いが強くなり、1人では無理なので力を借りて新業態を立ち上げた。

今や人気店、県農のアンテナショップ「農業高校レストラン」の外観。

　「同業者に対してのモデル店舗でもあります。みんなで兵庫県産食材を拡げていきたい。今は仕入れ量も限られているので、仕入れ原価＋輸送費で原価率がかかっていますが、賛同してくれる店舗が増えれば、仕入れコストも、もっと下げられるかもしれない」。

　「地元の食材を発信する店の仲間を、各都道府県で募りたいと考えています。たとえば、奈良食農ふぁん、大阪食農ふぁんといった具合に。仕組み作りは協力します」。

朝どれ農家直送の野菜が日替わりで8品以上入った「ひょうご県旬産旬消サラダ」（650円）

　「農家の方に潤ってもらわないと。我々は農家の方ありきの商売なので、食材の仕入れもできない。農家の方にとっても、卸先がJAだけよりは、我々とつながって、他に売り先を持っている方が良いのではないでしょうか」。

「播州名物ひねぽん」（400円）

「ヤスオ農園 王様トマトの丸ごとおでん」（480円）

　料理は、家でも作って食べてほしいからと、創作を加えず、家庭で再現できることを重視している。

場所は三宮駅や東門街界隈の喧騒を超えた、生田神社裏エリア。各線三宮駅から徒歩5分ながら、隠れ家的な立地にある。

テーブル席、カウンター合わせて30席。最大30名収容の離れもある。

　オープンから1カ月が過ぎた。「場所柄、目的来店が多いですが、手応えはあります」。

　女性客が多いかと思いきや、こだわりのある食通や、日本酒好き、仕入れ先である兵庫の農家の方、そして兵庫県の行政関係者も多いという。早い時間帯は子連れのファミリー客まで、客層は意外なほど幅広い。

日本酒10蔵をはじめ、リキュール、六甲ビールなど、お酒も極力兵庫産。

　「お客様の立場で考えると、生産者や仕入れ先の顔が見えるというのは、安心できると思うんです。僕自身も子どもがいるので、自分でも、やっぱりこんな店に行きたいですね（笑）」と、安さよりも安心、安全を重視する層、ファミリー層を取り込んでいる。

兵庫県の加古川市＋エコで"エコがわ鍋"。本当の意味で地産地消につながるよう、店頭ではレシピも公開している。

　「カッコ良くいえば、生産者と消費者の架け橋でしょうか。地元・兵庫の方にも、もっともっと知っていただきたい。兵庫5国の恵みを味わっていただきたいです」。

2店舗を運営する株式会社ING FACTORY 代表取締役の北原拓将氏。自身、日々厨房に立つ。

　「農業高校の出身者は全国にいるはずなので、もっともっと仲間を増やしたいです。そして、農業体験ツアーなど、今後は農家とお客様をつなぐ活動にも力を入れていきたいですね」と、北原氏の描く夢はまだまだ広がっていきそうだ。

■株式会社ING FACTORY

住所：兵庫県神戸市中央区多聞通1-1-2

TEL. 078-321-3770

■居酒屋ひょうご食農ふぁん

住所：兵庫県神戸市中央区下山手通2-16-16 Aビル

TEL. 078-321-3770