お店を知る
2015年3月09日(月)17:19
飲食店を運営&プロデュースする先駆者、浜倉好宣氏が手掛ける新業態「Crab SAKABA"CARAT"」は、24時間営業の蟹酒場(東京・六本木/クラブ 酒場)
記事への評価
取材・執筆 : 高橋晴美 2015年3月9日
恵比寿横丁などをはじめ、飲食業界を牽引する『(株)浜倉的商店製作所』の代表取締役、浜倉好宣氏が新業態として提案するのが、高級食材をカジュアルに楽しむ24時間営業の店『Crab SAKABA"CARAT"』だ。2月16日(月)、六本木の芋洗坂にオープンし、早くも話題を集めている。
東京メトロ六本木駅から徒歩約2分。芋洗坂に突如現れたカラフルな建物。
1階の天井には金箔の家紋入りの欄間。奥には松の盆栽が並ぶ。外国人から見た"日本"を意識したものが随所に散りばめられている。
入口すぐ左手にある生け簀には、活きのいい蟹や鮑の姿も。隣の生け簀には、珍しい"イバラガニ"もいる。
全面ガラス張りの煌びやかなファサードは、外からでも店内の様子が分かる造り。生け簀で動き回る蟹の姿に道行く人たちの足も自然と留まる。たとえ店内に入らなくても興味を引き、携帯のカメラのシャッターを切りたくなる。実際、撮影してFacebookやツイッターでつぶやく人も多い。ネット上で自然と拡散していく一番早く説得力のある宣伝戦略といえる。
場所は芋洗坂を少し下った三叉路。六本木を知る人に、以前吉野家があった場所といえば、すぐに分かるだろう。斬新で六本木という場所に相応しい、大人が集う空間につくりあげた。
「2階建て37坪で100席は決して広いスペースではないが、恵比寿横丁のように、知らない人同士が隣合わせに座り自然と会話が生まれるような場所になれば」と、浜倉氏。
1階のガラスケースには、その日に入荷された新鮮なタラバガニや本ズワイガニ、貝などがずらりと並ぶ。色鮮やかな蟹や大きな貝は食欲をそそられる。外国人客が好む瓶ビールの品揃えも豊富だ。坂本龍馬や忍者のラベルは特に人気が高い。
2階は1階とはまた異なる雰囲気で天井は色鮮やかな欄間に。2階にも盆栽を並べ、観賞できるようになっている。
2階にはバーカウンターもあるので、1人でも気軽に立ち寄れる。
スワロフスキーが一面に敷きつめられたガラス張りのカウンターテーブル。座るだけでゴージャスな気分に浸れる。
店内のテーマは"西洋から見た華やかな日本"。豪華絢爛な安土桃山時代をイメージしたものだという。ベースカラーは、赤・金・黒。座席には着物の帯地や畳を使い、盆栽を配し家紋、和紙、金箔、欄間などの装飾を施し、華やかで温かみのある雅の世界をひとつの店内に再現している。
「タラバ蟹の生ウニのせ 和牛「元就」の炙り巻き」2480円。
手前は「海老&サーモン&アボカドのミルフィーユ」1280円と、奥が蟹味噌と蟹酢の二種類のソースで味わえる「毛蟹の甲羅詰め」1680円。
「本ズワイ蟹の刺身北海道産生うに乗せ」1680円と「蟹爪酒」1000円。
ドリンクは、美味だが食べにくく、とかく敬遠されがちだった蟹爪を利用して、炙ってコクを出したオリジナルの「蟹爪酒」(1000円)をはじめ、日本ワイン、日本酒、世界のプレミアム瓶ビール、ヘネシーなど多彩だ。
牡蠣と蟹をひと息で飲み込む「オイスター&クラブシューター三種」1180円。
見た目もオシャレ。女子ウケしそうな一品だ。
同店は24時間営業で、蟹料理を中心としたグランドメニューを提供する。蟹に注目した理由のひとつ。それは、日本とロシアが蟹の密漁・密輸防止のための協定を締結したことを受け、昨年12月10日から「蟹の密漁・密輸出防止のための輸入手続き」(日露2国間協定)が導入され、これによりロシアからのタラバガニの輸入量が急激に減少。北海道を代表する味覚、蟹の価格が高騰し、札幌市中央卸売市場をはじめ、どの店も昨年に比べ3割ほど値段が上がり、飲食店や家庭の食卓を直撃する事態となっている。
浜倉氏はこのような状況でも、日本の美味しい蟹をもっと気軽に食べて欲しいとの思いを強く抱き、このカニの高騰化に歯止めをかけるべく、北海道羅臼の蟹に注目!イバラガニ、毛ガニ、本ズワイガニなど、羅臼の生産者から直接仕入れることで安定量を確保し、値段もリーズナブルな提供が可能となった。
今後は、「羅臼に設置した倉庫を専用の加工工場として、CARATで開発したメニューを通販商品化し、地元の雇用にも貢献していきたい」と語る。
また、「店名の"CARAT"には、カラフルなという意味と原石という2つの意味があります。羅臼では毛ガニや本ズワイガニのほかに、イバラガニという希少なカニが捕れます。タラバガニの仲間で、大きさもタラバガニぐらいあり、色はタラバガニよりも薄いオレンジ色。味はタラバガニほど濃厚ではないので、食べやすく、他の食材と合わせやすい優れた蟹ですが、地元では市場価値がないとされ、流通することなく地元のみで消費されていました。このような食材の原石を集めて"輝ける"ステージにしたいという思を込め、これまで市場に出回ることのなかった希少な食材を、今後もブランディングしていきたいと考えています」。
さらに、「蟹料理というとこれまでは、高価なコース料理がほとんど。しかも、蟹は食べ始めると、どうしても身を剥くことに夢中になるあまり、会話も少なくなってしまいがちになります。それでは、楽しくないですよね。それに、今の若い世代にとっては、高級店に行くというという機会も少なくなっているように感じます。高級店だけでなく、もっと気軽に蟹を食べられる場所があっても良いのではないかという想いから"Let's eat Crab!楽しく美味しく気軽に蟹を!"をコンセプトに、蟹をカジュアルに楽しんでもらえる店をつくりました」と、浜倉氏。
浜倉氏が言うようにメニューを見ると、蟹は姿身の他にも、お客自身の剥く手間をなくして食べやすくしたメニューや、3個で1セットとなったシェアしやすいように工夫されたSAKABAメニューが多数用意されている。また、自慢の商品を3品チョイス盛りした「本日のCARAT盛り合わせ」1780円など、色々な種類が少しずつ食べられるメニューもある。
「本ズワイ蟹とふぐの白子グラタン」2480円
料理長は資生堂パーラー出身の吉村裕太氏。産直食材の魔術師として同店でも腕をふるう。食材は羅臼の蟹をはじめ、これまで展開してきた既存店の産直ルートを活かし、刺身から天ぷら、コロッケなどジャンルにとらわれることなく、どれも蟹の旨味を存分に引き出した料理ばかりだ。
メニューは、メイン食材の蟹のほかに、鮑、ふぐ、雲丹、すっぽんなどの専門店でしか味わえない高級食材も取り揃えている。さらに、函館の"大沼牛"や岩手の"佐助豚"など、全国選りすぐりの産直食材も多彩にラインアップ。「とらふぐのてっさ」は1280円、「佐助豚のパテ・ド・カンパーニュ」は980円など、リーズナブルに提供する。
ショットグラスに生のオイスターとカニを入れ、カクテルソースなどとひと口で飲む「オイスター&クラブシューター」は、シアトル発のシーフードメニューだ。同店が発信する見た目もオシャレな新しい食べ方の提案にも注目したい。
オーソドックスな料理も取り入れている理由を訊ねると、「長く続く店は、誰もが知っている味がある店」なのだという。その誰もが知る料理で、より美味しいものを目指すと浜倉氏。
お酒を飲んだ後の〆に食べたくなる「すっぽんスープと本ズワイ蟹のだんだんワンタンメン」1280円。
24時間営業とし、モーニング、ランチ、カフェ、ディナー、バー、〆のラーメン屋使いなど、さまざまなニーズに対応し、平均予算はランチ1200~2500円、ディナー6000円とする。ターゲットは、勤務先が閉店した後に来店する飲食店、ホテルスタッフなど深夜勤務の層。20代からの若い年代層。今後、更に増えると思われる外国人客の3つの層を想定しているという。
株式会社浜倉的商店製作所 代表取締役の浜倉好宣氏。
眠らない街・六本木で、今までありそうで実はこれまで存在しなかった大人の蟹酒場「Crab SAKABA"CARAT"」。これまでも、恵比寿横丁をはじめ、全国のシャッター街などを再生し、新しいコミュニティの場として再生、プロデュースを手掛けてきた浜倉氏の新しいステージから目が離せない。
■Crab SAKABA"CARAT"
住所:東京都港区六本木6-1-6
TEL.03-5413-3689
■24時間営業
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