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【ライジング・ベンチャー】

飲食店経営者レポート

2024年7月29日(月)11:18 【ライジング・ベンチャー】

【ライジング・ベンチャー】「ジャンソーアタル」など女性に人気の"おしゃれ居酒屋" 5店舗展開。理念「みんなで笑おう」を作って、50店舗をめざす。

トーヤーマン 當山 鯉一社長

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取材・執筆 : 【推薦】椿 新之助 2024年7月9日取材

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 當山 鯉一(とうやま りいち)氏は、沖縄出身の40歳(1984年1月生まれ)。アパレル業界に憧れ東京に来たが、飲食業界でその才能を開花させ、2015年に居酒屋「オオイリヤ」(入谷)で独立し、奥さんと繁盛店に育て上げた。現在、7月29日オープン予定の「三角」を含めて、女性に人気の"おしゃれ居酒屋"5店舗とマフィン店1店舗を展開している。

 「ライジング・ベンチャー」は、これから飲食業界で活躍が期待される経営者の考え方や夢を紹介する。今回は當山社長に元雀荘を改装した2階立地の隠れ家居酒屋「ジャンソーアタル」(北千住)でインタビューした。

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---1号店は奥さんと2人で出店したのですか?

妻は元々海外に留学する予定だったんです。しかし僕はカフェで働いていて、数ヶ月後には独立したいと思っていた。当時若かったので、勢いで妻に「一緒にやろうよ!」と言ったら、なんと留学を止めて一緒に起業してくれました。

妻は、カフェから始まって、代官山のフレンチや、鎌倉野菜を扱う鴨しゃぶ店などで働いていました。良い物を扱うのが好きなタイプで、僕は、接客がすごく好きなタイプ。今思うとタイプが分かれていたのが良かったと思います。

立地は、渋谷とか都心でやるよりも、ちょっと離れたところで出した方がワクワクするなっていう気持ちで、入谷に「オオイリヤ」を出店しました。2店舗目の「アタル」では、せんべろが北千住で流行ってたんですけど、若い子たちが毎日せんべろ?4千円ぐらいの居酒屋に行きたい時とかもあるんじゃないの?って思った。そこで4千円前後の、女性が入りやすい居酒屋をイメージして作りました。

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---ここ「ジャンソーアタル」も人気で、順調ですね。

僕はスタートダッシュでバーンというタイプではなくて、赤字は出ない範囲で徐々に上げていく感じ。最初は、週末はいいけど、平日は1桁というのを重ねて月300~400万円ぐらいをうろちょろしてましたが、約2年半経った今は、月800万円近く売ってます。

実はどの店も赤字は一度も出したことがなくて、売上面で苦労したっていう経験はありがたいことに少ないんです。

でも、人の面では苦労していますね。人のことを考えて悩んでることが多い。


---人で苦労したんですね。

1号店は、僕ら夫婦2人で始めて、熱量や自分たちの価値観がすごい強かった。今考えると、スタッフがそこで板挟みになっちゃって、続かなかったり、辞めちゃったり・・・。夫婦でやる難しさがわかりました。

3人ぐらいのお店って難しくて。特にうちみたいに夫婦で2対1だと、僕が何か悩み事とかない?って社員に聞いても、妻に筒抜けになっちゃうと思われるから言ってくれない。生きている以上、ある程度の文句とか、不平不満を言うのってすごく大事だと思うんです。全く言わない人はいないと思う。だけどそれを言えなくて、聞いてくれる人がいないと悩む。社員が4、5人ぐらいいるお店だったら、その中でいろんなコミュニティも生まれて言いやすいんですけどね。

2号店の「アタル」まで妻と一緒にやっていましたが、妻も僕もちょっとずつ現場に出ないようになってから、やっと人が続くようになりました。


---今は奥さん共々、現場に出てないのですか?

僕は、この「ジャンソーアタル」ではオープン3ヶ月ぐらいまで店に立って、そこから基本的にはどこにも出てないですね。ずっと出ていたのは「アタル」まで。

今度オープンの「三角」(御徒町)は、もう初めから立たないというスタンスでいます。準備は自分がめちゃめちゃやってますけど(笑)。

妻は今は副社長で、子供が生まれて現場から完全に離れました。役割としてはメニューの監修で、お店ごとに月のメニューを決めています。みんなでアイデアを出して、妻に来月のメニューですってLINEに上げると、妻が「このメニューバランスが悪い」、「この写真の撮り方が微妙」などと言われながら、妻がOKしたものをメニューに採用しています。


---奥さんが、アートディレクターみたいな感じですね。

そうですね。新しいお店を作る時も、8割ぐらいまでは大体僕がいけいけー!ってやるんですけど、最後の1割とか2割の細かいこだわりの部分は妻です。たまに妻と喧嘩になるんですけど、結果的に妻の方が良かったりとかするんですよね。


---雀荘のまま使うというアイデアはどっちですか?

内見で、入口の雀荘のボロボロの扉を見た時に、渋谷の「高丸電氣」さんの"厨房"イメージを思い出して、シンプルにこれ残した方が面白いなって思いました。

「ジャンソーアタル」という店名は妻が考えて、内見したときに「ジャンソーアタルで良くない?」みたいな感じでした。

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「ジャンソーアタル」入口


---この次オープンの「三角」(御徒町)はどういう業態ですか?

居酒屋業態で、「アタル」みたいな、 言っちゃえば"おしゃれ居酒屋"ですね。「アタル」がウチでは一番オーソドックスな店で、その感覚を御徒町に持っていく感じ。名物の蒸しつくねもそのまま新店に持っていきます。

「アタル」は、コースが組みづらいメニュー構成で、コースをやってないんです。しかし御徒町はオフィスの人も多いだろうから、コースを組めるグランドメニューにしたくて、蒸しつくねプラス、野菜の盛り合わせを小皿に盛り付ける。渋谷の「きんぼし」のおばんざいの盛り合わせのような感じ。

おばんざいの盛り合わせと蒸しつくねを名物に、ウチの会社らしいひとひねりしたメニューにサワー、日本酒、ワインとなんでも飲める居酒屋です。

今回頼んだデザイナーさんが、渋谷にある「IGOR COSY」、「CRAZY PIZZA」とか手掛けていて、めちゃめちゃおしゃれな物を作ってくれる方。おしゃれ居酒屋とは言ったものの、ちょっとおしゃれすぎて、大丈夫かな?って思っちゃうほど(笑)。

ただ、大衆酒場が多いエリアで、今までにないものを作るっていう意味で勝負をかけるにはちょうどいいと思っていて、おかげさまで満足いくお店になりました。


---居酒屋だけでなく、マフィン店も運営してるんですね。

千駄木で今年4月に、初めての昼間の業態として、マフィン店「アタルベイク」を出しました。テイクアウトとイートインどちらも出来るお店です。

そこはまだ苦戦していて・・・。いろんな人が働けるトーヤーマンにしたくて、人材の幅を広げる目的で出しました。社員の中で、シングルマザーとして3年ぐらい働いている方がいるんですけど、子供の送り迎えとかで、仕込みだけしか働けないんです。そこで、彼女が働ける場所を作ってあげたいと思って出しました。まだ赤字ベースなんですけど、やっと抜けそうなところまで来ました。チェーン店として同じ屋号で沢山出すよりかは、居酒屋部門と、ダイニング部門みたいなものを作ってみたいって夢が最近出てきた。例えば、バルニバービさんみたいな。

ウチの会社は職人さんというか生粋の料理人がいないんです。"料理が出来るだけ"という人を取ってこなかった。将来何か大きな事をやる時に、ウチの思いをわかってる人にお店に立ってもらいたい。初めは小さくてやって、マフィン店だったら、パンを焼くのが好き、ケーキ作るのが好き、とか居酒屋だけじゃなくて色んな人が働く間口になりたい。


---料理人がいない中で、女性にウケるメニューはどうやって開発するんですか?

僕は本当に料理ができないんですよね。三枚おろしがギリギリできるくらい(笑)

ただその代わりに、使ってるお皿だったりとか、接客で、しっかりと美味しい理由を言えることを大切にしてきた。変な話、マグロのぶつ切りを買ってきて、黄身と酒盗とかで面白いソースを考えて乗っけて、かっこいい器で出したら、お客様から、「どこかで修行されたんですか?」って言ってくれる。

グランドメニューは基本的に8割ぐらい僕が作って、料理人じゃなくても作れるようなレシピにする。ウチの会社は、飲食店が未経験で3ヶ月ぐらいの子でも熱い、強い思いがあればメインのキッチンに立たせる。でも、お客さんからはそんな風には見せない工夫をしっかりとやる。

月替わりメニューに関しては、料理やりたい子が出てきたので作らせたりします。土台は職人さんじゃなくてもある程度できるようになるメニュー構成、でも、ひとひねりを大事にさせる。


---センスを大切にする?

センスは培われるものだと思う。僕は今流行っている店とかをインスタで見るし、以前は雑誌もいっぱい買ってた。立ち読みもしてたし、自分の時間をそういうところに使ってました。

他店舗の良い所を取り入れることは、自分で長所だと思うんですけど、取り入れるにも、昔からある大衆酒場の良さを理解していることが大切。例えば、ネオ大衆酒場の先駆けとなった「ビートル」を作った千さん(プロダクトオブタイム)。彼がなぜ、ビートルを作れたかというと、昔ながらの大衆酒場をいっぱい回ってその良さを知っているから。そこが分かってないと、ビートルの偽物みたいな感じになっちゃうけど、酒場を分かってる人だと、ちゃんとこの人は"分かってて取り入れてるんだな"、となる。


---夢は?

3年前ぐらいから会社の規模感を大きくしたいっていうふうに思い始めた。

地盤をしっかりと作るために、外部の人を入れて会社の理念作って、ブランディングの会社を入れて、みんなでワークショップとかも行った。ちょうど先月からしっかりと評価制度を作り、運用し始めた。

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スタッフ全員が持つクレド

<企業スローガン>
みんなで笑おう。

お客様が笑ってる。
お取引先様が笑ってる。
働く仲間も笑ってる。
明るく過ごしたい人も、
じっくり楽しみたい人も。
いろんな人が集まって、
お店が笑顔に包まれる。
みんなの日常と、
街の未来が明るくなっていく。


僕の周りって理念を取り入れている社長は少ないんです。どうなりたいかなって考えたときに、いろいろな会社さんのホームページを見てて、30店舗以上とかになってもずっと価値が下がらない会社がある。どうしたらいいのかなと思ったときに、やっぱり言葉。ウチの会社はこういう色があるというのが大事だと思った。

今までは個店ベースで面白いお店を作りたいとやってましたが、2~3年前から、面白い店を作りたいは変わらないけど、会社として一つ筋が通ってて、昼間でもカレー屋でもラーメン屋でも何やるかわからないけど、大切にしてるものに沿ってトーヤーマンはやっていくよ、っていう感じで進めたい。

「みんなで笑おう」というスローガンがあって、例えばマフィン店を10店舗20店舗フランチャイズするといったときに、お金儲けが一番というのは違う。「みんなで笑おう」という視点でやる。お子さんがいる人とか、いろんな時間帯で長く勤めたい人もいるかもしれない。そこに「みんなで笑おう」という気持ちを持っていれば、マフィン店を何店かやってもいいし、みんなにちゃんと説明ができる。


---「みんなで笑おう」で、どんな規模にしたいんですか?

50店舗ぐらいまでやりたいという気持ちが最近出てきました。

どうせやるんだったら、ワクワクするような面白い事をみんなでやりたい。数年すれば独立するものだと思ってたんですけど、独立しないというスタッフも多い。そういう子たちが長く働いていくっていう目線で考えると店舗数が要る。

今みたいな5,6店舗とかだと多分守り切れないと思う。母数が大きくなったら面白いことだってできるし、役職や給与も長くいる子には立場も作ってあげられる。だから大きくしていきたい。目先の目標としては、まずは10店舗まで目指す。

あとは5、6店舗に増えてきて、自分一人では管理が難しいなと思ってきた。なので新店舗ができるタイミングで、1人現場から抜けさせて管理をやらせる。もう1人、信頼している人事スタッフがいるんで、2人で役割分担をして、10店舗までの体制を作る。そしてその先に進める体制を自分たちなりに作っていきたい。

僕は、多分、こういうことやりたい!とか前を向いて考えてる方が向いてて、今のように一日中LINEとかメールとかしてると、今日何やったのかな?とか思っちゃう。管理を任せることができれば、僕が時間を作れていろんなものを見たりしてる方が会社にとってプラスになる。

いろんなものを見ていた中で、軽井沢で蕎麦屋とベーカリーを展開する「SAWAMURA」さんとか、めちゃめちゃかっこよく思って、今まで居酒屋ばかりだったけど、ダイニングとかもやってみたいと思った。今後はダイニングだけじゃなくて、焼鳥とか蕎麦とか、しっかりと技術が必要なことも取り入れていきたい。そして会社の軸に合っていて、それに共感した人が入ってきてくれるようにする。

職人さんでなくても働ける今のブランドと、もう少し料理をやってみたくなる子とか出てくると、その子達の受け皿にしてあげられるような業態を増やして、今後も赤字にならないようにコツコツと店舗数を増やしていきたいですね。


---ありがとうございました。


共に働く仲間を増やして長く働いてもらうために、スローガン「みんなで笑おう」を作り、50店舗まで規模を拡大していこうという。目標を口に出すことへのためらいは追い払い、50店舗を宣言する。これにより、サポーターも増え、より実現が近づく。5年後、10年後が確実に楽しみだ。

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左は推薦者、椿 新之助(フードリンクグループ)。


「暮ラシノ呑処 オオイリヤ」
東京都台東区下谷2丁目21-8 河野ビル 1F

「酒呑倶楽部アタル」
東京都足立区千住1丁目32-6

「タチアタル」
東京都足立区千住2-62 さつき荘

「ジャンソーアタル」
東京都足立区千住1丁目33-11 上野ビル 2F

「アタルベイク」
東京都台東区谷中2-18-6 小島邸1F

「三角」
東京都台東区上野3-18-4 ホウライビル1F

株式会社トーヤーマン
東京都台東区下谷2-21-8 河野ビル1階
代表取締役 當山 鯉一

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