【ライジング・ベンチャー】
2024年5月14日(火)09:25
【ライジング・ベンチャー】グローバルダイニング、CoCo壱番屋ジーで独立。全店を売って、立ち呑みを独自開発。
Top Welcome 迎 憲一社長
記事への評価
取材・執筆 : 【推薦】大港徳之 2024年5月14日取材
迎(むかえ)氏は、グローバルダイニングで接客を磨き、カレーハウスCoCo壱番屋のFCジーとして独立し経営を学んだ。4店舗にまで広げたところで、オリジナル業態で勝負したいと敢えて4店舗を売却し、秋葉原で立ち呑み「さけときどきぶた」を開業。現在は、2店舗を経営している。
「ライジング・ベンチャー」は、これから飲食業界で活躍が期待される経営者の考え方や夢を紹介する。今回は迎社長を「さけときどきぶた」住吉店でインタビューした。
---「さけときどきぶた」住吉店は繁盛店ですね。
住吉の交差点近くで、周りは飲食店が少なくて寂しい場所ですが、坪月商40万円あります。立ち呑みなのでドリンクが出て、原価率は低くて28%弱。家賃も売上に対して8%程なんで、1人でやってたら十分稼げますよ(笑)。
ドリンクバーコーナーがあってドリンクはお客さんに自分で作ってもらいます。お客さんも楽しんでやってくれます。初めてのお客さんにも、先に来たお客さんが「そこで自分で作るんだよ」と必ず教えてくれる。
僕の趣味のモルトウイスキーや、グローバルダイニング「ゼスト」で学んだテキーラも置いてありますが、高いのも売れます。秋葉原店でも置いたんですが、全然出なかった。
すぐ隣が錦糸町なんで、治安悪いのかなと思ってたんですよ。実はめちゃめちゃ住吉は良くて、お客さんも多分それなりに稼いでる方が多い。多分、江東区がいい。1杯6000円のマッカランを2人で11杯も飲んだ方もいました。もちろん高い酒はセルフではなく、僕が注ぎます(笑)。
「さけときどきぶた」住吉店
モルトやテキーラも売れる。
お客さん同士で教えあって作る、ドリンクバーコーナー。
---オリジナル業態を始めた経緯を教えてください。
現在、Top Welcomeで運営しているのは、立ち呑み「さけときどきぶた」秋葉原駅前店と猿江公園住吉店の2店舗。もう1店舗同名で末広町店が今ありますが、元店長が独立希望者だったので、暖簾分け分けという形で看板を貸してます。元々は、更にもう1店舗ありましたが、創業メンバーに譲渡して看板を変えてもらってます。
キャッシュのない20代でとりあえずキャッシュを作ろうと、CoCo壱番屋には独立制度があったので入社しました。独立してジーとして行徳、妙典、市川で4店舗やった。5店舗目をやろうかと思いましたが、でも違う、入社当初から自分の業態をやりたかった。
4店舗になりましたが、僕は現場に出たかった。経営だけしていると、バランスがずっと取れてない感じがありました。人を雇うのに疲れちゃった。フランチャイズで社員を集めるってなかなか難しい。
お客さんとの距離も店舗展開を考えると、自分が前に出ると自分のファンは増えるけどお店のファンとして根づかせるのが難しかった。
それで、CoCo壱番屋は兼業がNGだったので全て譲渡しました。1号店が38歳(1978年生まれ)の時ですね。ちなみに、CoCo壱番屋でのジーとしての独立起業は30歳。
---なぜ立ち飲みを選びましたか?
1号店目に2号店目は座りでやりました。接客のためには席があった方がいいと思った。フルサービスとは言わないけど、大衆酒場でちゃんと喋れる、接客のできる、感じのいい店を作りたいっていうのがベースだったんですけど、なかなかやっぱり難しい。
チーム作りがうまくいかなかった。言い方は悪いすけど、カレー屋で働いてる社員に教えるのは作業なんですよ。居酒屋は、料理ができるけど接客できない子もいれば、接客はある程度できるかもしれないけど料理できない子もいる。彼らを集めて、どんと出店しても上手く回らなかった。
残った子で回せるよう立ち呑みにした。今、秋葉原店で働いてるのは、もう6、7年一緒にやってる子たち。今、店長が30歳になって、社員の女の子が25歳になります。
---今後の展開について教えてください。
バックボーンを言うと、僕は子供が5人いるんですね。23歳で結婚して、21歳。20歳、高1、中2の4人が前の嫁さん。今の嫁さんにまだ2歳弱がいるんです。これから20年と考えた時、せっかく好きな飲食店をやってるんだったら、とりあえず楽しく僕自身が働きたい。結局1人の店(住吉店)を作ったっていう感じです。この店があれば、今の2歳の子はどうにかなる。
ずっと55歳で上がろうと思ってたんです。とりあえず前妻の子たちの責任は持とうと常々あったんで、そこまでは頑張ろうと。中2の女の子がいるんですけどその子が大学出るぐらいまであと10年。今45歳で55歳まで。55歳になってからスローに自分で楽しんでやればいいやと思ったんですけど。
でも、ここをやることでやっぱり楽しいなと徐々になってきた。なぜか55歳の目標を50歳に下げた。50歳で上がろうとしてるんです、今。人を雇わないようにして。
秋葉原店の30歳の店長には、30代は家族ができたりとか結婚があったりとか、子供が生まれたりとかっていうのがあると言ってます。彼が40歳になるまで、金銭的に面倒見れないかもしれないなと思ったんです。僕もちろんまだ抱えてるものが多いから。だからあと5年の50歳に切り下げた。店長にお前は35歳まで頑張れよと。俺は50歳まで頑張るから。それまでに、オーナーになりなさいと。
飲食のゴールは、雇われでずっとやっていくには無理だと思ってるんで、どっかのタイミングでやっぱり自分で商売を起こす、もしくは誰かから引き継ぐっていうパターンじゃないと多分しんどくなってくると思うんですよ。
僕はちょっとなるべく早めに楽に(笑)。コンパクトにやれれば、それでも多分何とかなるんじゃないかなっていうのがあるんで。
---50歳でリセットした後は?
飲食を辞めるということではないです。僕に合ったここ(住吉店)は残すつもりでいるんで。誰かがやりたいって言えば、ちょっとずつお金をもらって、僕は居抜きでどっかでやってもいいと思ってるし。東京にこだわってるわけでもないし。沖縄でもいい。
今いる子たちは本当に家族になってる部分があるんで、今まで一緒に頑張ってきたからお前らもこの後頑張れよっていうのを渡せればいいなと思ってる。僕のわがままでもあるんですけど(笑)。
年とともにちょっとアクが抜けてくる部分はあるじゃないですか、ちょっと丸くなるというか。僕自身は自分でやっぱりちょっとずつ丸くなってきてるなっていうのが感じてて、ただどうしても人を雇って、その店舗展開するっていうイメージが未だいいほうに湧かない。。
1回ちょっと休んだときに、その気持ちが芽生えるかなっていう気もしてて、昔とは違う組織の作り方がもちろんできるようになっていると思うし、別にもうガツガツもしてないだろうし。今はとりあえず一回、50歳に向けては考えてるんですけど、その先に関してはまだ何にも考えてない。
とりあえず、50歳まで行ってちょっとリセット。それからの10年は未だ体は動くとは思ってるし、別に今みたいな働き方じゃないにしても何かやりたい。暇がいやなんです。CoCo壱番屋の時も4店舗やって現場に出なくなるともう耐えられなかった。すごい無駄に時間を使ってるというか感じがしちゃってた。
---そういう生き方もありますよね。お店をいっぱい作るだけが人生じゃない。また店舗を作ってまた社員に渡していくんですか。
すぐには考えてない。ただ、秋葉原の2番手やってる女の子なんですけど、その子に僕は元々、いずれスナックやらせたい。秋葉原でスナックをやらせたい、立ち飲みの後に歌えるところを作ってお客さんのおじさんたちが流れていく。本人もやりたいと思ってると思うんです。
ずっと現場を2人でやってくってなるより、ある程度助け合いながらも別々の店を持ってた方が、その子たちにもいいんじゃないかな。スナックであれば、他の女の子をちいママとして入れて任せれば抜けられる日もあるだろう。立ち呑みに助けに行って、新しくお客さんも入れられることもあるし。
---今、飲食やりたい若い子は減ってるような気がします。
僕がCoCo壱番屋に入社したころは、僕も含めて8割が独立希望者でした。もう15年ぐらい前の話。今は逆転してます。サラリーマンになりたくて入社してくる方が大半でしょう。
今はアルバイトも取れない。取れてもすぐ辞める。特に小さい店は。なんで、ウチはタイミーにしました。タイミーで3時間だけ働いてもらって、後で引き抜く。
タイミーの方は立ち呑みに応募してきてくれることで、ひとつ関門をクリアしてる。行ってみて楽しそうだったりとか、例えば、面白そうな店長や社員の子がいたりとか、かわいいバイトの子がいたりとか、多分いろいろあると思うんですけど、そういうところで、ここで働いてみようと思ってくれる。タイミー経由より、直雇いの方が本来はもっといい時給を出せると話す。これで、3人ほどバイトを採用できました(笑)。
---ありがとうございました。
「迎」という名前の通り、接客が大好きで、社名にも「Welcome」と入れた迎社長。飲食業の根幹である「接客の楽しさ」に気づかせてくれる。社員に飲食で働くことの魅力を発信し続けている。
右は推薦者、大港徳之(フードリンクグループ)。
「さけときどきぶた 秋葉原駅前店」
東京都千代田区神田佐久間町1-20 三新ビル1F
「さけときどきぶた 猿江公園住吉店」
東京都江東区住吉2-22-3
株式会社Top Welcome
代表取締役 迎 憲一
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