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フードリンクレポート

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2019年2月26日(火)10:25

効率化だけじゃない! テクノロジーへの投資がもたらした3つの効果とは?

-キャッシュレスセルフレジ導入による顧客と従業員の幸福度向上術 -

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取材・執筆 : 株式会社 野村総合研究所 2018年11月取材

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東京都中心にチョップドサラダ専門店を8店舗展開しているクリスプ・サラダワークスさんは店舗のキャッシュレス化を進めています。"キャッシュレス"と聞くと、どうしても「レジ業務の効率化」「店内混雑の解消」という業務の効率化をイメージしがちですが、単なる業務の効率化ではなく、「飲食店の価値の向上=人の価値の向上」という哲学のもと、様々な効果を狙って、キャッシュレス化を進められたようです。その中心人物である代表取締役社長の宮野さんにお話を伺いました。

<企業について>
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<インタビューについて>
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代表取締役社長 宮野浩史さん
・アメリカにおいて、飲食店事業の経験。"日本でもサラダのある生活を日常にしたい"との思いから、チョップドサラダ専門店であるクリスプ・サラダワークスを起業。
・趣味は海外ドラマの鑑賞等


<クリスプの実施したテクノロジーへの投資>
ざっくり言うと・・・
● キャッシュレスレジシステムを構築。スマホアプリやクレジットカードに決済方法を絞り、キャッシュレス化を実現。
● 支払い方法のパターンは以下の3つが存在。
パターン①「ピックアップ注文⇒キャッシュレス決済」
 ・いつでもアプリからお気に入りのサラダを注文。
 ・好きな時間に好きな店舗でピックアップ可能。
 ・事前にクレジットカード決済するため、レジ待ち不要。
パターン②「セルフレジ注文⇒キャッシュレス決済」
 ・店内のセルフレジでサラダを注文。
 ・クレジットカードで決済する。
パターン③「店内注文⇒キャッシュレス決済」
 ・店内のどこからでもアプリでサラダを注文・決済。

キャッシュレスセルフレジのイメージ図
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<取組みによって生まれた成果>
成果をまとめると・・・
1.注文・決済業務の効率化
スループットが31%向上

そして、効率化の他にも、以下のような効果を発揮
   ...そしてこの効果こそが宮野さんのそもそもの狙い

2.従業員への良い効果「楽しく働ける職場に寄与」
スタッフが決済・レジ締めという作業から開放され、お客様とのコミュニケーション量がアップ!
顧客ロイヤリティが増加するとともに、スタッフも楽しく働ける職場に変化。

3.お客様への良い効果「イノベーティブな注文体験」
注文や支払いのタイミングをお客様が自身で選べる・選べないストレスが無くなる。
事前オーダーがあれば店内の商品受け取り棚に商品が置いてあり、お客様が取りたいタイミングで取ることができる。


<宮野代表取締役社長へのインタビュー>

そもそも今後の飲食店経営はいかに「人の価値」を最大にするかが課題
イ: レジ待ち行列の緩和やレジ処理業務の効率化を狙ってキャッシュレスセルフレジを導入したのでしょうか?
宮: それ自体は大きな理由ではないですね。まず、「魅力的なお店を作るにはどうしたらいいのかな?」ということを私達は常に考えています。飲食店の価値は「料理」・「人」・「内装(デザイン)」と昔から言われていますが、料理については、オープン・レシピが進んでいるので、誰でも比較的美味しい料理を作れるようになっています。その意味で料理は根本的な差別化要因にならないと考えています。また、内装(デザイン)は世界中のデザインがインターネットで確認・参考でき、すぐに模倣することが可能になってしまっているため、こちらも根本的な差別化要因にはならないと思います。すると飲食店の価値として残るのは人。つまり、もっと魅力的なお店を作るためには人の価値が重要になると思っています。でも、飲食店は生産性も低く、スタッフにとって魅力的な業界になっていないと感じている。じゃあどうしよう?と考えた時に3つの観点があって、「スタッフ」「顧客」「経営」という観点で魅力的なお店づくりを進めています。

テクノロジーへの投資は、単なる業務の効率化以外にも効果を発揮
イ: それでは、今回のテクノロジーへの投資に関して、「スタッフ」と「顧客」の観点でどのようにしたいと考えていましたか?
宮: 「スタッフ」についてはスタッフに楽しく働いてほしいというのが一番の思いです。そのためにも、覚える業務など、人がやらなくていい業務は全て機械に移行したいと考えています。そして、飲食業で働いていて楽しいことは「人とコミュニケーションがとれること」。なので、なおさら人がやらなくていい業務は機械にやってもらい、スタッフにはお客さんと話すことを楽しんでほしいと考えています。
お客様も「このお店は生産性がすごいから」といってお店に来るわけではないと考えています。なんとなく来てくれているお客様もいるけども、人の魅力を源泉とした店全体の雰囲気等で来てくれているお客様もいるので、スタッフが生き生きと働くことはとても重要です。
イ: 「顧客」の軸はどうですか?
宮: "注文の主導権を渡す"というような表現を社内ではしていますが、お客様の注文体験を進化させること、つまり、注文や支払いのタイミングをお客様が自身で選べること・選べないストレスを無くすことが大切と考えています。単に現金が使えないだけのお店では却ってお客様の選択肢が狭められてしまいます。現金を使わないことに価値を与えることが大切。事前オーダーがあれば店内の棚に商品が置いてあり、お客様が取りたいタイミングで取ることが可能になっています。こういった体験はまだ日本では少ないので、顧客にある種の感動が生まれるのでは?と思っています。例えば、私も"Uber"を初めて利用したときには、「こんなに便利なのか」と驚きました。ニュースで読んではいたものの、実際に使ってみると、ある種の感動を覚えるものでした。その"Uber"のような体験をお客様にも味わってほしいと考えています。

ゴールを共有することで社内の不安払拭
イ: キャッシュレス化について社内から反発はありませんでしたか?
宮: ありました。お客様が離れていくのではないか?と心配の声があがっていました。しかし、私のゴールが決してキャッシュレス化ではなく、スタッフが楽しんで働けるように等といった先のゴールであるということを社内に共有し、巻き込んでいきました。

実際の成果としてスループットが向上。顧客も満足。
イ: 数字としてどのような成果が得られましたか?
宮: まだ2ヶ月なので、不十分な可能性はありますが、一番よい時で31%スループットが向上しています。また、スタッフが10分~20分程度、早く帰れるようになった、お客様から「すごい」、「カッコいい」という声を多く聞くようになったという効果もあります。始める前は不安もありましたが、お客様はITリテラシーが高く、準備が出来ていた。 "我々が動けばお客様は付いてくる"と感じています。


<編集者コメント>
キャッシュレス化への取組みは店頭混雑の緩和という短期的な目的からではなく、「飲食店の価値は人にある」という同社の哲学から発生した取組でした。スタッフは本来やりたいお客様との時間共有が可能に、お客様は"注文の主導権"を持つことでストレスから開放され、経営者はデータに基づく「ライフタイムバリュー経営」が可能になる、という思いからの取組です。キャッシュレス化への道のりは、スタッフからの反発もありはしたが、キャッシュレス化の先にあるゴールを共有することで乗り越え、お客様からは意外にも「すごい」・「かっこいい」というポジティブなフィードバックがありました。"あなたが動けばお客様は付いてくる"というメッセージが印象的です。全ての飲食店でキャッシュレス化を進めるべきとは言えませんが、少なくとも、テクノロジーへの投資に関して、単なる業務の効率化と捉えるのはもう古い考えだと感じました。

取材協力:株式会社 クリスプ
執筆者:株式会社 野村総合研究所
※なお本稿は2018年11月の取材に基づくものです。

農林水産省では外食・中食の生産性向上に関する情報を取りまとめておる所でございます。
是非次のURLにもアクセスのほどよろしくお願いいたします。


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