年間の訪日外国人数がついに3000万人を突破しました（2018年の推計値3119万人）。2013年に初めて1000万人を超えてから（1036万人）、わずか5年で3倍に膨れ上がったことになります。これだけのボリュームになると、飲食店にとっても本当に大きなマーケットです。

　実際、日本を訪れた外国人に「訪日前に期待していたこと」を聞いた官公庁の調査で、最も多かった回答が「日本食を食べること」。複数回答で回答率は約７割を占め（※２番目に多かったのは「ショッピング」、３番目は「自然・景勝地観光」）、「日本の酒を飲むこと」という回答も約2割にのぼります。「日本の食を満喫したい！」。そう意気込んで来日する外国人がたくさんいるということなので、飲食店にとって大きなチャンスであることは間違いありません（※写真は連日、外国人客で賑わう新宿の「思い出横丁」）。

　インバウト需要をどう取り込むか？　2019年も重要なテーマですが、実はもう一つ、インバウンドを通しての面白い視点があるように思います。それは、インバウンドで外国人に人気を集める日本の食の中から、新たなトレンドメニューが生まれるのではないかという視点です。そう思ったきっかけは、先日、テレビ朝日で放送されていた「ニッポン視察団！2019年最新！世界が憧れる"冬の最強ジャパンフード"ベスト30」。訪日外国人の評価が高かった日本の食をランキングで紹介する内容で、似たような番組は前にも見たことがありますが、今回は「最新！」「冬の～」という企画だったこともあってか、個人的にちょっと意外な「ジャパンフード」がベスト30に入っていて、それらは新たなトレンドメニューになり得るのではないかと思った次第です（※ちなみに、おおよそ順当と言えるベスト５は1位「大阪のお好み焼き」、2位「福岡のとんこつラーメン」、3位「神戸ビーフの焼肉」、４位「大阪のたこ焼き」、5位「東京のうな重」）。

　

　具体的にあげると、10位の「京都のぜんざい」、16位の「京都の湯どうふ」、21位の「鹿児島の焼き芋」の３つです。ぜんざいの「あずきやお餅のおいしさ」、湯どうふの「だしの旨みや豆腐のなめらかさ」、焼き芋の「砂糖いらずの自然な甘さ」などを外国人が高く評価しているコメントを聞いていると、日本人として自分もそれぞれの魅力を再発見させられるような気持ちになりました。

　しかも、ぜんざい、湯どうふ、焼き芋は、これまで外食メニューとしてはあまり注目されてきませんでしたが、今の時代に人気が高まるポテンシャルを備えています。ぜんざいは、かき氷、コッペパンなどに続くレトロ系のニューウェーブ候補と言えるし、シンプルイズベストという言葉がぴったりの湯どうふは今こそ価値を発揮しそうな気がします。また、焼き芋は、食感がねっとりしたタイプが評判とのこと。"ねっとり系の焼き芋"というフレーズからして魅力的で、そうした焼き芋を生産・冷凍して全国に出荷している鹿児島の農場も同番組で紹介されていたので、飲食店に広がっても不思議ではありません。

　同番組の「ジャパンフード」は冬バージョンでしたが、このように「外国人に評価されて日本人も再評価する」という流れは、今後も時代の潮流として見逃せないように思うのですが、いかがでしょうか。日本の食文化が外国人に認められるのは、やはり日本人として嬉しいものなので、そうした消費者心理がこの潮流を加速させるような気がします。最近見た「木曽路」のテレビＣＭは、外国人女性がしゃぶしゃぶの魅力を伝える内容でしたが、これなども同様のニュアンスが込められているように感じました。

　インバウンドの"もう一つ視点"。それは外国人客を取り込むだけでなく、インバウンドがもたらす日本の食の価値向上を、日本人の外食消費喚起にもつなげることです。ちょっと欲張りな視点ですが、今年はラグビーワールドカップ、来年には東京オリンピック・パラリンピックと続き、"インバウンドフィーバー"はさらに過熱することが予想されるだけに、むしろそれだけでは足りないように思います。インバウンドの"もう一つ視点"は、他にもまだまだある――。それくらい強気な発想が、チャンスを呼び込むのではないでしょうか。