フードリンクレポート
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取材・執筆 : 酒井慎平 2016年10月31日
京都で初めてスピリッツ製造免許を取得した京都蒸溜所が初リリースアイテム、スーパープレミアム クラフトジン「季の美 京都ドライジン(KI NO BI Kyoto Dry Gin)」を10月14日発売した。
クラフトとは何でしょうか。最近よく耳にしますが、その度に考させられます。
日本にこの言葉の定義は無く、キリンビールの子会社スプリングバレーブルワリーでは、自社製造のクラフトビールについて、"こだわりの"や"個性的な"といった意味合いで「クラフト」を使用していました。
つい先日、日本初のジン蒸留所となる「京都蒸留所」が始動し、国産のスーパープレミアムクラフトジン「季の美 京都ドライジン」(KI NO BI Kyoto Dry Gin)が発売されました。
「季の美」は、日本ならではのボタニカルを使用し、ヨーロッパで生まれたジンの伝統に、京都をはじめ日本各地で厳選した「和」のエッセンスを加え、繊細な味わいに仕上げています。
ボタニカルには、玉露やゆず、ヒノキや山椒など日本ならではの素材を積極的に使用し、それぞれの個性を最大限に引き出すために「シトラス」、「フローラル」、「スパイス」など6つのグループに分け、別々の蒸留したものをブレンドする独特な製法を取り入れています。非常に手間が掛かる方法を用いていますが、"京都らしさ"という個性を「季の美」に転化させるためには必要な工程です。蒸留所の建築許可の取得が難しい京都市内で敢えて挑戦するのも、強い個性を生み出すためでしょう。
クラフトといえば、約2年前に世界から注目されるクラフトウイスキー「イチローズモルト」の「秩父蒸留所」にも取材に行ったことがあります。こちらも単に新参者の小規模蒸留所というわけではなく、もちろん秩父の恵まれた風土の影響もあるのですが、日本固有種の今では入手困難なミズナラ材を発酵槽に使用することで、ジャパニーズウイスキーとしての強い個性を生み出していました。
ミズナラの発酵槽(ウォッシュバック)。
イチローズモルトに見るクラフトウイスキーの未来(3-1)
「京都蒸留所」と「秩父蒸留所」は、唯一無二の工程に取り入れることで、クラフトと呼ばれる各市場のなかでも突出した存在になれたのではないでしょうか。
消費者のライフスタイルがどんどんと細分化している今、"個性"の重要性が益々増しているように感じます。飲食店も個人単位のこだわりに寄り添った価値観を創り出す必要があるのではないでしょうか。クラフトは個性を生み出すひとつの技法で、低価格でも強い個性を持った大衆酒場が復調しているように、単に価値あるモノを提供すれば良いという時代では無くなっています。京都蒸留所の取材を通して「クラフト」の本質を考えたとき、「個性」を求める消費者心理が大きな流行を生み出す原動力になっているように思うのです。
■酒井 慎平(さかい・しんぺい)
フードリンクニュース編集長
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