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フードリンクレポート

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2016年2月29日(月)18:32

ヨドバシAkiba「ワイワイグルメ」、お酒が飲める横丁エリアを備え全方位をカバーする30店を集積

東京オリンピックに向け新商業施設が続々オープン

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2016年2月28日執筆

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 2015年後半から16年前半にかけて、東京を中心に新しい商業施設のオープン、レストラン街のリニューアルが相次いでいる。商業施設事業者は、2020年の東京オリンピックに向けて変化を遂げようとしている東京を、日本をどのように表現しようとしているのか。まとめてみた。(6回シリーズ)

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仕事帰りにちょっと一杯飲んでいける「YODOBASHI  YOKOTYO」。「ヨドバシAkiba」8階レストラン街「ワイワイグルメ」新装オープンの目玉だ。

 JR秋葉原駅前の「ヨドバシAkiba」は8階飲食街約4000㎡を全面リニューアルし、「yy GOURMET(ワイワイグルメ)」と命名して、昨年11月20日にグランドオープンした。

 10月2日に第1期として13店がオープンしたのに続いて、11月20日に第2期17店がオープン。計30店となって、秋葉原最大級の数とバリエーションをうたっている。

 2005年に「ヨドバシAkiba」が誕生して以来、10年という経年が浅い段階での異例の全面リニューアルであるが、従来は電気街に来る男性客ばかりであった顧客層から、女性やファミリー、さらにはインバウンドの訪日外国人をも取り込めるレストラン街への脱皮がはかられている。

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「YODOBASHI  YOKOTYO」の一角。

 つくばエクスプレス沿線の開発が進んで秋葉原にはファミリー客、通勤・通学の乗り換えの合間に来る人が増えている。また、オフィスビルが増えて、ビジネスマン、OLが多くなってきた。加えて、爆買いの中国人など、インバウンドの需要も伸びている。そうした、秋葉原の環境変化を踏まえての改装であると、施設を管理するヨドバシ建物では説明している。

 要は、「ヨドバシAkiba」に来る顧客が食べに来る家電量販店に付随したレストラン街から、「ワイワイグルメ」としてグルメを目指して来てもらえる自立したレストラン街への転換がはかられている。

 リニューアル前のテナント数24で総客数は1500席。一方で、リニューアル後はテナント数30で総客数は1620席と、テナント数、総客数ともに増加している。顧客単価は概ねランチで1500円以内に収まるようになっており、高級店は入っていない。

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「YODOBASHI  YOKOTYO」にある肉バル「Block」。

 全般に店と店の間仕切りが低く、1つのフードコートのようなつくりになっている。プロデューサーは「渋谷ヒカリエ」のレストランフロアー、「ログロード代官山」などのプロデュースを手掛けた柴田陽子氏。

 リニューアル効果としては、月に4億円弱を売り上げていたレストランフロアーが、リニューアル後は4億数千万円のペースで推移しており、客数125%、売上130%になっている(出典:「飲食店経営」2016年2月号17ページ)という。

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日替りイベントで集客をはかる店も。

 秋葉原に来る人を全方位で集客することを狙った「ワイワイグルメ」であるが、顧客層の似たような店を数店グルーピングして、隣同士に入居させるという独特な方式を取っている。

 たとえば、第1期でオープンした「YODOBASHI  YOKOTYO」と呼ばれる横丁を模したゾーン。こちらに配置された6店は、会社帰りのビジネスパーソンが、お酒を飲める居酒屋としての用途に対応できる店を集め、シメの麺類も楽しめる。

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気軽に居酒屋体験ができるので、インバウンドの外国人にも人気のエリアだ。

 たとえば、際コーポレーションの「たつみ屋」は、浅草の下町グルメを集積したような店で、浅草「たつみ屋」の姉妹店。天丼、天ぷら、おでん、玉子焼、牛すき焼などを味わうことができる。

 実はこの「たつみ屋」は顧客の3、4割が外国人で、中でも中国人が多いのだという。日本の居酒屋を体験してみたいと思っている外国人はたくさんいるのだが、敷居が高く思われている。フードコート感覚の「ワイワイグルメ」では、外国人でも気軽に入れる良さがあるのだろう。別にお酒を飲むのが前提の店でもない。

 ヨドバシ建物では「外国語のメニュー表記や外国語を話せるスタッフを雇うかどうかは、各テナントに任せている」という。

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富山のスープが黒い醤油ラーメン、「富山ブラック 麺家いろは」。東京ラーメンショーで2009~12、14年にV5を達成している。「ワイワイグルメ」にはそば屋もうどん屋もつけ麺屋もあり、飲んだ後のシメの麺類もいろいろ選べる。

 他には、手羽先を中心に刺身、餃子、漬物など居酒屋メニューを幅広く提供する「居酒屋革命酔っ手羽」。築地の仲卸がプロデュースした炭火焼干物食堂「越後屋平次」。赤身肉のプロックステーキが売りの肉バル「Block」。「東京ソラマチ」、「グランフロント大阪」などで人気の「世界のビール博物館」の系列店、ビアバー「クラフトビール タップ」。つけ麺チェーン「三田製麺所」。といった店が、「YODOBASHI  YOKOTYO」に集結した。

 また、「YODOBASHI  YOKOTYO」の周囲には、麻布十番に本店があるうどん「山半」、ラーメンの「富山ブラック 麺家いろは」、越後へぎそば「そば酒房 凛や」と麺類の店が配置され、シメも選べるラインナップになっている。

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牛かつ「京都勝牛」。

 さらには、第1期でオープンしたところでは、共に食べ放題の串揚げ「串家物語」としゃぶしゃぶ・すき焼き「但馬屋」が並んでいたり、郷土料理の札幌スープカレー「カレー食堂 心」と仙台「肉匠の牛たん たん之助」が並んでいたりする。前出「富山ブラック いろは」はその通路向いに位置する。

 第2期オープンでは、前出の「そば酒房 凛や」をはじめ、和食「おぼん de ごはん」、うなぎ・櫃まぶし「うな匠」、回転寿司「こだわり廻転寿司 まぐろ人」、牛かつ「京都勝牛」、とんかつ「とんかつ浜勝」が、互いに隣または通路の向いにあって、和食ゾーンが形成されている。

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「グラン・ブルトン・カフェ」は松嶋啓介シェフがプロデュースした、フランス・ブルターニュ地方の名物ガレットをメインに据えたカフェ。

 しかし、むしろ第2期では、これまで取り込めて来なかった女性客の獲得が大きな柱となっている印象で、第1期の夜の飲みの需要開拓と共に、重要なテーマとなっている。女性客を集めるために、カフェ需要を兼ねたフレンチ2店、イタリアン2店が、互いに隣接した形で集められている。

 まず、「グラン・ブルトン・カフェ」は、フランスのニースと原宿で「KEISUKE MATSUSHIMA」を経営する松嶋啓介シェフがプロデュースした、ガレットをメインに据えたカフェ。松嶋氏とダイヤモンドダイニングが組んで展開している、フランス各地の特色ある郷土の料理を紹介する、"フレンチキスプロジェクト"と名付けられた食紀行シリーズの第3弾である。

 ガレットは、フランス・ブルターニュ地方のそば粉を使ったクレープ。ブルターニュ名産のリンゴから醸造する発泡性のあるお酒、シードルと共に味わってほしいヘルシー志向の店だ。

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女性に人気が高い「ザ・フレンチトースト・ファクトリー」。

 同じく女性客が目立って多いのは、フレンチトーストの「ザ・フレンチトースト・ファクトリー」である。イタリアンは世田谷の用賀に本店がある「ピッツェリア マルデナポリ」と、今までありそうでなかった石焼パスタ「kiteretsu食堂」が新業態で登場した。

 「kiteretsu食堂」の一番人気カルボナーラは、石焼ビビンパのような器で提供され、砂時計で時間を計って、別添えの粉チーズを振りかけ、上に乗っている温泉卵を麺とをかき混ぜて食べる。つまり、仕上げは食べる人がやる。流行りになるか、注目の新感覚メニューだ。経営は、丸の内の地中海料理「アンティーブ」、自由が丘の焼肉「べこ亭」などを展開するDRC。

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第2期、昨年11月にオープンしたフロアーの一角。

 また、第2期では中華「万豚記」、タイ料理「タイ国麺飯 ティーヌーン」、韓国料理「ポチャ」とアジアの料理が並ぶゾーンがある。

 かと思えば、焼肉ダイニング「牛太金星」、トンテキ「東京とんてき」、ロティサリーチキン「クイーン・オブ・チキンズ」と、牛・豚・鶏の肉料理が並ぶゾーンもある。「牛太金星」と「但馬屋」、「block」は、いずれもダンシンダイナーの経営。「東京とんてき」は渋谷に次ぐ2号店で、男性の一人客が多い店。「クイーン・オブ・チキンズ」は新橋に本店があり、恵比寿や大阪の千里中央にも支店を持っている。

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フードコートの「ライブフードマーケット」。ステーキ、牛たん、海鮮丼、オムライス・パスタ・サラダ、パンケーキ、カフェの6つの業態が集積。内装はヨーロッパのマルシェをイメージ。

 ファミリー向けには、第1期オープンのオープンキッチンによるライブレストラン「ライブフードマーケット」や第2期オープンのステーキ&ハンバーグ「ミートラッシュ」が出店。

 「ライブフードマーケット」はジローレストランシステムが運営するフードコート型レストランで、ヨーロッパの市場をイメージした内装。ステーキ、牛たん、海鮮丼、オムライス・パスタ・サラダ、パンケーキ、カフェの6つの業態が集積するセルフサービスの店だ。140席あり、イベントが開かれる日もある。約40もの業態を持つジローレストランシステムより厳選した構成となっており、女性のお一人様にも対応している。

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「ライブフードマーケット」が売りとしている幅広いメニュー。

 以上、和の業態、肉の業態が目立ち、和食を求めるインバウンドの外国人や肉好きの秋葉原に集まって来る男性客が強く意識されていることがわかる。しかし、魚料理も、洋食も、中華も探せば必ずあり、「ないものはない、秋葉原グルメの新名所」との宣伝文句も大言壮語ではないと思えてくる。それくらい、緻密な店舗の構成になっている。

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1階自由通路に、食物販6店からなる「ワイワイマルシェ」もオープン。

 なお、「ヨドバシAkiba」1階自由通路に昨年11月20日、食物販6店(一部にイートイン付きの店もある)からなる「ワイワイマルシェ」もオープンした。ラインナップは、フレンチベーカリー「ブリオッシュドーレ」、唐揚げ「あげばか」、たこ焼「築地銀だこ」、シュークリーム「ビアードパパ」、ワッフル「グレイズド・ワッフル」、クレープ「クラブマリオン」となっている。

 従来は銀行のATMが並んでいたが、場所を移動させて賑わいをつくろうという意図だ。「ワイワイマルシェ」はこれらに従来からあったベーカリー&カフェ「ヴィ・ド・フランス」を加えた、1階の7店で構成されている。

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新感覚「ワイワイグルメ」内「kiteretsu食堂」の石焼パスタ。

 食事をする場所が乏しかった秋葉原であるが、昨年7月にはJR御徒町駅との間のガード下に、JR東日本都市開発が「B-1グランプリ」と提携した「B-1グランプリ食堂」もオープンしている。「B-1グランプリ」に出展する10の団体が、まちおこしの一環として、郷土の大衆的な料理のメニューを提供。「甲府鳥もつ煮」、「なみえ焼そば」、「十和田バラ焼き」、「勝浦タンタンメン」などで優勝経験のある団体も交えて、店舗を監修している。

 このようにグルメとは縁遠いイメージの電気街に、個性的な飲食店の進出が目立ち始めている。そうした動きの先端にあってトレンド発信力も備えているのが、「ワイワイグルメ」といった位置づけになるだろう。

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