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2016年2月26日(金)18:43 トレンド

池袋東武が25年ぶりのレストラン街改装。飲めるフロア新設、鎧塚シェフがスイーツ中心のフレンチ出店。

東京オリンピックに向け新商業施設が続々オープン

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2016年2月25日執筆

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 2015年後半から16年前半にかけて、東京を中心に新しい商業施設のオープン、レストラン街のリニューアルが相次いでいる。商業施設事業者は、2020年の東京オリンピックに向けて変化を遂げようとしている東京を、日本をどのように表現しようとしているのか。まとめてみた。(6回シリーズ)

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東武百貨店レストラン街「スパイス」に、人気パティシエの鎧塚俊彦氏がプロデュースした「TOSHI STYLE」が11階にオープン。

 東武百貨店池袋本店のレストラン街、ダイニングシティ「スパイス」(11~15階)が25年ぶりの全面リニューアルを完了。2月26日にグランドオープンした。

 2015年10月の第1期の14階と15階オープン、16年1月14日の第2期の13階オープンに続き、今回の第3期の11階と12階オープンで、都内百貨店最大級となる46店舗が集うレストラン街として生まれ変わった。

 今回のリニューアルは「Good Restaurants ~食べたいものが必ず見つかる池袋のメインダイニング~」をコンセプトに全5フロアーを一新。東武百貨店では、前期比で客数118%、売上120%を目指すと意気込んでいる。

 「元々設備が老朽化していたことに加えて、商品構成、MD、店舗が時代にそぐわなくなっていました。今のお客様は単にモノを買いに来るのではなく、楽しい時間を過ごせるシーンに時間消費される面があって、モノを揃えただけではなかなか、百貨店に来てくださらない。そこでレストランを充実させて、下の売場にも足を運んでくださるお客様を増やすシャワー効果を狙っています」と、東武百貨店賃貸事業部・前田康行部長はリニューアルの意図を説明している。

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ベーカリーカフェ&レストラン「ヴァン ドゥ リュド」。11階にオープン。

 従来、東武百貨店池袋本店のレストラン街の顧客はシニア層が大半で、高齢化が進んでいた。リニューアルでは、もっと若い人、さらには女性をも取り込んで、顧客層を広げるのも目的としている。ターゲットとしては、池袋を利用する東武東上線沿線の住民をメインに考え、沿線住民のライフスタイルに沿った店づくりを心掛けたという。

 10月に第1期リニューアルオープンした、14階・15階は昨年12月までの売上前年比が140.5%を記録している。"お酒が飲めるデパレス"として、会社帰りの飲み会や女子会、休日は家族連れの方々にも好評を得ている。これまで来なかった若い女性、カップルも来るようになって、狙い通りのリニューアル効果が出ている。

 また、既存店が中心の今年1月に第2期リニューアルオープンした13階においても、これまで客数220%、売上170%の増加と好調なスタートを切っている。

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「TOSHI STYLE」の料理。

 さて、今回2月26日にオープンした、第3期の11階と12階のフロアーを見ていこう。

 11階は「カフェ&ダイニング」がテーマで、バラエティに富んだ9店が集積。全てが新業態を含めて池袋エリア初出店となっている。全般に新規の顧客、すなわち若い女性、カップルが意識されているが、かなりおしゃれをして来たほうがいいような店も混じっている。

 その中でも話題の店は、人気パティシエの鎧塚俊彦氏がプロデュースした「TOSHI STYLE」である。経営は「築地銀だこ」で知られるホットランドのスイーツ&カフェ事業部門関連会社1016。

 鎧塚氏としても初のダイニングレストランで、フレンチを中心に、旬のフルーツなどをふんだんに使ったデザートを中心に据えた、コースメニューを提供する。これは、パティシエが料理をつくったらどうなるかという、新しい視点で提案するもので、「デセールレストラン」と称している。デセールとは、デザートを意味するフランス語。

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「TOSHI STYLE」では最後に提供されるスイーツがメインのコースとなっている。

 選べる、味わう、感じる、これら3つの楽しさが追求されており、メニューの中から好きな物をチョイスして好きな1皿に仕立てられる。どの料理もサイズが小さく、前菜、メインもスイーツのようなフォルム。少量の料理を多種類食べたい、女性のニーズに合っている。最後に出てくる池袋店限定のスイーツに向けて食事が盛り上がり、スイーツで頂点に達する演出となっている。

 メニューは、1800円(ランチ限定)、3800円、5000円の3つのコース。また、14時から17時のティータイム限定でドリンク付きのデザートプレート(1500円)を販売する。

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熟成肉ハンバーグ&ステーキ「オールド マンハッタン」。デザインは神谷利徳氏。

 新業態は他に2つあり、熟成肉ハンバーグ&ステーキ「オールド マンハッタン」と、ビュッフェレストラン「シュプリーム」。

 「オールド マンハッタン」は名古屋を本社とする創業116年の老舗精肉店「スギモト」を経営する杉本食肉産業が出店したエイジングビーフの店。同社は東武の商業施設では、「東京ソラマチ」にしゃぶしゃぶとすき焼きの店を出している。肉の専門家が培った技術で、高温で焼き上げたエイジングビーフを、ニューヨーク並みの価格、すなわち六本木界隈のステーキハウスより2割ほど安い価格で、リーズナブルに提供する店だ。店名と内装は、ニューヨークが意識されている。

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「オールド マンハッタン」のビーフステーキ。TボーンやLボーンも精肉店直営なので、リーズナブルに提供できる。

 「シュプリーム」はホテルのラウンジのような高級感ある落ち着いた空間で、和・洋・中さらにデザートまで、60~70種類もの料理が食べ放題のビュッフェレストラン。グリルハンバーグ、ローストビーフ、ゆでた紅ずわい蟹、アップルパイなど幾つかのスペシャルな料理は、でき立てを提供するプレミアム感あるビュッフェである。経営はクリエイト・レストランツ・ホールディングス。想定単価2300円で席数は110席。

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ホテルのラウンジのような「シュプリーム」店内。ビュッフェレストランとは思えない。

 他にも、フレンチではベーカリーカフェ&レストラン「ヴァン ドゥ リュド」が出店。MOF(フランス国家最優秀職人章)を受賞したリシャール・リュドヴィック氏のパンをファミリービストロスタイルで楽しむ店だ。

 イタリアンでは、オーガニック・イタリアンの「アミーコ ビオ エ ナプレ」が出店。これは日本初の飲食店向けオーガニック認証(リーファースオーガニック認証)を受けた南青山「ピッツェリア・トラットリア ナプレ」の系列で、厳選されたオーガニック食材を使用。

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ハワイアンカフェ「ホノルルコーヒー ダイナー」。

 タイ料理「サイアム セラドン」は、トムヤムラーメンを考案した、本格的タイ料理店。ハワイアンカフェ「ホノルルコーヒー ダイナー」は、コナコーヒーはもちろん、パンケーキにとどまらず食事も楽しめる、日本初のダイナースタイルとなっている。

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「つくみ」はカフェ需要を取り込める和の業態。

 「回転寿司トリトン」は、北海道北見市に本社がある札幌やオホーツクエリアで人気の回転ずしで、東京では「東京ソラマチ」に続く2店目。和食「つくみ」は、ビー・ワイ・オーの「おぼん de ごはん」より少し高級感ある和定食&和カフェの店である。

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12階と13階は吹き抜けで一体感を表現した。

 12階の12店と、1月の2期にオープンした13店の計25店は、「バラエティダイニング」と呼ばれる同じカテゴリーの店舗群で、ほとんどが既存店となっており、内装が一新されている。両階は吹き抜けが設けられて、つながりがあることが空間的にも示されている。

 新しく入ったのは、12階が三代目市川猿之助氏がディレクションした創作和食「赤坂 うまや」と和カフェ「神楽坂茶寮」で、いずれも池袋エリア初出店。

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12階「バラエティダイニング」のフロアー風景。

 11階は大かまど飯「寅福」、中華お粥と麺「粥餐庁」が池袋エリア初出店。豚骨ラーメン「ラーメン 龍の家」は期間ではなく常設としては池袋エリア初出店である。もう1店の新規の店はお好み焼の「大阪道頓堀 ぼてぢゅう」だ。

 既存店は、「銀座ハゲ天」、「とんかつ和幸」、「不二家レストラン」、「新宿中村家」、「洋麺屋五右衛門」、「鼎泰豐」など、いずれも強い固定客が付いている店。

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2月25日のレセプションで厨房に立つ、御存じ中華の鉄人「四川飯店」オーナーの陳建一氏。

 そうしたなかで、12階にある中華の鉄人・陳建一氏がオーナーの「四川飯店」では、「辛いよりも、香辛料が豊富で味のバラエティに富んでいるのが四川料理の特長。四川の良さを、もっと広く伝えていきたい」と、スタッフの気合が入っていた。

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高級感ある15階のフロアー。

 2015年10月にオープンした第1期の14階と15階リニューアルは、東武百貨店としては攻めた。

 15階は「プレミアムダイニング」としてゾーニングし、顧客単価7、8000円を超える高級店を4店配置。中央に顧客が休憩できるパブリックスペースを広く取り、暗めな照明で、ホテルのラウンジのような高級感を醸し出している。

 「誕生日のような特別な日のお食事、会社などの接待にも広く活用されています」(東武百貨店総務部広報担当プランナー・宮下恵氏)と、従来の百貨店のレストラン街では取り込めなかった顧客を集めている。雰囲気としては、「丸ビル」の最上階レストラン街をほうふつさせる。

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15階「パリの朝市」。完全に路面店の佇まいだ。

 入居するのは、フレンチ「パリの朝市」、京懐石「美濃吉」、すき焼き・しゃぶしゃぶ「人形町今半」、中国湖南料理「華湘」で、新規出店は「人形町今半」のみである。残りの3店はしっかりと固定客をつかんで安定している店。

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魚介イアタリアン「キッチングリップ」。

 14階は夜飲めることをテーマに、女子会への対応も考慮したカジュアルダイニングが並んだ「バー&ダイニング」のゾーンで、こちらも従来の百貨店のレストラン街とは一線を画す。

 入居する8店は、パーティースペースの「東武バンケットホール」以外は、いずれも池袋初出店。

 イタリアンは2店あって、魚介イタリアン「キッチングリップ」、バール「ポロポロ」はいずれも新業態。「キッチングリップ」はオーガニックレストランに定評のあるグリップセカンドの経営。「ポロポロ」は日本レストランシステムの経営。

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スペイン料理&バル「ビキニメディ」店内。意外にも年齢層が高い人にも受け入れられている。

 スペインバル「ビキニメディ」は「小笠原伯爵亭」初代総料理長で"ピンチョスの伝道師"の異名を持つジョセップ・バラオナ・ビニェス氏が監修した店。経営はフォーシーズ。

 和の業態は4店あり、博多もつ鍋・水炊き「蟻月」、焼肉「焼肉チャンピオン」、灘の酒と和食「御影蔵」、焼鳥「鶏乃物語」。

 「御影蔵」はありそうでなかった灘の酒の魅力を、季節料理と共に楽しむ日本酒ダイニングで、経営はニュートーキョー。「丸ビル」に続く2店目である。搾りたての生原酒、酒樽から直接注がれる樽酒、温度にこだわった燗酒などを提供する。

 「鶏乃物語」は焼鳥に合うワインに、釜飯も売りにした、フジオフードシステムの新業態だ。

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ありそうでなかった灘の酒と和食の店「御影蔵」。

 このように東武東上線沿線の顧客に向けた商品展開で、先端を目指すよりも保守的なイメージが強かった東武百貨店が、今回は相当思い切ったレストラン街「スパイス」のリニューアルを行った。

 商業施設におけるレストラン街の相対的な地位の向上、新規顧客獲得のための集客装置としての重要性の高まりを、改めて認識させられた。

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