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フードリンクレポート

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2015年10月15日(木)16:51

玉袋筋太郎氏が考えるスナックの魅力と未来。

密かなブームが到来しているスナックの今(4-4)

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取材・執筆 : 中山秀明

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 数ある飲食業態の中で、極めて特異なジャンルがある。それが「スナック」だ。飲食を楽しむところであり、多くはカラオケで歌える店であり、ママをはじめとする店員とディープな話ができる場所でもある。歴史は古く、全国に20万軒は存在するという説があるものの、詳しい実態は謎だ。また、紹介する情報誌は希少で、『食べログ』にもジャンルはなく、検索してもほぼ出てこない。

 そう考えると一見では衰退していくと思われそうだが、そんなことはない。最近では「一般社団法人 全日本スナック連盟」が誕生したり、その会長である玉袋筋太郎氏によるTV番組が放送されていたりと、盛り上がりを見せている。さらには『スナックキングダム(SNACK王国)』や『スナッカー』という専門の情報サイトがあったり、有名雑誌で特集号が出版されたりと、実は密かなブームになっているのだ。ということで今回はスナックに焦点を当て、その魅力を改めて紹介するととともに人気の秘密に迫りたい。玉袋氏や現役ママなど関係者の証言を交えながら全4回のレポートで綴っていく。

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リハーサル前の楽屋にて。公式のTシャツを着用して準備は万全だ。

 これまで、スナックの今昔にはじまり、ママへのインタビューを交えた体験レポート、そして楽しみ方を考察してきた。さまざまな角度から切り取ることで、現代のスナックの姿を伝えられたのではないかと思うが、ラストはついに一般社団法人 全日本スナック連盟の会長・玉袋筋太郎氏が登場。同連盟の定期イベントに参加し、開始前の貴重な時間にインタビューを行い、氏が考えるスナックの魅力や楽しみ方などを根掘り葉掘り聞いた。本特集の総括として、これからのスナックのあり方を踏まえながら改めてスナックの素晴らしさをお伝えしていきたい。

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一般社団法人 全日本スナック連盟の公式サイト(http://www.snaren.jp/)。スナックファンとのコミュニケーションを中心に、スナック紹介、イベント開催、オリジナル商品の開発など、スナックの存続と繁栄に寄与することが連盟の目的だ。

 そもそも、なぜ玉袋氏はスナックにハマったのか。理由はいくつかあるが、ひとつは先輩に連れて行ってもらったことが大きい。また、実家がスナックをやっていたことや、若手時代にスナックのアルバイトをしていたことなども挙げられる。楽しく飲み、幸せな顔をしているお客様の笑顔を見ながら成長し、やがて逆の立場で利用して、改めてスナックの奥深さを知ることになったのだ。

「最初は薄給だから、小遣いで飲みになんて行けない。でもたまに連れて行ってもらえることがあって、そういうときに先輩の別の顔なんかが分かるワケ。いつもは威張ってるけどママには頭が上がんないとかね。おごりで酒を飲めるのはもちろんだけど、先輩の違った面が見られるのも楽しかった。今は昔と違って普通の会社でも先輩からの誘いとか少なくなってるかもしれないけど、上下の飲みニケーションって実は大事なことだよね。俺は恩返しだと思って今では後輩を連れて行ってるけど、この古き良き文化はバトンタッチしていかなきゃいけないって思う」

 スナックは水商売ではあるが、さまざまな人が出入りして深い話を語ってくれたり、譲り合いなど大切な事を勉強できたりする場所。大人の社交場として人付き合いを学ぶには絶好の場所だと玉袋氏は語る。

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我々が参加したイベントはこちら。ここでもスナックの選び方、楽しみ方をレクチャーしてもらえる。次回は10月25日の開催だ。

 玉袋氏は『人生酒場 ~唄は夜につれママにつれ~』というTVのレギュラー番組を放送している。ランダムに毎週1軒のスナックに訪れ、ママとのトークでその魅力に迫るという内容だ。それもあって昨年は約140軒ものスナックに訪れたというが、プライベートでも都内に行きつけがあり、頻繁に通っている。まさに達人といえる領域だが、良い店の見分け方はあるのだろうか。また、楽しみ方にコツはあるのかなどを伺った。

「ひとつは看板かな。見た目に味がある店は古くから営業している証拠だから、それだけ長く愛されてるって事でしょ。逆にいうと、カッティングシートで看板だけはとりあえず作りましたっていう感じの店は新しそうだから、俺は古めのほうを選ぶかな。もちろんハズれたことは一度もないよ」

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イベントでは発売されたばかりの持ち曲「恋の花咲くお年頃」を熱唱。右はデュエット相手のタレント・冨田恵美子さん。

「ぬか漬け」を例に挙げ、常連客に日夜もまれているような店は深みがあって面白いと語る。そして店選びに関してのメソッドも教えてくれた。

「最初は旅行のついでにスナックに行くのがいいんじゃないかな。ホテルのフロントやタクシーの運ちゃんとかに聞けば、悪い店なんて教えないから。で、そういう地方のスナックには地元の酒好きが集まってるから、観光雑誌に載ってない激ウマの店をバンバン教えてくれる。住民しか知らないような穴場のスポットを知れることもあるし、おススメだよ」

 確かに、地方には見慣れた飲み屋がないことも多く、観光ガイドや食べログなどを見ても情報は少ない。だが、住民の夜の憩いの場であるスナックは比較的容易に見つけられるだろう。旅先で飲みたくなった際はまずはスナックを足掛かりにするのが賢明かもしれない。

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歌の後はトーク。スナックに関するネタを中心に爆笑の輪が広がった。

 もちろん地方ではなく、都会のスナックでもその地域やその店特有の魅力が詰まっている。中には第2回目で紹介したゴールデン街のルマタンが通信系の記者たちの社交場だったように、個性的な人たちと出会える店だってあるだろう。最初はなかなか勇気がいるが、まずは感性に任せて近所の行きやすいスナックでいいから飛び込むべきだと玉袋氏。

「古くからある店は特にだけど、ママはベテランだから、慣れてるかどうかなんてスグに分かるし気持ちも汲んでもらえるよ。良い店だと、常連さんもママと同じような気遣いで接してくれる。で、成り行きに任せて店の型にハメてもらうのが一番。通っていけば店でのキャラができてくるからあとは楽だよ」

 意外にも、若い女の子でスナックにハマるパターンが多いという。店側のママからすれば、スナックは男性客が多いので、同性客の来店は新鮮で嬉しいもの。客からしても、普段あまり話す機会の少ない女の子が同じ空間にいれば、それだけで盛り上がる。好待遇されることも珍しくなく、それがきっかけでスナックを好きになり、やがて自らがママになるというケースも良くあるとか。

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都内であれば中野や阿佐ヶ谷のスナックに行くことが多いとか。2軒目や3軒目をして利用するほか、一杯ひっかけるためにブラりと立ち寄ることもある。

「確かに全体的には高齢化してるけど、若いママの店だってたくさんあるからね。全スナ連での活動はもちろんだけど、スナックには普通の飲み屋にはない人間的な魅力がいっぱいあるから、本当に伝えていきたい。開業に関しても、もし『ママになりたいけど資金面の問題でママになれない』って子がいたら、いずれ全スナ連でのサポート事業なども展開できたらいいなと思ってるよ」

 玉袋氏は、「日本が世界に誇れる客商売こそがスナック!」と断言する。考えてみれば、スナックはおもてなしも独特だ。チェーン店のようなマニュアルなどは当然なく、ママやマスターが人生で培ったサービス精神がダイレクトに伝わる独自の接客。料理や酒のおいしさよりも、人柄。すなわちおもてなしがそのまま特徴となる業態がスナックといえるだろう。2020年の東京オリンピックをきっかけに、日本の「お・も・て・な・し」は海外からの注目の的となった。そんな今だからこそ、スナックには見習うべきものがたくさんあり、スナック自体も密かなブームになっているのではないだろうか。さあ、素晴らしい出会いと体験への扉を開こうではないか。スナックに行こう!

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