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フードリンクレポート

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2015年10月07日(水)19:30

コーヒーの聖地、清澄白河でカフェを盛り上げる、愛情たっぷりなパン「コトリパン」。

進撃のパン!急増するパン屋の進化系スタイルと未来を探る。

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取材・執筆 : 須田萌子 2015年10月7日

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 ここ数年、世の中のパン熱が上がっている。街に一軒しかなかったパン屋が、二軒、三軒と徐々に増え、テイクアウト専門だけではなく店内に飲食スペースを併設する「ベーカリーカフェ」「ベーカリーレストラン」も増え、天然酵母や国産小麦、無添加、オーガニックを謳う「こだわり派ベーカリー」も見かけることが多くなった。パン好き同士が集まって人気のパン屋を行脚する「パン屋めぐり」が流行り、日本各地のパン屋を求めてわざわざ旅に出パンマニアも続出。数十軒のパン屋が一堂に会す「パンまつり」なるイベントも開催されている。今回は、フード業界の中で快進撃を続ける「パン屋」にスポットを当て、さまざまなタイプのパン屋を訪問。進化するパン屋のスタイルや今後の可能性についてレポートする。

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東京・下町、清澄白河にある「コトリパン」。

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木のぬくもりを活かした外観に、手描きの黒板。温かみあふれる雰囲気の「コトリパン」は、2012年4月に創業した比較的新しい街のパン屋さんだ。
 
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店舗はレトロなコトリのすだれが目印。お客様が5〜6人も入ればいっぱいになるこじんまりとしたかわいらしい店だ。

 立地は、東京メトロ清澄白河駅から徒歩約10分。カフェや雑貨屋が並ぶ大通りから少し離れた「こんなところにパン屋さんが・・・?」と思いもよらない住宅街の中にありながら、朝の8時の開店から店舗には絶えずお客様が来店。自転車だけではなく車でやってくる主婦たち、近所で働いている女性やスーツ姿の男性など途切れなく訪れるお客様の多さから、この街でどれだけ愛されているかが伺える。

 「コトリパン」のオーナーは、大川泰功(やすのり)氏。アパレル関係、建築関係の仕事を経て、30代後半でパン業界に転身したユニークな経歴の持ち主だ。コトリパン開業以前は、清澄白河の大通り沿いにあったオシャレなパン屋に約2年半勤務していた大川氏。しかし前店で販売するパンがハード系で価格も高く、街に暮らす人々のニーズに合わず閉店したことを機に「コトリパン」をオープンした。とにかく親しみやすいパン屋にしたかったという大川氏は「毎日繰り返し利用してもらいたいから、毎日でも買える低価格、毎日来ても飽きないようにたくさんの種類のパンを揃えている」という。

 店内にはパンだけではなくずらりとアニメや漫画のキャラクターのフィギアも並び、店内に流れるBGMも「サザエさん」のサウンドトラックだ。「下町のパン屋だから、サザエさんのワンシーンみたいに楽しい気分になってもらえたら」と、大川氏の思いやりが店内の至る所ににじみでている。

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店内に一歩入ると棚には何十種類ものパンがぎっしり!

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店名を冠した「コトリパン」(150円)には手描きのコトリ。愛嬌たっぷりなだけではなく、カスタードとチョコクリームもたっぷりだ。

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「コトリパン」で特に充実しているのがボリュームたっぷりな惣菜パン。定番のカレーパンやホットドッグだけではなく、「マグロおろしポン酢ドック」やからあげとマスタードを挟んだ「マスからドック」、「フィッシュバーガー」、「ラザニアロール」などバラエティ豊かに揃い、男性のお客様が多く来店しているのも納得である。大川氏は「うちの店におすすめはない。好みは人それぞれだから、メロンパンが好きな人もいれば、カレーパンが好きな人もいる、お客様が好きなものを選んでくれればいい」という。そんな飾らないオーナーの性格もまた、「コトリパン」にお客様がやってくる理由だろう。

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「コトリパン」では毎日80〜100種類のパンを1300〜1400個焼く。

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同じパン生地でもトッピングを変え、たくさんの種類のパンを焼き上げる。

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パン生地を成形しては焼き、成形しては焼き、午前中の厨房は大忙しだ。お客様は当日のランチやおやつに買っていくため、惣菜系、菓子パンのほとんどは午前中で売り切れるという人気ぶり。営業時間は20時までだが、たいていは閉店時間より前にクローズするそうだ。

 「コトリパン」はパンの店頭販売のほかに、近隣の飲食店数軒にパンを提供。その代表格が清澄白河でサードウェーブコーヒーブームを巻き起こしている「カフェ」のひとつ、「アライズコーヒー」だ。提携のきっかけは、アライズコーヒーのオーナー林氏がカフェを開業する前に「コトリパン」にパンを買いに来ていたこと。同じアパレル系専門学校の先輩後輩だったこと、同じ千葉県出身だったことなど、さまざまな共通点が縁を生み親交が深まった。林氏からアライズコーヒーオープンの際に「コトリパンのパンをカフェに置きたい」と依頼があり快諾。「アライズコーヒー」は大川氏にとって特別な存在だという。

 現在アライズコーヒーは清澄白河内に2店舗展開し、毎朝「コトリパン」に足を運びパンを仕入れている。焙煎所を兼ねた「アライズコーヒー ロースターズ」では、コトリパンの既存商品であるフレンチトーストやバーガー系など数種類を毎日平均30個販売。「あくまでも「コトリパン」と同じプライスで提供して欲しいとお願いして、アライズさんにも利益がでるように通常価格の6割で卸しています」(大川氏)。


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もう一店舗は落ち着きのあるカフェスペースを持つ「アライズコーヒー エンタングル」。「コトリパン」から徒歩4分のご近所さんだ。同店ではフランスパンを仕入れ、カフェ独自でサンドウィッチに加工し販売している。

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「アライズコーヒー エンタングル」で提供されているサンドウィッチ。いずれも390円で、常時3種類、休日は4種類に増やすそうだ。

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バゲットにハムやサーモン、チーズなどのシンプルな具を挟み、コーヒーの風味を邪魔しない仕立てにしているそうだ。

 「コトリパン」が図らずも、清澄白河はサードウェーブコーヒーブームの影響と、「ブルーボトルコーヒー」が日本一号店の出店地に選んだことをきっかけにここ1〜2年で「コーヒーの聖地」に進化した。それだけではなく、個人経営の飲食店やライフスタイル雑貨ショップ、アートギャラリーも増え、休日のデートスポットやカフェめぐりスポットとして、いまノリに乗っている街でもある。

 「コトリパン」と「アライズコーヒー」がタッグを組むことは、地元に暮らす人々や清澄白河でカフェめぐりを楽しむ人々に、より豊かな時間を提供するとともに、清澄白河の街づくりにもひと役買っている。徒歩圏内の店同士が強く結びつくことでよりよいサービスが生まれ、お客様も増え、街全体が盛り上がっていくのだ。街の人を想い、近所の飲食店を想う「コトリパン」は、街を活気づけるお手本のようなパン屋である。

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