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2015年9月29日(火)16:49 トレンド

アフター相席で行くステーキ店。東京で最も「やれる店」はルビー・ジャックスだ!婚活ならウルフギャング!

相席・婚活居酒屋&バー大爆発を追う(5-4)

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年9月24日執筆

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 現代の日本は少子化、晩婚化、非婚化が進み、若者が恋愛を忌避する傾向が強いと言われる中、今年になって、見知らぬ男女がお店で相席になるシステムを売りにした、相席居酒屋、相席バーといった相席業態の飲食店が急伸している。一方で、合コンが衰退、それに代わる街コンもピークを過ぎて、合コン、街コンの舞台であった一般の居酒屋は苦境に立たされている。右肩下がりの合コン、街コンと入れ替わるように、恋人ができる、結婚もできるかもという顧客の期待感から、勢いを増す相席専門業態であるが、歌舞伎町などでぼったくり店が出現するといった問題も生じてきている。相席業態は果たしてこのまま大きく成長できるのか。取材してみた。(5回シリーズ)

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「ルビー・ジャックス ステーキハウス&バー」。センター奥の巨大な絵画はアーティスト小澤雅志氏作「アンガス」。

 これだけ相席業態が流行っているということは、相席して気が合ってその日のうちに、あるいはLINE、メールなどの連絡先を交換して後日、行くような店も流行ってきているということになるのではないだろうか。気軽に出会えるという点では、相席は合コンと同じくらいカジュアルであり、婚活パーティーはもちろん、街コンよりもハードルが低いということになるだろう。

 気軽に出会って、きれいに言うと「カップルで行きたい店」、いささか品がないが言い換えればデートして「やれる店」の事情はどうなっているのだろうか。「東京いい店やれる店」(小学館)を1994年に上梓。東京の飲食店をフィールドワークし、「やれる店」研究30年の実績を誇る、ホイチョイ・プロダクションズのナビゲートにより、肉ブーム、とりわけ熟成ビーフのブームが続く中、ステーキハウスの情報発信地となっている六本木の事情を考察してみよう。

 ホイチョイでは、写真週刊誌「フラッシュ」(光文社)にて、「ホイチョイ・プロダクションズの東京いい店やれる店」を、2015年5月12日・19日合併号より新たに連載中である。ホイチョイによれば、やれる店には7条件がある。その7条件とは、①とにかく新しいこと、②秘密めいた場所にあること、③内装のセンスがいいこと、④照明は暗めなこと、⑤客層がいいこと、⑥海外の有名シェフがやっているとか、ブランド性があること、⑦できれば狭いこと――を挙げている(「フラッシュ」2014年12月30日号、「東京いい店やれる店年末スペシャル)。また、「東京いい店やれる店――裏ベストの12軒はこれだ!」(「GQジャパン」2012年6月号、コンデナスト・ジャパン)によれば、「やれる店」とは「ルックスも財力も十人並みのわれわれ凡人」が、「女性を連れて行くと、彼女が「この店を選ぶなんて、この男、なんてイケてるの!」」と思うような店を指す。

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「東京いい店やれる店」はスマートホン・アプリになって毎週3店、覆面調査により更新中。「新東京いい店やれる店」(2012年7月刊)では35歳以上をメインターゲットにした。現在、「フラッシュ」で連載中の記事やスマートホン向けアプリも、同様のターゲット。

 ホイチョイによれば、「味なんて所詮主観の問題」で、明らかに不味いのはよろしくないが、デートで行く店は「味はどうでもいい」。心理学的に「暗い部屋に一緒にいた男女は、明るい部屋にいた男女よりも親密になる」、「女性は、狭い空間で至近距離にいた異性に好意を持つ」、「人間は、快適な空間で一緒に過ごした相手の対人評価を上げる傾向がある」ので「内装のセンスのいい店に行けば、「やれる」度は高まる」としており、「これらはすべて客観」であり「科学なのだ」と主張している。ホイチョイに確認すると、「フラッシュ」の連載はそもそも週刊誌の購買層が30代以上で、若い人は買わないことから、M2・F2世代(35歳~49歳)以上を主たるターゲットにしているとのこと。外国人の有名シェフを起用するなど、顧客層に外国人や資産家が多く、高過ぎず、雰囲気とサービスが良くて、全般にリーズナブル感のある店がいいという。

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「ルビー・ジャックス ステーキハウス&バー」は周囲に外資系企業、大使館も多いため、顧客の外国人比率が非常に高い。ここは日本なのかと思えるほどだ。

 最近の20代の若者は真面目で、特に男性は学生時代から交際している女性とずっとつきあって結婚するケースが多いらしい。合コンが盛んだった居酒屋全盛時代は、全般に学生時代に交際していた相手とはいったん別れて、社会人になって新しい交際相手を探す風潮があり、何度かの出会いと別れを繰り返して結婚したりしなかったりとなったが、今は合コンが衰退してシャッフルが起こりにくくなっている。そこで、合コンに慣れたM2・F2世代もしくはそれより上の世代と、男性に比べれば不真面目な人がやや多く、ちょいワルおやじと交際したいと思っている一部の若い女性を対象に、「やれる店」研究に励んでいるらしい。「相席屋」もR30業態を展開し始めているように、相席専門店の利用者の年齢層が上がってきているので、M2・F2向け、ちょいワルおやじとちょいワルギャルの組み合わせ向けの大人の店が、相席業態隆盛により今後とも注目されていくことになるだろう。

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「ルビー・ジャックス ステーキハウス&バー」のシンボル、小澤雅志氏作「アンガス」の絵葉書。チョコレートでできているようにも見える。

 ホイチョイがイチ推しする「やれる店」づくりの名手は、ECNホールディングスである。北青山AOビルの「TWO ROOMS グリル/バー」(2009年オープン)、六本木の「R2サパークラブ」(2011年オープン)に続き、六本木1丁目のアークヒルズサウスタワー2階に「ルビー・ジャックス ステーキハウス&バー」を2014年4月にオープンしている。新しい店の方が望ましく、従って、現時点で東京で「やれる店」の最高峰にあるのが「ルビー・ジャックス」ということになる。

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「ルビー・ジャックス ステーキハウス&バー」の開放感あるテラス。

 ECNのセンスがどのくらいイケてるかということだが、例えば「牛角」チェーンを構築したレインズインターナショナル創業者で、現在は焼鳥「すみれ」チェーンなどを展開するダイニングイノベーション社長の西山知義氏が、横須賀市内に建てた自身の所有するクルーザーを係留するマリーナに隣接する家に、飾ってある絵画。西山氏は「TWO ROOMS」を訪れた際、飾ってあったアーティスト小澤雅志氏の絵に一目ぼれして、自ら本人に電話をし、その家のためにオリジナルの3点の絵を描いてもらったほどなのだ(雑誌「ゲーテ」2014年9月号「人生が結晶した家」、幻冬舎 より)。

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「TWO ROOMS」。ECNホールディングスの1号店。

 「ルビー・ジャックス ステーキハウス&バー」は、「フラッシュ」2014年12月30日号「東京いい店やれる店年末スペシャル(以下、同と略す)によれば、「外のテラスには、溜池の高層ビル街を望む屋外席があり、夏場はガラスが開け放たれて、その開放感は比類がない。冬も、高層ビルに囲まれて食事をしている感じで、気分は完全にマンハッタン」。東京に居ながらにして、ニューヨークにトリップしたような高揚感があることを絶賛している。

 シンプルでありながら際立つ上質感がインテリアのコンセプトで、60席を擁するメインダイニングはホワイトリネンのテーブルクロスが掛ったテーブルと、「カッシーナ・イクスシー」のキャブ・チェアーがスタイリッシュに並び、奥には小澤氏作の巨大な絵画「アンガス」が飾られている。テラスは桜坂、スペイン坂に面しており、花見も楽しめる好立地である。

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「BLTステーキ」では、925℃の超高温でさっと焼き上げて、かつおのタタキのように表面に焦げ目を付け、中に旨味を瞬間的に閉じこめる。これが熟成肉に一番合った調理法という意見も多い。ちなみにステーキを焼く温度は「ルースクリス」が980℃、「ウルフギャング」が900℃。

 顧客層は外国人ビジネスマンが主流で、サーバーも外国人か、英語に堪能な日本人。「サービスの質は、一頭地を抜いている」とのことだ。ECNホールディングスは社長のネイスン・スミス氏からしてニュージーランド出身の外国人であり、28歳の若さでパークハイヤット東京の料飲部長に就任した経歴を持つ。

 取締役2人もガーナ人とオーストラリア人という外国人で、東京のホテルなどでのレストランやバーの経験が豊富だ。「ECNホールディングスの店は、立地が抜群で、照明の当て方も非常に上手いと思います」とホイチョイはECN各店のデートでの実用性の高さを指摘。「適当に遊んですぐに別れるつもりの彼女と行くなら、断然「ルビー・ジャックス」だ」(同)と、熱く語っている。

 今年も、赤身の牛肉、熟成肉を中心とした肉ブームのトレンドは強固であり、特に六本木はアメリカンテイストの高級ステーキハウスがしのぎを削る激戦地。そうした中「ルビー・ジャックス」は天井が高く照明がかなり暗めで、サーバーは格好付け過ぎと思わなくもないが身のこなしがしなやかで目配りが利いていてレベルが高い。オープンキッチンのライブ感もあり、日本人の趣向をとらえたアメリカンなレストランの雰囲気がする。肉食系女子を連れていくなら、「ルビー・ジャックス」なのだろう。

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「ウルフギャング・ステーキハウス」六本木店。

 ホイチョイでは六本木の高級ステーキハウスの比較で、2014年9月にオープンした「BLTステーキ東京」は、「席と席の間隔が近く、店内がガチャついているのでデートには向かない」(同)。一方で、熟成肉のステーキの旨さには定評があり、ステーキそのものを食べに行く店と言えるだろう。このチェーンは調理法が独特で、アメリカ・アンガス協会認定の最高品質「サーティファイド・アンガス・ビーフ」を925℃の超高温でさっと焼き上げて、かつおのタタキのように表面に焦げ目を付け、中に旨味を瞬間的に閉じこめる。

 また、2014年2月オープンの「ウルフギャング・ステーキハウス」は、「家族連れ客が多く、彼女と行くと結婚を意識されてしまう怖れがある」そうだ。逆に言うと、婚活になら「ウルフギャング」が使えるということになる。「ウルフギャング」のダイニングはどこかファミレス的でポピュラーであり、照明は落としてあってムーディーでデート向けではあるが、「ルビー・ジャックス」のようにお酒を進ませる雰囲気づくりをしていないからではないだろうか。

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天王洲ふれあい橋から撮った「T.Y.ハーバー」。

 ECNホールディングスと並んで、過去ホイチョイが、店づくりが上手いと讃嘆してきた外食企業に、タイソンズ&カンパニー(旧TYエクスプレス、2015年4月社名変更)がある。

 「タイソンズ&カンパニーは立地を良く考えています。天王洲の運河沿いにある「T.Y.ハーバー」、代官山T‐SITEの「アイヴィー・プレイス」にしても、キャットストリートの「スモークハウス」にしてもです」。ホイチョイは味や内装は幾らでも変えられても、ロケーションは変えられないと考えており、「彼女が「この店を知っているのはあなたと私だけ」と思えるような神秘的な場所に、ポツンと灯りを点している店」(「東京いい店やれる店――裏ベストの12軒はこれだ!」、「GQジャパン」2012年6月号)こそ「やれる店」だという。

 確かに「アイヴィー・プレイス」は「TSUTAYA」の開発した低層商業施設内にあって、軽井沢などの別荘地にあるかようなハイソな雰囲気を醸し出している。「スモークハウス」は歩いてしか行けなさそうな場所にあって、BBQが楽しめ、1階にある系列の「ザ・ロースタリー」はエスプレッソのサードウェーブコーヒー店。ありきたりではなく洒落ていて、秘密めいている。


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代官山「アイヴィー・プレイス」。一軒の家のような設計で、カフェ、ダイニング、バーの3つの空間からなる。

 そして1号店の1997年にオープンした「T.Y.ハーバー」は、今年3月に全面的にリニューアル・オープンしており、新しさという点では一番になるだろうか。2階席が新たに付け加わり、テラス側の壁を一部取り払って、どの席からも水辺が望めるようにした。これによって、圧倒的に人気が高かったテラス席でなくても、顧客満足度が向上しており、ダイニングは平日でも予約で満席になっている。

 タイソンズは今日のクラフトビール・ブームにあって、都内のクラフトビールを造って売るブルーパブの草分けでもある。パンも自家製造しており、繁華街から離れた倉庫におしゃれなこだわりの強いレストランがあるということで、インパクトの強い店づくりを行っている。店のすぐ横、運河に掛かる「天王洲ふれあい橋」はドラマなどのロケによく使われていて、一帯はムーディーな雰囲気があり、デートが盛り上がる演出は十分だ。

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「宇田川 紫扇」の個室。この部屋に連れてこられたら、リアルに"膝を交えた語らい"ができる。

 「やれる店」とは言っていないが、「東京カレンダー」も時にそういったニューアンスの店の紹介の仕方をすることがある。Webサイト「tokyo-calendar.jp」の2015年8月22日付「編集・鮓谷の東京"コスパ"カレンダーVol17 渋谷の大人和テラス居酒屋『宇田川 紫扇』、「個室も狭くてヤバすぎる」を見てみよう。

 この記事で鮓谷氏は今年6月にオープンした「宇田川 紫扇」の極小個室を指して、「ご覧下さい、このエロい空間を」。「もうこの部屋に連れてこられたら、リアルに"膝を交えた語らい"ができちゃうんです」と興奮気味にまくしたてている。「しかもこちらは和食屋さんなのに、テラスがあるんです!自由!」。「狭すぎる個室(褒め言葉)で親密なときを過ごした後には、開放感あるオープンテラスでデザートなどを嗜む」、「ちょっとやそっとのちょい不良(ワル)コヤジは知りませんからね。ここを知っているだけで、小僧とは三馬身抜きん出てますから」と続く。そして、「こちらに誘われたのなら、あのひと、本気ですよ」のフレーズで結んでいる。料理については写真が何点か入っているが、キャプションで何の料理かわかるくらいにとどめている。何百店と飲食店を見てきた「東京カレンダー」の中の人がここまで書くのだから、間違いない。

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「宇田川 紫扇」のテラス席。

 店は「パルコ パート3」と「フランフラン」の向いのビル、最上階にあって、渋谷のど真ん中とも言える場所だ。しかし、ビルの入口が奥まっていて、パッと見た目で看板もないので、人目に付きにくい。まさに隠れ家となっている。ターゲットはそれなりの年収で、NHKの職員など、普段から飲食店にアンテナを張っている大人。

 経営するグッドスパイラルは、渋谷で大衆魚居酒屋「漁十八番」を成功させ、続いてデート向きでやや高級感ある「漁」もヒットさせた。ただ、「漁」はムーディーな照明ではあっても、「やれる店」という感はなかったのではないだろうか。グッドスパイラルとしては、相席の前に男同士で飲んで勢いをつける店や、相席の後で婚活向けに男女で行く店は既に持っていたが、「やれる店」も新たにつくり、同じ魚という食材をメインにして、タイプの違った店を、渋谷で上手に出していると言えるだろう。
一方で真剣に魚を食べるために行く店としては、渋谷には「魚真」、「4番サード魚真」といった、魚真系列の店がある。魚をメインとする居酒屋といっても、用途が違うさまざまな店が展開されている。

 2000年代デザイナーズ全盛期の風呂がある個室に比べればまだまだ大人しいものの、相席業態が伸長するとともに、アフター相席のデート向けの店も活気が出てきている。









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