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フードリンクレポート

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2015年9月24日(木)17:48

一般居酒屋で広まる相席サービス。相席を併用して月間600万円・売上の3割をオンする店も!

相席・婚活居酒屋&バー大爆発を追う(5-3)

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取材・執筆 : 長浜淳之介 2015年9月17日執筆

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 現代の日本は少子化、晩婚化、非婚化が進み、若者が恋愛を忌避する傾向が強いと言われる中、今年になって、見知らぬ男女がお店で相席になるシステムを売りにした、相席居酒屋、相席バーといった相席業態の飲食店が急伸している。一方で、合コンが衰退、それに代わる街コンもピークを過ぎて、合コン、街コンの舞台であった一般の居酒屋は苦境に立たされている。右肩下がりの合コン、街コンと入れ替わるように、恋人ができる、結婚もできるかもという顧客の期待感から、勢いを増す相席専門業態であるが、歌舞伎町などでぼったくり店が出現するといった問題も生じてきている。相席業態は果たしてこのまま大きく成長できるのか。取材してみた。(5回シリーズ)

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「相席ナビ」では一般の居酒屋などの飲食店が、空席にある時間帯に相席サービスに取り組むサポートを行っている。

 「相席屋」をはじめとする相席居酒屋、相席ラウンジなどの相席業態は、一般の居酒屋から合コン、街コンのニーズを奪って成長している一面がある。しかし、一方で一般の居酒屋で、アイドルタイムに相席サービスを始めて、相席業態に流出している顧客の流れを食い止めて、逆に巻き返そうという新たな動きが出てきた。要は1つの店で、一般的な居酒屋と相席居酒屋、2つの業態を同時に営業して、減少していた売上を取り戻す"居酒屋ミックス"の戦略である。

 相席サービス店の紹介サイト「相席ナビ」では、昨年7月より一般の居酒屋のテスト店と一緒に、相席サービスを取り入れて集客を上げる方法の確立を目指してきた。顧客満足度をよりいっそう高めるために、トライ&エラーでプチリリースを重ねて、相席サービスのフォーマットを作り込んできている。なので、一般の居酒屋をはじめとする飲食店が、相席サービスを始めるためのノウハウが、「相席ナビ」に蓄積されている。飲食店は「相席ナビ」に対して掲載料が発生する。

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全国の人気居酒屋で相席ができるサービスが広がっている。

 現在、「相席ナビ」に掲載されている店舗は全国に約70店。「相席ナビ」を展開するアオイの本社が名古屋にある関係上、名古屋を中心に増えていて、東京、大阪などにも拡大中。相席専門店も掲載しているが、メインとなっているのは相席サービスをプラスして、売り上げを高めたい一般の飲食店だ。

 たとえば通常の売上が1500万円、相席の売上が600万円で、計2100万円の月商を叩き出しているお店もあるのだそうだ。「相席専門店は、女性は一軒目から利用するのが多いのに対して、男性は二軒目の利用がメインになっていて、ミスマッチが生じています。そこで、男性に一軒目からどうですかと、呼びかけていますね。飲食店の本気の料理を、相席の時に思い切って原価くらいにまで下げて、相席専門店がこのクオリティで出せますかという提案を行っています」(アオイ取締役・野入栄祐氏)。

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「相席ナビ」掲載店の相席サービスの流れ。男性は相席していない時は、基本通常メニューの注文となる(店によりシステムが異なる)。

 先ほどの、通常売上と相席売上の比率が5:2の店であるが、名駅エリアにある「CLOCK~クロック~)」が該当する店。この店は250席ある大箱で、28ある遊び心たっぷりの個室を売りとするデザイナーズ居酒屋。カラオケルーム、オーロラのカーテンが美しい部屋、和テイストの部屋などを揃えている。1時間に1回焼き上がるパン、女性パティシエがつくるスイーツも用意されていて、名古屋駅から徒歩5分程度と近く、普段使いから合コン、記念日、結婚式の2次会など、使い勝手の良い店になっている。相席価格として、「石窯ナポリピッツァ マルゲリータ」が通常1780円のところ500円、「国産牛のグリルステーキ」が通常1680円のところ800円、「甘海老のトマトクリームパスタ」が通常1050円のところ500円など、超お得な価格で提供。

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名駅の個室居酒屋「クロック」では、通常1780円の「石窯ナポリピッツァ マルゲリータ」を相席時には500円で提供して、相席のお得感をアピール。総じて料理が適当な相席専門店と差別化を行っている。

 一方、相席時には男性は飲み放題30分1500円、延長10分500円を取って採算を合わせている。なお、女性に関しては、相席時は無料で飲み放題、ただしフードを注文すれば料金がかかる。相席サービスの滞在時間は、平均すると1時間を少し超える程度である。

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「クロック」の「国産牛のグリルステーキ」。通常1680円だが、相席時には800円。

 「相席ナビ」では、お店がその日の何時から何時まで相席サービスを開催すると告知でき、リアルタイムで男性、女性がそれぞれ何組入っているかも表示、更新できる。相席情報をユーザーはチェックして、来店すればいい。なので、貸切などで満席になっている時には、相席サービスを行わないといった融通ができる。

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相席サービスが好調な「クロック」の個室の1つ。

 現在のユーザー数は3000人で、週末はアクセスが増える。男性、女性とも2人での来店が多く、平均すると1組あたり男性が2.4人、女性が2.2人となっている。

 「適当な内装で、唐揚げやポテトサラダのようなありきたりなメニューでも、相席専門店だと看板を掲げるだけで、流行っているのが現状です。街コンと一緒で、流行っている時にやれば儲かっていいじゃないかという安易な発想です。相席だというだけで流行っている店と、内装も、料理も頑張ってきた一般の居酒屋と、どちらのレベルが高いか、明らかでしょう。飲食店には必ずアイドルタイムがありますから、空席状況を見極めて相席を入れていいです」(野入取締役)。

 アオイでは1開催で5000人が集まるという日本最大級の街コン「東海コン」の事業者でもあり、街コンの難しさが身にしみている。それだけに、相席業態が劣化していく事態を、黙って見ていられない問題意識がある。

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相席サービスで売上アップをはかる、名古屋・金山の居酒屋「TOHOICHI -トホイチ-」。

 他にも、名古屋の金山にある居酒屋「TOHOICHI -トホイチ-」では、通常1680円する「国産牛のグリルステーキ」が相席価格として690円で、「味噌とんちゃん焼き」が通常980円のところ相席価格では690円となるなど、お得な設定になっている。深紅の個室、お花畑の個室、マットレスの個室など、出会いを盛り上げる個室が完備されていて、今まで出会いが無くて行きたくても行けなかったお店でも、相席を理由に入れるメリットもあるだろう。相席のシステムは「クロック」と同様となっている。相席のサービスにもなれが必要だが、「相席ナビ」では経験をもとにサポートしていく。実績が上がった店は認定店に指定しており、認定店を増やしていく方針だ。女性に人気が高い、洋食をメインとしたおしゃれな店が、今のところ中心になっている。

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1つの同じ場所を使って2つの店を営業する、相席居酒屋「相席の場所」と鮮魚バル「六本木マルシェ」。

 1つの店で、相席居酒屋と一般の居酒屋の両方を営業し、それぞれ店名とメニューが異なるといったサービスを行っている店もある。六本木にある「相席の場所」は、鮮魚バル「六本木マルシェ」でもあるのだ。店員によれば、入店時に顧客から相席の利用か、一般の居酒屋利用かを聞いて、サービスを使い分けていくのだそうだ。「相席の場所」は男性30分1500円飲み放題で自動延長制。女性は無料で飲み放題だ。

 フードは男女とも、290~1300円で提供され、女性は一部の商品を除き1品無料となっている。メニューは50種ほどあり、枝豆のようなおつまみから、揚物、焼鳥、丼物、パスタ、アヒージョ、サラダ、デザートと豊富に揃っている。「ウニソースとキャビアのパスタ」(1200円=女性無料対象外)、「ソフトシェルシュリンプのアヒージョ」(590円)、「フルーツのマチェドニア」(390円)などは相席専門店ではなかなかお目にかからないもので、居酒屋ならではである。

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「相席の部屋」/「六本木マルシェ」店内。相席か一般利用かを店員に言って入店する。案内される席は同じだが、サービスと料金体系が異なる。

 「六本木マルシェ」は元々あった店で、東京タワーを望む夜景が売りの個室居酒屋。2980円から5500円まで、8種類ある豊富な飲み放題の宴会メニューと創作タパスが売り。一番安い2980円の「アンダルシアコース」でも、メインの「金目鯛のアクアパッツァ」、「ポルチーニ茸のリゾット」などなかなか凝った料理6品を出している。制限時間は曜日によって2時間から3時間まで変動する。料理は単品でも注文できる。立地が良く内装も凝っていて良さそうな店なのだが、集客が弱まってきたので相席も取り入れ、さりとて従来の顧客も捨てがたいので、このような1店2制度の営業になったのだろうか。一般の居酒屋と相席居酒屋を同時に営業する、1店2制度の"居酒屋ミックス"は果たして成功するのか。居酒屋の逆襲が始まっている。



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